第13話 決着と勝利の報酬


 肺の中の空気を全部吐き出した俺は、重力に身を任せて倒れ込んだ。

 背中の傷は痛いが、床石のひんやりとした感触が心地いい。

 ボスを倒した今、この場所に俺を脅かすものは無い。


「はぁ〜〜〜〜〜、きんもちいぃ〜……」


 ぐったりと横になったままステータス画面を開くと、ボスを倒したことによる大量レベルアップが知らされる。


〈レベルアップ――Lv14 スキルポイント:+2 ステータスポイント:+2〉

〈レベルアップ――Lv15 スキルポイント:+2 ステータスポイント:+2〉

〈レベルアップ――Lv16 スキルポイント:+2 ステータスポイント:+2〉

 

 これが全て、たった一体から得られた経験値だ。

 まさしく破格である。やはりボスモンスターというのが、いかに強大で恐るべき存在なのかを思い知らされる。


 昨日まで極普通の社畜だった俺が、異世界MMOの転生二日目でダンジョンをクリアすることになるとは。

 こう書くとラノベにありそうな展開だが、やってることは銃一つで戦車と対峙してるようなものなので、本当にマジで絶望的だった。

 一歩間違ってれば死んでたって考えると今でも身震いがする。でも、たがらこそ勝ったことが死ぬほど嬉しいわけだ。


―——————―——————―——————―——————―——————

|≪ステータス≫| クラフトツリー | バッグ | マップ | Lv16


STR  DEF  VIT   DEX   AGI   MG  :: MP

37(+6)  35(+4)  31   41   26   36  18/86


スキル:『製作クラフト


スキルポイント:12

ステータスポイント:13

【叡智】:0

―——————―——————―——————―——————―——————


 というか戦闘中もちらっと確認したが、やはりLv11を越えた辺りからステータスの伸び幅が上がっているな。

 レベルアップでのステータス上昇が、1から2に。MPの増加は2から3に。

 スキルポイントとステータスポイントも、1ではなく2ずつ手に入るようになっている。


 地下遺跡に入る前の俺のステータスが平均して20程度だったことを考えると、未使用のステータスポイントも併せて倍近くステータスが伸びている。

 よくあのステータスでボスに勝てたな俺……。


 ステータスの上昇やレベルアップだけでもご飯三杯はいけるが、ダンジョンクリアの報酬といえばボスドロップだ。お楽しみはまだまだこれから。


「やっぱダンジョンクリアの報酬と言ったら、ボスドロップと宝箱だよなぁ!」


〈——『《R》魔石』‪‪×1〉

〈――『《R》伸縮自在の女王糸』〉

〈――『《R》女王蜘蛛の脚甲爪』〉


 主なきボス部屋に、三つの《R》レアのドロップアイテムが燦然と輝いている。

 まずは《R》以降のクラフトに必要な、レアリティの高い魔石。

 青く澄んでいて、俺の顔面ほどのサイズがある。手にすっぽり収まるサイズだった《N》魔石の10倍以上のデカさだ。


 次に、脅威だったクイーンの足の硬質な爪。


 そして、最後に。

 クイーン・シャープの切り札であった、女王糸だ。


 魔力に反応して伸び、縮み、張り付き、張り付かなくなる。

 クモの巣にはクモ自身が巣の上を移動するための糸と、獲物を捕らえるための二種類の糸があると聞いたことがあるが、この女王糸はどちらの性質も常に併せ持っているのだ。


―——————―——————

≪ワイヤー射出機≫ → ≪Rワイヤー機動装置≫

必要素材

『シャープスパイダーの蜘蛛糸』→『《R》伸縮自在の女王糸』

―——————―——————


 しかもリストにあるものの上位互換を作ることが出来る素材だ。素材を得たことで、上位互換のクラフトアイテムが解放されたようだ。その性能は……


―——————―——————

≪Rワイヤー機動装置≫

《R》伸縮自在の女王糸を射出する装置。魔力で伸縮をコントロールすることで、高所への高速移動を可能とする。

【クラフト難度:E⁺】

【所要時間:D⁻】

―——————―——————


 ……最高じゃないか。

 今もっとも必要なアイテムなんじゃないか、これは。

 要は、ス〇イダーマンみたいに糸をはっつけてピョンピョン飛び回れるアイテムってことだろう?


