泣きたくなる感覚を




泣きたくなるような感覚を

忘れていった


嘆きばかりで渦巻く言葉

痛みを忘れていった


隣の人が躓いて 派手に転んでも

自分が転ばないように歩こうと

保身ばかり考えて 無心にからっぽで

感動できなオトナの大量生産 そのうちの一人?


そして僕が派手に転んで


泣きたくなるような感覚を

忘れていった


煩わしい人の流れに

身を任せるしかなかった


広い世界へ羽ばたけるなんて

マヤカシでしかなかった


「夢」を語ることが

騙ることに落ちていって

「夢」の礫 蹴飛ばした

可能性、踏み潰して 音も無く


諦めて 嘲笑った 茜色の希望

錆びついて 沈んで 固唾を呑んで

なんて、つまらない


泣きたくなるような感覚を

忘れていった


諦めたくない感覚が

まだ残っていた


派手に転んで 砂の味を舐めて

そこに手を伸ばす 君のテノヒラ


泣きたくなる感覚を

まだ忘れていなかった


握り返して 乾いたテノヒラ

折り返して 伝えたかった言葉

繰り返して 続く世界の回転


無垢じゃないオトナ達

でも世界を変えられるオトナ達

音と言葉で形を変えて

魔法にするなら


泣きたくなる感覚を

まだ忘れていなかった

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