サイバネスティック・マスカレード

ヤマイココロ

サイバネスティック・マスカレード

誰もが仮面をつけるこの世界で、私達は出会った。


いろんな話をし、一緒の時を過ごし、やがて私達は恋に落ちた。


幸せな時間だった。貴方以外、他には何もいらなかった。


そんなある日、貴方は私の仮面の下を見たいと言ってきた。


トキリ…と心臓に何かが刺さったような鋭く冷たい痛みを感じた。


怖かった。綺麗に着飾った仮面の下の醜い姿を見られることが。

怖かった。貴方に嫌われてしまうことが。

怖かった。本性を隠したまま貴方に近づいて、愛を求めてしまった私のことが。


勇気がなかった。貴方を傷つけたくなかった。


私は全てを投げ出して、逃げたのだ。


逃げて、逃げて、泣いて、孤独になって、また泣いて。


黒い鏡に私が映る。涙でぐしゃぐしゃになった、私が映る。


私は気付いた。貴方を傷つけたくない、悲しませたくないなんて全て貴方のせいにしてしまっていたことに。


本当はただ、自分が傷つきたくなかったんだ。嫌われたくなかったんだ。


優しい貴方を信じられない醜い心が、鏡には映っていた。


「そっか、醜いのは顔だけじゃなかったんだ。」

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