 これがあれば、この地下から脱出できるぞ。

 森の中とかを立体機動で移動をすることもできるし、某ゲームの「自転車」や「風の翼」のように、ゲームの快適さを爆上げしてくれそうだ。


 ボスも倒した今なら、好きなだけクラフトができる。魔石も死ぬほど集まっているから、素材を気にせず強化ができるしな。


―——————―——————―——————―——————―——————

| ステータス |≪クラフトツリー≫| バッグ | マップ |


Tier0    

≪カスタム銃≫

『射程強化Lv1 〇』 『威力強化Lv3』

『命中率強化Lv1 〇』『弾速強化Lv1 〇』

『アタッチメント 〇』『R武器種変更』


Tier1 

≪マナゴーグル ◎≫ ≪アームシールド 〇≫ ≪Rガントレット ◎≫

≪魔石爆弾 ◎≫≪初級バック 〇≫≪ワイヤー射出機 〇≫


Tier2

≪Rワイヤー機動装置 〇≫

―——————―——————―——————―——————―——————


 まずは脱出のために絶対に必要な≪Rワイヤー機動装置≫を解放。


〈Tier2『Rワイヤー機動装置』——解放〉

〈Tier2『Rワイヤー機動装置』付属スキル―—『足取り軽やか』獲得〉

〈Tier2『Rワイヤー機動装置』必要素材

 ——『縞炎石×10』『魔石×10』『R伸縮自在の女王糸』〉


 さて、お楽しみの付属スキルだが……。


〈『足取り軽やか』——AGI+10〉


 単なるステータス上昇系のスキルだ。

 期待外れではあるが、ないよりはあった方がいいのは間違いない。機動力がなければクイーンの攻撃を避けきれなかったわけだしな。

 というかRレアの付属スキルは、一律でステータス上昇系なのかもしれないな。


 βテストでは『技工士メカニック』のステータスは他の戦闘職に比べて総じて低かったし、付属スキルでそれを補うようなジョブなんだろう。


〈Tier2≪Rワイヤー機動装置≫は腕部ウェポンに搭載可能です。セットでクラフトしますか? はい・いいえ〉


 なるほど。

 完成した見た目が分からなかったが、どうやらワイヤー装置だけのようだ。どうせだから≪Rガントレット≫も一緒に作って搭載させようか。



―——————―——————

Rガントレットシリーズ

≪刺双天甲≫

《R》クイーン・シャープの脚甲爪を用いたガントレット。硬度と軽さに優れ、”爪”をスライドすることで鋭利な武器となる。

【クラフト難度:E⁺】

【所要時間:D】

―——————―——————


 Tier1『Rガントレットシリーズ』は2スキルポイント払って解放済みなのだが、そこからさらに1ポイント払うことで個別のアイテムを解放できるようだ。


〈Tier1『Rガントレット≪刺双天甲≫』——解放〉

〈Tier1『Rガントレット≪刺双天甲≫』付属スキル―—『二度刺し厳禁』獲得〉

〈Tier1『Rガントレット≪刺双天甲≫』必要素材

 ——『クイーン・シャープの脚甲爪』『ブラックボアの毛皮×1』『縞炎石×5』『魔石×15』〉


〈『二度刺し厳禁』——STR+5〉



 こちらも解放。

 実質的に1ポイントで付属スキルが取れるから悪くない。

 〈はい〉を選択して、自動操縦オートモードに入る。


 まずはお決まりの簡易炉を作るところから。

 普段なら石を積んで作るんだが、今回は礼拝堂の奥に暖炉がある。これを改造したらそのまま炉として使えそうだ。

 正面以外はプロの施工できっちり隙間なく石が積まれているため、なんなら俺が雑に作る炉より性能が高そうだ。


 前面を密閉するように瓦礫を積み上げ、わずかな隙間だけを残す。

 下部に薪と魔石をくべ、火をつける。 

 ゴウッと勢いよく炎が燃え上がるのを確認して、『縞炎石』を投入していく。

 今までの何倍もの量を次々と。


 今回作るのは≪Rワイヤー機動装置≫の機構と、≪Rガントレット≫の本体丸ごとだから、かなりの量の……いや、ほぼ全ての縞炎石を消費しそうだ。

 

