なんでアタシばっかり、『釜』に転生!?〜何度転生しても調理器具への転生〜

櫛田こころ

パン釜

第1話 ホステスの転生

 某都、某所の……とあるゲイBAR。


『ゴージャス』と言う店の中で……ひときわ目立つ、稀に持つ美貌の持ち主。名を『AKIRA』。


 ゴージャスでのナンバーワン、ゲイホステス。


 指名率も当然だが、甘いマスクと客にトキメキを与える話術。


 老若男女問わず人気でいつも引っ張りだこ。


 オフの日以外、常に店ではトップを誇っていた。






 *・*・*







 トップホステスだった!?



 アタシが!!



 なんで!?



 こんなあっちぃ状況になっているわけぇえ!!?



 仕事前にしっかりぐっすり寝ていたはずのアタシが!!



 気がついたら、サウナや岩盤浴も逃げ出すくらいのあっちぃ場所にいたわけ!!



 正確には、頭の上がだけど。



 アタシの自慢のスタイリングが火事よ!?



 救急車とかのサイレン聞こえないじゃないの!!



 逃げたくても……体が身動きできない!?



 瓦礫にでも埋もれたわけ!?



 アタシの住んでるマンション、いちおータワーマンションよん!? 地震ついでに火事でも起きたの!!?




(……声も、出せ……ないわ!!)




 けど、意識はちゃんとあるわ。



 じゃあ、まだすぐには死なない?



 そうよ。こんなとこで、アタシは死ねないわ!!



 ナンバーワンホステスとして、まだまだバリバリに働きたいし!!



 客とかには言ってないけど……それなりにオタクで、まだ手に入れていない新刊とか買いにコミケも網羅したいのよん!!



 ラノベ再来時代とも言われてる、今の時代でもっとたくさんの作品に出会いたいのよん!! 



 って、火事で思い出したぁあ!?



 アタシの書斎ぃ!?



 アタシのお宝達ぃい!!



 サイン本とか山ほどあんのよ!!



 入手困難のものばっか!!



 動け、体!!



 って、叫ぼうにもやっぱり声すら出ない!!



 アタシ、どうなっているわけぇ!?





「あらあら、いい具合に火が通っているね?」




 うなっていたら、声が聞こえてきたわ!?



 助けにしては、えらくのんびり……と思っていると。



 上から、ガサゴソと音が聞こえてきたわ。




「うんうん。パン生地入れるのに、ちょうど良い。良い食パン焼けそう」




 って、女の声だったわ。



 え、ちょーっと待って?



 ・動けない。



 ・熱い(頭が)。



 ・火が通っている。



 ってことは。




「今日も調子良いね? 石釜は」




 アタシ……今。



 いつからかわかんないけど!?



 パン釜に転生してるわけぇ!?



 ナンバーワンホステスだったアタシがよ!!?



 ラノベとかの異世界転生……最近流行っている、無機物への転生しちゃっているわよぉおお!!?

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