第295話 にゃーにゃー

「とーちゃん、あれなに?」

「んー?どうしたりゅう君?」


ティムくんに渡したタブレットの設定をやった次の日、子どもたちを連れて近くの公園まで散歩に来た。

日曜日は家族サービスの日ですから。

ダンジョンに潜るばっかりじゃゆりに怒られるからね。


りゅう君が指さした方向を見るとフラフラと動く黒い影が。

猫?にしては丸っこいような……


「え!もんすたー?ちりちゃんが倒すよ!」


ちりちゃんが手に持っていた棒を構えて走り出そうとする。

こら!やめなさい!

他の人のペットだったらどうするの!

飛び出して言ってちりちゃんを掴んで持ち上げる。

お、前より重くなった?

成長期ですねー。


「っと、そんなことはよくて。これは……うん、猫だね」

「ねこ?なーんだ、もんすたーじゃないのか」

「にゃー?」


黒い影の正体は子猫でした。

生まれたて?という訳ではなさそうだけど、小さい猫だねー。

ふるふる震えてるけど、しっかりこっちを見てくる。


「誰かの家から逃げ出してきた?にしては小さすぎるし……」

「ねこならいいやー。ちりちゃん、あっちで遊んでくるー」

「にゃーにゃー」


……うん、うちの子は元気です。

とりあえず子猫については一旦自治会長さんにお願いしよう。

ちょうど公園に日向ぼっこしに来てるしいいかな。






「お疲れ様です、万福寺さん。今いいですか?」

「おや、田島さん。お疲れ様です。今日は子守りですか」


自治会長の万福寺明夫(まんぷくじ あきお)さん。

近くの中華料理店『梅林亭』の店長さんでもある。

若い頃中国まで修行に行って学んだ麻婆豆腐は絶品だよ。

ガツンと来る辛さの中にしっかりと旨みが入っててご飯が進む進む。

ゆりは辛すぎて餃子とチャーハンだけど、子ども達も大好きなお店だ。


「子どもが元気なのは何よりです。こうやって見ているだけで元気を貰えますよ」

「そう言って貰えると何よりです。それで、ちょっと話が変わるんですが、近くで子猫が逃げ出した、とか話は聞いてないですか?」

「子猫ですか?いえ……もしかして子猫拾いました?」

「そうなんですよね。さっき小さな黒猫を見つけまして……うちで引き取ろうにもアパート、ペット禁止で」

「なるほどなるほど」


まだ引越しできてないからアパート生活なのです……

飼い主が見つかるまで一時的に保護するにしても出来ないのです。


「子猫は飼い主が分からないことが多いんですよね。とりあえず保健所に連絡して私が預かりましょう」

「すみません……もし引き取り手がなければ連絡ください。引っ越した後にひきとりますから」

「了解です。そういえば引越しでしたねー。引越ししても同じ地区だから変わった気がしませんな」

「ですねー。来月からも引き続きよろしくお願いします」


ゆり、猫大好きだもんね。

実家にいた頃も猫に甘えてたから喜びそう。


それにしても来月、引越しですよ。

遅かったような早かったような。

引越し後には盛大にパーティとかしたいねー。




―――――――

閲覧ありがとうございます!


もう少し続くよ日常編


そろそろダンジョンに入ります。




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