第69話 (沢風和也視点)
「くふふ」
学校に通えばやはりモテモテ。保護官の5人が僕の周囲を固めるが、僕が大丈夫だと言えば、少し離れて控えてくれる。
「あ、ご、ごめんね」
それはたまたまだった。廊下を曲がった拍子に前から来ていた女の子のお胸に触れてしまったのだ。
下手に前世の知識があるからセクハラで訴えられたらどうしようかと焦っていたら、その女の子は顔を真っ赤にしていたが、嫌がることなくむしろ僕に触られてうれしそう。
「あ、だ、大丈夫です」
その理由はすぐにわかった。顔を真っ赤にして離れた彼女は僕にお胸触られちゃった、ときゃーきゃー言いながら逆に自慢していたのだ。
そうか男性が少ない世界。イケメンで人気のある僕から触れられるのは逆にうれしいだけなのか。
それからは、僕に近づいてくる女子にはお胸鷲掴みサービスをしてあげれば、みんなきゃーきゃーと黄色い声を上げてうれしそうにしていた。やはり僕に触られるとうれしいらしい。顔を真っ赤にしてくねくねしている。
何度もお胸を揉んであげれば告白もされる。いいね。みんな僕の彼女になるといいよ。
ただ学校では彼女を作るだけに留めた。まだ高校生の彼女たちを孕ませる訳にはいかないと思ったからだ。イメージだって下がるだろう。その代わりに5人の妻たちを大いに可愛がった。
妻たちも子どもができることを望んでいるし、できたらできたで新たな保護官が配属されてくるから問題ないともいうしね。
ダンス動画や生配信を定期的に続けていれば、結構有名な音楽番組から声がかかった。それはちょうど二曲目となる新曲をもうすぐ出すと告知したあとだった。
僕の動画を取り上げられてニュースになったことはあったが出演オファーは初めて。
交渉事は妻の保護官たちに任せていればうまくやってくれるので僕は新曲の仕上げに入る。
前回同様、前世の記憶から覚えている曲を繋ぎ合わせて一つの曲にしていく。ただミルが居ないので完成度はちょっと下がった気がしたが、及第点。それに男性ミュージシャンは一人も居ないんだから誰も文句なんて言わないだろう。
「なんだよあの女」
番組リポーターのウタコ。あいつが変な質問するから歌い終わって戻ったきた教室では微妙な雰囲気のまま番組が終了したぞ。剛田武人? そもそも僕は男に興味がないから覚える気はないんだよ。
男の名前を覚えるくらいだったら学校の女の子の名前を一人でも多く覚えた方がいい。人数が多くて大変なんだよ。でも覚えていないと学校での僕のイメージが下がるからね。
でもまあ妻たちが大丈夫だと言いってくれたので気にしないことにした。
「沢風和也様ですか」
ある日、上級生になる東条麗香(とうじょう れいか)という東条グループのお嬢様から声をかけられた。
「そうですけど」
彼女が言うことを適当に聞いて頷いていれば勝手に婚約者にされていたんだが、まあいい。東条グループはかなりデカそうだし保護官の妻たちも悪い話ではない、むしろ僕にとっていい話だと諸手を挙げて賛成してくれた。
その話がホントだったと気づくのはそれから一月後、東条グループ傘下の高級ブランド『ミクダース』の専属モデルにもなり、写真集も出すことにもなった。色んな雑誌の取材やインタビューも増え、クイズ番組のレギュラーにもなった。
もちろん問題の答えは先に渡されているので、正解するも間違うも自分次第。好きにしていいらしい。次はドラマ出演なんかはどうだろうか? って話も来ている。
あ、これも東条グループ傘下のビックハンド芸能社に所属しているから入ってくる話なんだけど、ここのマネジャーの桃華は僕のファンだったのでやる事やって妻にしたら涙を流して喜んでくれた。
今日も張り切って僕のことを売り込みに行ってくれたよ。
「武装女子?」
東条麗香が久しぶりに顔を見せたかと思えば、『武装女子』は知っているかと尋ねてきた。
————
——
「武装女子? なんだよそれ」
「今ネッチューブで最も勢いのあるチャンネルで剛田武人という男性を中心に活動しはじめたバンドグループです」
「剛田武人?」
「数ヶ月前までは唯一の男性ネッチューバーとして活躍してましたが和也様を罵る動画を上げてから散々叩かれて姿を消した彼です」
「おいおい、あれが僕に手を出してきたデブだというのか、冗談はよしてくれ」
「女性ネッチューバーとコラボしたりしていましたが、ホントに知りませんでしたか? まあいいです。彼自身、チャンネルは持っていませんでしたのでわたくしも油断しておりました……」
東条が、今は僕の売り込みをしていたところ、今この男が業界に出てくるとあなたを推している東条グループ全体の業績に響くから圧力をかけているのだと言う。
「ほう」
おお圧力とか怖いね、ぷくく、あのデブもついてないね。痩せて見れる顔になっているのが気に食わないが、そのまま一生沈んでいればいいよ。
せいぜい僕の活躍を指をくわえて眺めてね。
「はぁ、せめてあと一年後にデビューしてくれればうちに引き込んだのですが……」
ん? 泣かず飛ばずの状態をこのまま維持させて来年には東条グループに引き込む?
「はあ!?」
「何か不満でも?」
「不満だらけだね。僕が居るんだそんな奴は必要ない!」
「うーん。無理ね。武装女子の彼の勢いって今すごいのよ。ウチが圧力かけてるけど時間の問題。一年いえ、半年も持たないかもね。それにウチとライバル関係にある西条グループが彼に接触しているって情報もあるの。
ライバルグループに引き込まれるくらいなら計画を前倒しにしても彼らをこちらに引き込もうって話が出てきているほどなのよ」
「くっ、ぼ、僕だけではダメだというのなら婚約は無しだ!」
「はぁ、和也様はもう少し頭が切れる方だと思っていましたが……まあ、わたくしの一存では何もお応えできませんので、この件はグループ代表であるお婆様に報告させていただきますわ。話はそれからになりますが構いませんか」
「くっ、そう……」
「東条様! 突然話に割って入り申し訳ございません。私は妻のりん子と申します。
和也様も予想外の出来事が起きて冷静な判断ができていないようなのです。ですからこの話は時間を空けてからもう一度話し合うということでお願いできませんか。どうかお願い致します」
「「「「お願い致します」」」」
妻のりん子が頭を下げれば他の妻たちも一斉に頭を下げたが、もちろん僕は何も悪いことをしている訳じゃないので頭は下げない。
むしろ東条が理不尽なことを言ってきたので彼女の方こそ頭下げるべきだと思っているが、金持ち令嬢にそんなこと通用しないと分かっているから言わないけど。
ジロリと睨んでくる東条。
「はぁ、ではりん子さん。しっかりとみなさんで話し合ってお返事をください。カエ、後で確認をお願いします」
「はい。お嬢様」
返事をしたのは東条の秘書らしい女。その女はちらりと僕の方を見てから東条と一緒に出て行った。
結局僕は妻たち6人に泣きつかれて東条の提案を受け入れることにしたが、東条からの返事はしばらく待つようにと言われただけのものに留まり、小馬鹿にされている感が否めず、妻には内緒で真剣に婚約破棄を考えることにしていた。
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