第1059話 蕎麦屋で二次会
「大将、お邪魔するよ」
「いらっしゃい……伯爵様ですか、ご無沙汰しています。後ろは例の?」
「うむ、とりあえずツマミと酒。タジマ君はお茶かな?」
「あ、はい」
「……俺もお茶でいい」
「なんだね、もう酔ったのかい?君も見た目に反して弱いんだねー」
「……人間に、酔ったんだ」
「酒とお茶2つ、ツマミと……いつものを準備しやす」
そう言ってお店の大将さんが奥に消える。
2軒目のお店は江戸時代っぽい造りのお店。
壁に手書きのお品書きがあるけど達筆すぎて読めない……
「……ここ、何屋さんです?飲食店なのは分かりますけど」
「うむ、ここは蕎麦屋だ。店の名前は忘れたがサムライのいた時からあるらしいぞ」
「……江戸創業か。江戸のそばは美味いと聞くが」
へー、蕎麦屋さん!
俺、あんまり蕎麦食べないから新鮮。
熊本もそうだけど西はうどん文化だからねー。
年越し蕎麦以外にはそんなにお目にかからない。
夏場にコンビニでざるそば食べるかなーって思うぐらいかな。
「おまちどうさん」
「おぉ!これこれ!やはりニホンに来たらこの蕎麦だな。だしの香りが良い」
「……シンプルだな。てっきりざるで来るもんだと」
「釜揚げ、そば?初めてだなー」
「ウチは代々速度重視で売ってるもんで。味は二の次なんですが……伯爵様はお気に入りって言ってくれて」
大将さんが照れながら教えてくれる。
ここのお店、名前は『沢』
江戸三大蕎麦の『薮』にハマった初代が弟子入りして店を持ったそう。
もちろん初代は亜人です。
何ならぬらりひょんだってさ。
……妖怪総大将が蕎麦打ちて。
定年退職後の趣味じゃないんだから……
「俺で4代目になりますが、店の味ってやつが出汁以外なくてですね。ま、他店と比べられると頭抱えちゃうんですよね」
「ズルズル……うむ、この出汁が良いのだ。トッピングも最低限でお財布にも優しい。吾輩はここが推しだぞ」
「……もぐもぐ……うん、美味いな。蕎麦の風味も感じられてワンコイン以下なら有名になるだろう」
「あ、2人とも食べてる!俺も食べる」
話を聞いていたら2人ともズルズル食べてるやん!
俺も早速……ズルズルッ
う、美味い!
温かいお出汁と蕎麦の組み合わせが大変良き。
1口目にふわっとカツオの香りが広がりあとから蕎麦の味がやってくる。
釜揚げ特有のしっとりとしたのどごしがさらにお出汁と絡んで口いっぱいに広がる。
トッピングはかまぼことネギだけだけどこれもまたよし。
いやー、温まるわー。
冬場は最高の1杯になりそう。
「いやー、美味いですねー。熊本じゃ基本ざるそばなので初体験です」
「ありがとうございます。熊本だと南阿蘇辺りにそば街道っていう蕎麦屋が並んでいる地域があったような?あそこはウチと同じく釜揚げだったかと」
「なんと!それは知らなかったな。今度家族といってみよう」
「……そういえば阿蘇は蕎麦を作っていたな。寒暖差が激しいからよく育つんだな」
「ほう!クマモトとは蕎麦の産地でもあったんだな!今度吾輩も遊びに行こう」
その時は事前に連絡ください。
うちに泊まるならなおのこと!
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