アンドロイドは電脳兎の夢を見ず、

@uminoawaguri

001 目覚めたらアンドロイド

 俺の人生はゲームしか無かった。


 それだけで良かったし、それだけで生きていた。


 世界で大ブームとなった対戦ゲーム『ギガント・スケアクロウ』


 プレイヤーは巨大な人型兵器『G・S』に搭乗して、他のプレイヤーと戦うゲームだ。


 俺は『G・S』のeスポーツ世界大会、個人戦部門で六連覇の偉業を成し遂げた。


 産まれてこの方18年、彼女はおろか友達も出来なく、勉強も運動もろくに出来ないが、このゲームを狂った様に毎日12時間以上やり込んで得た対戦無敗のチャンピオンの称号。


 このゲームG・Sで勝ち続ける事が俺にとっての全てだし、eスポーツ会場では世界各地の人達が俺を称えてくれる。


 賞金も貰えるけど俺は皆から認められる快感がたまらなく好きだった。


 でもあまりにも俺は強すぎた――


 去年行われた大会では俺が勝利してもそれが当たり前かの様に、まばらな拍手だけ、きっと同じ王者に飽き飽きした観客は俺の敗北と新しい王者ヒーローを求めてるんだろう。


 だから俺は新たな『偉業』を作り出すことに決めた。


『G・S』世界大会のにたった一人で勝ち上がって優勝することだ。


 チーム戦では通常6対6なのだが、他5人は適当に人物をでっちあげてエントリーして、当日は全員風邪や急用で不参加ってことを大会運営に伝えればいいだろう。


 今ではどんな相手プレイヤーでも難なく倒せるけど、流石にトップランカーのチームとの対戦は苦戦しそうだと思った俺は不眠不休で練習をしてPSプレイヤスキルを仕上げることにした。


 カスタムサーバーで1対6の状況ルームを作り上げ、ひたすらオンラインで対戦相手を募集して対戦、ひたすら対戦、どんどん対戦、寝ずに対戦、吐いても対戦……。


 ゲームをやり続けて90時間を過ぎ、何度も対戦して相手が6人居ても、やはり俺は1度も倒されなかった。


 睡眠不足で頭はフラフラ、足元はエナジードリンクの缶まみれ、これ以上やるのは流石にヤバいと思ってゲームを閉じようとしたタイミングでマッチングしてしまった。


 相手のチーム名は『black rabbit』


 もう手がプルプルしてるけど、せっかくマッチしたから最後に一戦やるとするか、ステージは宇宙空間ね。


 ゲームスタート


 ………………


 …………


 ……


 このチームと対戦して、既に4機撃墜した俺の感想は、このチームはまるで"スーパーハードモード"の"CPU戦"みたいだ……。


 長距離、中距離砲による相手の動きを先読みした"決め撃ち"はして来ないが、ステージの配置物デブリを素早く避けて確実に"ロックロックオン撃ち"をしてくる。


 ミスが無い動きは良いことだが、想像力は無いな、デブリを確実に避けちゃうを利用してビームガンで退路を断ち、決め撃ちで、ドン!


 はい5体目撃破、残りは1機だ。


 敵機は"EMP電波妨害"グレネードを投げて一定時間ロックオン不能にしてきた。


 対人で"ジャミング"は無いなぁ、ランカー戦ではノーロックが基本なのに……。


 俺はもうゲームを終わらせようと、中間距離にモクスモークグレネードを投げ込むと、近接兵器の"ブレード"を構えて敵機に突っ込んだ。


 敵はロック撃ちだから、射線をズラしながら出力最大フルスロットルで突っ込んでくる俺の機体を捉えられず、あっさりと近接戦距離へと詰められる。


 終わりだな……ゲーム終了、さようなら



 ズンッ!



 俺の"ブレード"が敵機のコクピットがある胸部を貫通した。


 普通だったら敵機が爆発して『WINNER』と表示が出て終わりのハズだった……。


 だが何故か敵機が爆発した後、画面が真っ白になる。



 あ……あれ?


