第53話 自覚と振り回され

 異世界でも、食器関連が前世の日本そっくりのとこもあるせいか。


 ミディアちゃんと生活してきてわかったけど、それがほぼそっくりなのよね?


 茶道文化がある時点で、なんとなく予想していたわん? 漆器とか、竹細工とかね? だから、食器とかも箸とかが充実していた。ミディアちゃんも、普通に箸だけでなく菜箸も使えたのよん。


 なので、今さっき出来上がった『藻塩フライドポテト』も素手じゃなくて箸で食べようとしていた。素手が基本と思うけど、形がごろごろだから最低フォークが必要。それに、出来立て熱々だし。



「美味そうやわぁ……」



 見た目、ちょっと汚そうな色合いに見えるフライドポテト。


 けんど、その色合いは純度が高い藻塩の色!! ごま油と相まって、めちゃくちゃいい匂い!! あたしの飯テロへのリポが、口から出そうよぉおおお!!


 といっても、味は流石にわかる身体じゃないから、イメージでしかないけどぉ。



『熱いうちにお召し上がり?』


「ほな。……あっふ!」



 勢いよく食べるもんじゃないんだから!? すぐにツッコんだけど、ミディアちゃんんはあふあふ言いながらも……本当に美味しそうに食べている顔は、綺麗よりも可愛い寄りなのよ!? 



(あれね……夜の『仕事』のときに、相手を悦に浸らせたときのような)



 それくらいの破壊力あるわ! あたし、やっぱりこの子好きになっちゃったの!?


 そ・う・い・う・い・み・で!?


 転生させられたせいで、ゲイ思考が変えられた?? それにしては、最初のランダム憑依のときは、獣人くんとかにときめいていたけれど……WHY??



「うんま! 芋以外、塩だけなんに! 祭りであんなけ食べた芋より、ずっと美味いわ~! 酒にもよう合う!!」


『……どうも』



 うん。可愛くコメントしてくれる顔見て、あたし……観念することにしたわ。


 この子のこと、結ばれないとわかってても沼る感じで、恋愛対象に意識しちゃってるわ!?


 なんで、運命の相手かもしれない子と生活できるのに……おじいちゃん神様じゃない、どこかの神様は……あたしを、せめてエルフにしてくれなかったのよ!?


 前世では、性嗜好以外オタクだっただけよん!?


 むしろ、今は矯正されたのよ!?


 なんで、異世界転生で無機物へ転生させたわけ!?


 なんか恨みでもあんの!?



「うまっ。こりゃ、酒にも……せや、ポット。湯沸かしてええ?」


『そうね。お湯割りでもいけると思うわ』



 ともかく、ミディアちゃんの相棒ポジションは譲らなくてよ!!


 お湯を沸かす感覚にも、あたしはだいぶ慣れてきたのかひーひー言うことはなくなったの。進歩でしょう??


 なので、いつも通りにセッティングされたんだけど。



「ぽ、ポット?」


『あ、あらぁん?』



 意識が遠のいていく感覚には、覚えがあった。


 ミディアちゃんの前では、一度あったからわかったようだけど。


 つまり、この感覚は!?



「いやや! いかんとって!!?」


『み……でぃあ、ちゃ』



 どういうタイミングかわかんないけど、ミディアちゃんの叫び声も遠くに聞こえるくらい……あたしの意識はほとんど薄れていたわ。


 どうやら、さっきの考えが例の神様に届いちゃったのか……またどこかに転生させられるみたい?


 ちょっと、なんでよ!?

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