第44話 兄貴分の疑問
ミディアが変わった。
正確には、ミディアが身につけてる……『根付け』だったんだが。
ミディアにしては地味な色合いだったんだが……なんか、『意思』を持っているように感じたんだ。
気のせいだとは思うんだが……なんか気になったんだ。
異様に視線を感じた気がした……俺を睨んでいる気がしたんだよな?
ただの根付けだぜ? なんか魔法でミディアがちっちゃくしたのか? なんでまた??
(どーも、まだまだ兄貴分が抜けてねぇな……俺も)
ミディアのことは大事だ。
それは……仲間として、エルフとして。
一度は……フラれたけどなあ? ミディアは自他ともに認めるくらいの、職人気質。
他の男もだが、付け入る隙がない。
だからこそ……変わったかもしれないあいつのことが幾らか気になったが。
とは言え、本人は俺の串焼きを美味そうに食ってくれているし。
根付けの方からの……視線みたいなのも消えた。
やっぱり……気のせいだったか?
「おおきに、兄さん」
ぼんやり考えていたら、ミディアが串を返しに来てくれてた。相変わらず綺麗な笑顔なのは変わりない。
根付けの方に、ちらっと意識を集中させても視線のようなもんは……やっぱり消えてた。
と言うことは、俺の気のせいだろう。
「おう。楽しんでけよ」
「おん」
串を受け取り、笑ってやれば。
ミディアはまた嬉しそうに笑ってくれる。
笑顔はこいつの標準装備だ。誰にも分け隔てなく、向けているもの。
かつての初恋に近い、妹分への感情は。
もう叶うことはねぇんだから。
ミディアを見送ってから、俺は次の客が来たんで……空いた串を筒に入れて、次を焼き始めた。
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