第43話 アナナス島のにぎやかな夜
すぅー…すぅー……
おだやかな寝息が聞こえる
まだ興奮してるのか、眠りが浅かったのか
眠っている途中で目が覚めてしまったようだった
私たちは魔法学校宿舎の、生徒用の三段ベッドで眠っている
上がアマミさん、中がテラスちゃん、下が私
外はまだ暗く、カーテンの隙間から月の光が差し込んでいた
依頼は達成したし、ついでに沢山遊べたし、百二十点の数日間だった
明日帰るのが惜しい…あと一日くらい伸ばしたい
そんな事を考えてしまうくらいには
すぅー…
…それにしても
ちょっと聞こえる寝息が大きい気がする
昨日はこんな音量じゃなかったはず…
それになんだか、胸元が温かいような……?
目をしっかり開けて、自分の周りを確認してみる
(…テラスちゃん?)
胸元に少女の頭が見える
寝ている間に、テラスちゃんが私のベッドに潜り込んでいたようだ
部屋の入り口のドアが少し開いている
トイレに行った帰りに、間違えて入ってしまったのだろうか
昨日はテラスちゃんが一番下で寝てたし
下心で入ってきた可能性ももちろんある…テラスちゃんだし
テラスちゃんは、安らかな寝息を立てて眠っている
眠っている彼女は、本当にかわいらしい、幼い少女で
思わず抱きしめたくなるくらい
「おとうさん…おかあさん……」
消えるような小さな声で、テラスちゃんが寝言を呟く
…そう言えば、テラスちゃんのご両親はどうしているのだろう?
奨学金とアルバイトで魔法学校に通ってたみたいだし
何か特別な事情があって、離れて暮らしている?
もしくは、もう…
…ぽふっ……
気がついたら、私はテラスちゃんを抱きしめていた
寂しさを、少しでも埋めてあげたくなった
私では、代わりにはならないけど…それでも……
バキッ!
「??!」
突然の大きな、木の割れるような音
そして、何かが上から落下してくる!
バキバキバキッ!
木の床を破壊し、床下へ落下する何か
島にまだ見逃していたモンスターがいて、そいつがやってきた?!
い、いや、違う…これは
「あ、あいたたたたた…なんやこれ…」
「アマミさん?!」
「ふぇ…?」
床を抜いてしまったせいで、木くずと砂のついたアマミさんが、這い上がってくる
どうやらアマミさんが、上のベッドから転げ落ちてきたようだった
「…マミりん、またベッドから落ちたの?」
音で起きたものの、まだ眠そうな目のテラスちゃんが、アマミさんに向かってそう言う
…あー、確かアマミさんって寝相悪いって話だったっけ…
「うーん、今回は大丈夫やと思ったんやけどなぁ…」
この宿舎がもう全体的に脆くなってるのだろうか
ベッドも壊れたし、床も抜けたし
…もしくは、彼女の寝相がものすごいからか…
「とりあえず、ケガは無いですか?」
「大丈夫やと思うで~」
「ふぅ…ひとまずよかったです」
意外と丈夫なお嬢様、アマミさんだった
床下から抜け出したアマミさんはこちらに視線を向けた
すると、一瞬はっ…としたような表情になり、すぐさまいやらしい目つきに変わる
…何だろ?寝ぐせとかついてたりするかな…?
「…ひょっとして二人、今からスケベ始める気やったん?」
「?!」
何か変な事言い出しはじめたー?!
「え、な、何でそのような…?」
「だってほら、ちょい服がはだけてて、テラスっちをぎゅーって抱きしめて…」
…そ、そう言えば、テラスちゃんを抱きしめたままだった!
急にびっくりする事が起こって、自分が何をしているか覚えてなかった!
「あ、いや…ち、違いますこれは…ね、ねえ、テラスちゃん…!」
私は、テラスちゃんを抱きしめてる両手をぱっ、と離して
代わりに彼女の肩にその手を置く
「あたし、おトイレ行ってからの記憶がないんだけど…」
「テラスちゃん?!」
潜り込んできたのは、多分テラスちゃんの方なんですけどー?!
「ということは…まさか、ウズメさんがテラスっちを襲おうと…?!」
「ちがいますー!こ、こう、ちょっとなんというか、テラスちゃんを見てたら
つい抱きしめたくなったと言いますか…」
ちょっと焦って正直に話してしまう私
こんな事言ってしまったら…
「え…ついにお姉ちゃんがその気になってくれた…?」
「だ、だからー!そうじゃなくてー!」
ほらやっぱり誤解したー!
あうう…このままでは、小さな女の子の寝込みを襲うヘンタイお姉さんに…
アマミさんはおめでとう、って感じでニコニコしながら拍手をしてくれている
面白がってるでしょー!んもー!
テラスちゃんは私に抱きついて、顔をすりすりしてくる
私は動揺して、顔を真っ赤にしながらあうあうしている
そんな状況がしばらく続くと思われた、その時…
「ん…なんやこれ?」
アマミさんが何かを見つける
「こんなトコに本が…?」
彼女がぶち抜いてしまった床下にあったのは、一冊の書物
…それには、この国のとある重大な出来事が、書かれていた
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