第181話 地形
マグマデルヘッジを食べ終わって非常に満足な気持ちになっているが、本来の目的はまだ達成できていない。
腹がパンパンな状態で、この灼熱地獄のような場所を進まないといけないのは少々気が進まないが、ここまで来て引き返すなんて選択肢はない。
「少し休憩できたし、そろそろ奥に進むとしよう」
「うへー……! 暑すぎて全然休憩になってねぇよ! 寒いのは得意だけど暑いのは苦手かもしれねぇ!」
「メタルトータスを見つけるまでの辛抱だ。どうしても無理なら、本当に先に外へ出てもいいぞ」
「ここまで来て一人で帰るかよ。ぶっ倒れる覚悟でついていくぞ!」
ぶっ倒れられたら俺が迷惑だからやめてほしいが、ついてくると決めたエイルを説得するのは不可能だと知っている。
俺がエイルの体調に気遣いつつ、進むペースを考えていくしかないな。
そう心の中で決めてから、マグマデルヘッジのいた開けた場所から更に奥へと進んで行く。
奥は更に溶岩が活発になっているようで、さっきまでかなりの数がいた魔物も一気に少なくなった。
生物が生きていくには暑すぎる場所ということなのだろうが、本当にメタルトータスなる魔物が存在するのか俺は半分疑い始めている。
存在しなかったらエイルを軽く責めてやろうと思いながら進んでいると、とある地点を過ぎてから温度がグッと下がったような気がする。
一瞬気づかない内に引き返しているのかとも思ったが、見知らぬ場所だし引き返していることはありえない。
暑すぎてとうとう体がおかしくなったのか、それとも奥は涼しくなっているかのどちらか。
「なんかよぉ、動きやすくなったか?」
「エイルもやっぱりそう感じたか。俺だけじゃないのだとした、多分だが奥は涼しくなっているんだと思う」
「そんな情報聞いたこともなかったぞ! ただ……確かにさっきまで周囲が真っ赤だった溶岩もなくなってる気がする!! そうと分かれば一気に進もうぜ!」
「待て。環境が変わった時こそ慎重に進む。って、おい!」
俺の話を一切聞かず、一人で走って奥へと進んで行ったエイル。
大きくため息を吐きつつも、俺もエイルの後を追って走って奥へと進んで行った。
奥に進むにつれて景色は一変し始めた。
天井から水が滴り落ちていて気温もグッと下がったことで、ついさっきまでの溶岩洞と同じ場所とは思えない。
魔物の気配は相変わらずしないが、なんとなくこの先にメタルトータスがいるような気がしてきた。
トータスということだし、甲羅に希少な鉱石を身につけているといっても水場を好むはず。
この湿気の高さから鑑みても、この先に恐らく地底湖がある。
温度が落ち着いたこともあって、エイルじゃないがワクワクしてきたな。
「ジェイド、早く来いよ! こっち本当にすげぇぞ!!」
「急ぐ必要ないだろ。いったん落ち着け」
「いいから来いって! 驚くぞ!」
一人で飛ばして先に進んだエイルに呼ばれ、俺もその場所に行ってみると……そこには予想していたように地底湖が広がっていた。
天井には光り輝く綺麗な水晶があり、その水晶に照らされた湖はこれまで見てきた中で一番綺麗と言っても過言ではない景色。
普通の山から溶岩洞に変わり、その奥は地底湖。
メタルトータスしか期待していなかったが、ベニカル鉱山は“冒険”を味わうにはうってつけの場所だな。
「凄い景色だな。さっきまで溶岩洞にいたとは思えない」
「本当だよな! マグマデルヘッジの肉もこの湖を見ながら食えば良かったぜ!」
「流石に奥がこんな場所になっているとは想像していなかったから仕方ない。それにあの灼熱の中で食べたのも良い思い出だろ」
「それはそうかもな! さてと、汗で気持ち悪いから泳いでくっかな!」
エイルはおもむろにそう呟くと、着込んでいた服を一気に脱ぎ始めた。
仮にも俺は男でエイルは女。
一切の羞恥心もないことに驚くが、まぁ裸ぐらいで恥ずかしがるような性格ではないよな。
「ちょっと待て。あの湖は泳げるような場所じゃないぞ。さっきまでは生物の気配がしなかったが、あの湖からかなり魔物の気配を感じる」
「うえー! それマジかよ……! 泳げる良い場所だと思ったのによぉ!」
「水をすくって頭だけ浴びるくらいに留めておけ。いつ襲われてもおかしくない」
「わーったよ! んじゃ、お互いに見張りながら頭だけ水を浴びようぜ」
先に湖へと近づいていったエイルの周囲を警戒しつつ、俺はメタルトータスの捜索も同時に行う。
メタルトータスはこの地底湖の中におり、感じている魔物の気配の中に紛れていると踏んでいるのだが……如何せん気配も見た目も分からない。
上からの捜索では探すのは困難、そう諦めかけたその時。
「ジェイド!! 湖の中にメタルトータスがいたぞ!!! 早く来い!!!」
またしてもエイルの大声が洞窟内にこだまし、水浴びをしに湖に近づいていったエイルの下に急いで向かった。
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