 これでほっとけば溶けた縞炎石が坂のようにした積んだ石を流れ落ちてくる。

 魔石から噴出した魔力反応による熱は実はそれほど高温じゃない。人間にしてみれば高温だが、鉱石にとっては微妙なところ。

 それで溶けるあたり、縞炎石の融点は低めなのだろう。


 しかも加工しやすくて、丈夫ときた。なんとも扱いやすい金属である。

 この世界で鉄のようなポジションなんだろうな。


 縞炎石の溶融を待つ間、今度は『クイーン・シャープの脚甲爪』を製作道具で加工していく。

 使うのはナイフ型の製作道具。魔石を柄にハメることでバーナーにもなるので、硬いドロップアイテムの加工に適しているのだ。


 『クイーン・シャープの脚甲爪』は全長が俺の身の丈ほどあるので、まずはバーナーで必要なサイズに切り分けていく。

 さすが魔石爆弾の爆発さえも数回耐える爪だけあって、加工は簡単ではない。


 まずはガントレットの籠手となる部分を切り分け、最後に鋭利な先端部分を加工していく。切り分け、成形、溶接を行い原型を作っていく。

 そこまでできたら一旦ステイ。


 今度は溶融した縞炎石の加工を始める。

 今回は作る部品がだいぶ多そうだ。

 外気に触れて急速に固まって、ゲームでよく見るインゴットのような形になったそれを、ハンマーで叩いて不純物を飛ばす。

 今までは省略していた手順だが、≪Rガントレット≫では装甲として使うため、縞炎石の製錬時の純度が重要なんだろうな。


 何度か折り返しながら不純物を飛ばし、それが終わると今度は成形していく。

 全体構造はおそらくこうなりそうだ。


 まずガントレットの主体は『クイーン・シャープの脚甲爪』だ。硬い素材であるためクッションとしてブラックボアの毛皮を内側に巻く。反対に外腕部は攻撃をガードする必要があるため、縞炎石で装甲を厚くする。


 内腕部には≪Rワイヤー機動装置≫。

 取り回しの邪魔にならないように可能な限り小型にした射出機と、巻取り装置だ。

 巻取り自体は『R伸縮自在の女王糸』を縮めるだけでできるし、最小限に縮めて入れておけばスペースも取らない。


 そして特徴的なのが、外腕部の二重構造だ。

 装甲としての『クイーン・シャープの脚甲爪』の下に、爪の先端部分を仕込んでおり、手首の動きでバネが外れて飛び出す仕組みとなっている。

 セーフティをつけておけば、暴発の心配もない。


 腕部分、手首、手の甲。

 普段の俺にはできる気もしない製作だが、自動操縦の俺のカラダはてきぱきとそれを組み上げていく。まったく、自動操縦オートモード様様です。


 そうして完成したのは、光沢のある漆黒のガントレット。

 素人が作ったとは思えないくらいの美しい仕上がりだ。

 今までのクラフトの中で、一番〝作った〟感があるな。


 正直、ちょっと感動。

 自分でこういった工作をするなんていつぶりだろうか。会社じゃ図面を引くことはあっても、自分で手を動かすなんて本気で中学生以来じゃないか?

 苦労しながら自由研究を完成させたのと同じ喜びがあるな。


 さっそく右腕に装着していく。

 オーダーメイドならぬセルフメイドだけあってサイズはぴったり。内側には毛皮を張っているので装着感も悪くない。


 厚みは数cm程度とスリムで、下部と上部には二つの機構が搭載されているため、重量はそこそこある。


「確かにこれを振り回して戦うなら、筋力STRのステータスが必要だな」


 カスタム銃と違って魔力消費はないが、その分体力を持っていかれそうだ。

 付属スキルの〈『意気軒高』——STR+6 DEF+4〉も、ガントレットで戦うために必要なステータスの底上げだったんだろう。


 最低限必要なクラフトは完成した。

 鉱石系の素材はほとんど使い切って大きなクラフトはできないが、魔石とドロップアイテムはまだまだ持ちきれないほど余っている。

 せっかくだから製作や強化を一通り済ませておこうか。


 取り急ぎ必要なのは≪初級バック≫と≪魔石爆弾≫。

 あとは……。


「うえっくし!」


 ……服、かな。

 クイーンとの戦いでシャツが破れてから、上裸のままなんだよね。


―——————―——————―——————―——————―——————

| ステータス |クラフトツリー| ≪バッグ ≫| マップ |


WEAPON

≪カスタム銃≫

『射程強化Lv3』 『威力強化Lv3』

『命中率強化Lv2』『弾速強化Lv2』


≪刺双天甲(Rガントレットシリーズ)≫

付属スキル『意気軒高——STR+6 DEF+4』『二度刺し厳禁——STR+5』


   ——with≪Rワイヤー機動装置≫

   付属スキル『足取り軽やか——AGI+10』


ITEM

≪初級バック≫——積載30kg

≪マナゴーグル≫

≪魔石爆弾≫15個

―——————―——————―——————―——————―——————

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る