 なんだこれ、"バグ"か?、回線切り?


 てか、モニタ画面じゃなくて……視界そのものが歪んで……


 真っ白に……


 やばい……身体が動かないし……頭がグルングルンする……


 声も……出せない


 これって、もしかして……


 脳こう……そ――――――


 ――――……


 ―――……


 ――


 ……


 ん?


 目が覚めた。


 目の前には2人の人間がいる、救急隊員かな?


 いや、よく見たらは見えない


 一人は15歳ぐらいの女の子で、外国の人なのか、色白で金髪のツインテール、服はまるで""見たいな名前が付きそうなお嬢様学校の制服を着ていて、頭にはなぜか軍帽を被っている。


 もう一人は大人びていて18歳ぐらいの女性、キレイなサラサラの白いロングヘア―で、スタイル抜群、眼鏡をかけていてメイド服を着ている。


 ツインテールの子が俺に向けて何かを叫んでる。


 「ш∑⋔¶!ξΔ…ш∑⋔¶!」


 ……何語だ?


 ゲームをやってる上で出てくる簡単な英語は分かるけど、なんて言ってるかサッパリ分からん……どこの言語だ?


 というかここは何処なんだ?俺の部屋じゃないぞ 


 《言語翻訳ツールをダウンロードしますか?》


 う、うん……えっ!?


 頭の中で声がする!?いったい何なんだ!!


 《私は"アンドロイド"用の最新型戦闘"AI電脳"、その名も『黒兎くろうさぎ』》


 えっ!……アンドロイド?……"AI電脳"?


 俺は自分の手を見てみた。


 なんだこれ……


 驚いた。


 手が肉と皮で出来た


 金属で出来ていて、関節は人形フィギアみたいな"球体関節"の


 そして俺は今いる部屋にあった窓に反射した自分の姿を見る。


 驚愕した。


 まるでスターマルォーズに出てくるC3Pマルやターマルネーターの中身みたいな、"ロボット人間"……"アンドロイド"になっていた。


 そして窓の外の景色


 宇宙空間だった――


 俺が呆然自失となっている時にまた頭の中から声がする。


《翻訳ソフトのインストールが完了、起動します。》


「ш乗⋔て!……早くG・Sに乗って戦って!」


 ツインテールの女の子の声がハッキリと理解出来るようになった。


「貴方だけが頼りなの!『黒兎』をインストール出来てるんでしょ!?」


にあるG・Sに乗って戦わないと、私達は全員殺されるわ!」


 女の子が指さしたその先には……巨大な二足歩行ロボットがあった――


 これは『G・S』だ。


 ゲームの世界の巨大人型ロボ、『G・S』が目の前にある……。


 感動したと同時にどうやら俺はこれに乗って戦わなければ死ぬらしいことを理解した。


 俺の中に居るヤツ!


《『黒兎』です》


 黒兎!とりあえずコクピットの開け方と乗り方を教えてくれ

 

《了解しました "マイ・アリス"》


 アリス?誰だよ。


《お気に召しませんか?》


 いや、それよりも早く出撃しないと、あの子がブチ切れてるし


《了解 自動操体オートマタモードへ以降します》

 

 身体が勝手に動き出して、颯爽さっそうと『G・S』の操縦室コックピットに乗り込んだ。


 よし!コクピット内はゲーセンにあった"『G・S』筐体"と同じだ。


 俺は家に籠ってPC版や据置機でやる方が好きだが、まぁいい


 黒兎!、自動操体オートマタを解除して体の自由を俺に戻してくれ。


 《了解アリス 解除しました》


 俺はこんな意味不明の状況になったのに、『G・S』のコックピットに乗り込んだ瞬間、気持ちが冷静になった。


 もしかしたら『G・S』に乗って戦えることを楽しんでるのかも知れない


 とりあえず今の自分の状況やこの世界については後まわしだ。


 黒兎!



 《イエス・アリス》



 出撃だ!――


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