悪役令嬢になったら、幼なじみの王子様が私を救ってくれた!?
六角
私、悪役令嬢になっちゃった!?
私は目覚めた瞬間から何かがおかしいと感じた。
まず、目の前に見える景色が違う。私の部屋ではなくて、豪華な装飾が施された広い部屋だった。壁紙やカーテンや家具や絵画や照明や…全部が私の知っているものと違う。
次に、私の身体が違う。私は鏡を見つけて自分の姿を確認した。そこに映っていたのは金髪碧眼で白肌でスタイル抜群の美少女だった。私は黒髪茶眼で小柄で平凡な容姿のはずなのに。
そして、私の名前が違う。私は自分の名前を呼んだ声に反応して振り返った。そこにいたのは、私が読んでいたライトノベルの登場人物だった。彼はレオンハルト・フォン・ヴァイスという名前で、この国の第一王子であり、私の幼なじみでもある。彼は金髪碧眼で白肌で長身でイケメンだった。彼は私に微笑みかけて言った。
「おはよう、エリザベス」
エリザベス…その名前に私は悲鳴を上げた。私はエリザベス・フォン・ローゼンベルクという名前で、この物語の悪役令嬢だった。
「ええええええええええええええええええ!?」
私はパニックに陥ってしまった。どうして私がこんなことになっているのか?どうして私がこの世界にいるのか?どうして私がエリザベスになっているのか?どうしたら元に戻れるのか?何もわからない。
レオンハルトは私の様子に驚いて、心配そうに近づいてきた。
「エリザベス、どうしたの?具合でも悪いのか?」
彼は私の顔を覗き込んで、手を伸ばしてきた。私は reflexively に彼の手を払ってしまった。
「触らないで!離れて!」
私は彼から距離を取ろうとしたが、ベッドから落ちてしまった。痛い…。
「エリザベス!大丈夫か!?」
彼は私に駆け寄ってきて、心配そうに声をかけた。私は彼を見上げて、目が合った。彼の瞳は真剣で優しかった。私は思わず見惚れてしまった。
「レオン…」
私はつい彼の名前を呼んでしまった。すると、彼は驚いたように目を見開いた。
「エリザベス…?」
彼は不思議そうに私を見つめた。私は慌てて我に返った。
「あ、あの…ごめんなさい…」
私は恥ずかしくて顔を赤くした。レオンハルトはしばらく私を見ていたが、やがて笑って言った。
「いや、別に気にしなくていいよ。久しぶりに呼んでもらって嬉しかったよ」
「久しぶり…?」
「ああ、エリザベスは最近、僕のことをレオンと呼ばなくなったからね。レオンハルト様とか王子様とか堅苦しい呼び方ばかりだったから」
「そ、そうだったんですか…」
私は思い出した。そうだ、エリザベスはレオンハルトに想いを寄せているが、彼が主人公である貧乏令嬢アリシアに恋をすることを知ってから、彼と距離を置こうとしていたんだ。それで、呼び方になっていたんだ。でも、私はそんなことを知らなかった。私はレオンハルトのことが好きだと気づいてしまった。彼は私の幼なじみで、いつも優しくて面白くて頼りになる人だった。私は彼と一緒にいると楽しかった。でも、私はエリザベスではない。私は藤原美咲だ。私はこの世界に居場所がない。私は彼に恋をしてはいけない。
「エリザベス、どうしたの?顔色が悪いよ」
レオンハルトは心配そうに私の顔を覗き込んだ。私は彼から目を逸らした。
「いえ、大丈夫です…」
「本当か?」
「本当です」
「じゃあ、一緒に朝食に行こうか」
「え?」
「今日は僕の誕生日だから、特別にエリザベスと一緒に食べたいんだ」
「誕生日…?」
私は驚いた。そうだ、今日はレオンハルトの誕生日だった。物語では、エリザベスはレオンハルトにプレゼントを渡そうとするが、アリシアに邪魔されてしまうシーンがあった。私はそんなことをするつもりはなかったが、せめてお祝いくらいは言わなくては。
「お誕生日おめでとうございます、レオンハルト様」
私は礼儀正しく言った。レオンハルトは苦笑した。
「ありがとう、エリザベス。でも、やっぱりレオンと呼んでくれる方が嬉しいよ」
「そ、そうですか…」
私は照れくさくて言葉に詰まった。レオンハルトは優しく微笑んで、私の手を取った。
「さあ、行こう」
彼は私を引っ張って部屋を出た。私は彼の手が温かくて心地よかったことに気づいた。でも、同時に罪悪感も感じた。私は彼の幼なじみではない。私はこの世界に属していない。私は彼の手を離すべきだった。
でも、離せなかった。
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