第2話放課後のカラオケ

白樺風との奇妙な関係が出来上がってから数日が経過していた。

未だに彼女は僕以外の男子生徒には興味がないらしい。

けれど彼女が僕に対してパンチラをやめることはない。

誂うように何処か挑戦的に僕を誘うようにその行動を取る。

吸い寄せられるように視線は釘付けになってしまい、その視線に気付いた彼女は満足したように微笑む。

「鷹也。放課後、女子とカラオケ行くけどお前も行く?」

友人である坂井譲二に声を掛けられて、そちらに視線を送る。

「女子と?どのグループ?」

女子グループも様々で、それによっては行くか迷うというもので…。

有り体に言えば苦手な女子も居るということ。

「鍵屋のグループ」

鍵屋静かぎやしずかのグループは割とおとなしめなグループだ。

文化系の部活に所属している人間が多く部活動も緩いため放課後に遊びに行くことも少なくない。

「じゃあ行こうかな」

返事をしたところでその様子を見ていた白樺風は席を立ち上がった。

彼女は鍵屋の席まで向かうと何やら話をしているようだった。

「良いよ〜。坂井くんに伝えておくね」

鍵屋の声が耳に届いてきて何となく事情を察する。

「それじゃあ放課後にね」

鍵屋は白樺に笑顔を向けると丁度チャイムが鳴って午後の授業が始まるのであった。


午後の授業は何事もなく終了して放課後がやってくる。

「珍しく白樺さんも来るってよ。良かったな」

坂井は僕の席までやってくると耳打ちする。

「良かったなって…なんでだよ…」

「だってお前…白樺さんみたいなのタイプだろ?」

「それは…そうかもだけど…」

「だろ?今日をきっかけに仲良くなれよ」

それに何とも言えずに一つ頷くと僕らは男女数名で教室を抜ける。

そのまま街まで向かいカラオケ屋に入店した。

広い大部屋に案内されて薄暗い室内でカラオケを楽しんだ。

隣には白樺が座っており必要以上に密着してくる。

彼女は時折、僕の膝の辺りに手を置いたり腕にしがみついたりとボディタッチが多かった。

その度にドキドキと鼓動が高鳴るとカラオケに集中が出来ずにいた。

「鷹也。どうしたんだよ?今日は元気ないじゃん」

坂井は僕に問いかけてくるのだが、それどころではなかった。

薄暗い室内で僕らの様子がよく見えないのか彼らは僕を誂うような何処か心配するような声を上げる。

「なんでもないよ。ちょっと緊張してるのかも」

適当に返事をすると彼らも合わせて適当に笑った。

「なんで緊張してるの?」

隣に座る白樺は僕に耳打ちすると妖しい微笑みを向けてくる。

「白樺さんのせいですよ…」

正直に答えを返すと彼女は嬉しそうに笑う。

「私のこと意識してる?」

矢継ぎ早に質問をされて落ち着けないでいると彼女は再び僕の太ももに手を置いた。

それに少し驚いてビクッとすると彼女は軽く笑って口を開く。

「今の反応見たら分かるよ。可愛いね」

などと誂うような言葉を口にした彼女はそこからも僕を試すような態度を取り続けるのであった。


気が気ではない放課後のカラオケが終りを迎えると僕らはその場で各々の帰路に就く。

たまたま僕と白樺は同じ帰り道だったため揃って帰路に就く。

「そうだ。土曜日って空いてる?」

分かれ道で立ち止まった彼女は唐突に口を開くと僕と向き合う。

「空いてますけど…」

「デートしよ?」

「はい…」

「じゃあ後で連絡するね。また明日」

彼女はそれだけ言うと僕とは別の帰り道に向けて歩き出すのであった。

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