第24話 ディーン視点
+++(ディーン視点)
新聞を見て驚いた。なんてことだよ。
バーンズ男爵の離れの別宅が、侵入した伯爵令息たちによって放火された。
ご令嬢は隠し部屋に隠れており、駆けつけた警備隊員によって救出され無事だった。
日付はここからクレアが帰宅したその日の夜。
偶然ではない、自分がクレアを危険に晒したと思った。
ノエルの替え玉の件は絶対秘密だった。
それを迂闊にもここにクレアを招待したのだ。
監視役の執事ハリーにはクレアは協力者だと報告してあった。
報告は無視されてクレアは危険人物と認定されたのか。
「ハリー、公爵はクレアに手を出したのか? それともお前の判断か、どっちだ」
「さぁ 何のことですかな。預かり知らぬ「ふざけるなよ!」
「俺は協力者って言ったよな。そっちがその気なら俺だって考えがある」
「ふぅ 何を勘違いされているのやら」
こいつは最初から俺と母さんを見下している。何様だよ!気に入らねぇ。
「クレアがここに来たことは大勢が知っている。噂好きのご令嬢に話したからな。お前らそのご令嬢たちを全部消すのか?」(噂にはならなかったけどな)と思いつつ執事の様子を見ると薄く笑っているだけだ。
「なぁ、敵よりも味方に引きずり込んだ方が良いと思わないか。クレアを絶対他言できないようにするんだ」
「所詮は平民です。敵になどなり得ませんな」
「チッ クレアに何かしたら俺は黙っていないからな。全てぶちまけてやる!」
「ふ、ご自分の身の程を弁えて頂きたい」
「ノエルの秘密もバラして公爵家に恥をかかせてやるからな! お前、俺が庶子だからってバカにするなよ。一応は公爵家の血筋なんだからな!」
ノエルの秘密なんて知らなかったがハッタリをかましたら執事のハリーは眉を上げた。
「公爵様に連絡をしておきましょう。何が起こっても私は知りませんからね」
ちょっとビビった。でも俺はクレアを守ると約束したんだ。
俺の命に代えてもクレアを守らないと騎士になる資格はない。
「頼む。クレアに手を出さないでくれ。クレアは俺を裏切らない、そういう人だ」
サウザー公爵に会ったことは無い。冷血執事が仲介人だ。コイツに頼むしかなかった。
*****
ホテルで暫くは快適だったが事件の恐怖も薄れて退屈になってきた。
恋人宣言してくれたアスラン様はお忙しいのか滅多にお顔を見せに来てくれなかった。
会う時はホテルで夕飯をご一緒するのだが、さすが高位貴族で所作は洗練されていた。
元々は男爵令嬢で今や平民、改めて自分はアスラン様に相応しいのか不安に思っていると、ホテルにロザリア様がお忍びで私に会いに来た。
先ぶれも無くやって来て私はパニックに陥った。
「お久しぶりですわね」───その目は笑っていない。
「今日は大切なお話があって参りましたの」──そうでしょうね。
「お兄様が侯爵家に戻るの、ご存じかしら?」──いいえ。
「ん? え、 戻られる?」
「ええ、長兄の婿入りが決まったの、これは王命よ。それでお兄様が後継ぎとして戻ることになったのよ」
「存じませんでした」
「お兄様も言えないわよね。貴方は平民だもの」
「そうですね」
もうアスラン様のお傍にはいられない。
「ところが、貴方との婚姻が侯爵家に戻る条件なの」
「婚姻? 先日恋人になったところなんですが」
「はぁ───」とロザリア様は盛大に溜息をついた。
「貴方、お兄様に相当愛されているわよ。自覚なさい」
「そんな素振りは見せて頂いていません」
「知らないわよそんなこと。それであなたの覚悟はどうなのかしら」
「覚悟とは、婚姻についてですか」
「そうよ。侯爵夫人になる覚悟よ。長兄の元婚約者とお兄様の婚約の話も出ているの。でもお顔にキズがあるでしょう? 相手のご令嬢は消極的なのよ」
「まぁ、いくつ傷があったとしてもアスラン様は素敵なのに」
「その通り、おバカなのよ!誰かさんみたいに。そういえば先日は大変な目にあったわね。無事で何よりだわ」
「有難うございます。アスラン様のお陰です」
「そのお兄様があなたの為にいろいろ根回ししているの、苦労されているのよ」
アスラン様が私との婚姻の為に苦労されているなんて知らなかったわ。
婚約も飛ばして婚姻とは、意外と情熱的な方なのかも。
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