第56話 『 ボッチ裏切る! 』
「ねえアマガミさん。今日もお昼一緒に食べましょう!」
「嫌だ。あたしはボッチとしか食べねぇ」
本日も積極的に昼食に誘う萌佳さん。それにアマガミさんはツンとした態度で断る。
僕はそんな光景に苦笑いを浮かべながら、
「言い忘れたけど、僕今日図書委員の仕事なんだ。だからお昼は一緒に食べられないよ」
「そんなあ⁉」
「だから白縫さんお願い。アマガミさんとお昼一緒に食べてあげて」
「喜んで一緒に食べるわ!」
「ならあたしは一人で食べるぞ!」
アマガミさんが裏切られたように僕を睨んでくる。
「これも慣れだよ。少しずつ皆と打ち解けないと」
「その最初の一人が私なんて光栄だわ!」
「ええい抱きついて来るな! 鬱陶しい!」
「むぐぅ。離そうとしても離れないわよ天刈さん」
「助けてくれよボッチぃ」
嬉しさが限界を超えて抱きつく白縫さん。どうやら相当アマガミさんのことを気に入ったらしいようで、多少冷たくあしらわれても全く気にしていない。
ならばそのうち僕みたく白縫さんも打ち解けられるだろうと信じ、僕はアマガミさんにお弁当箱が入った弁当袋を渡す。
「はい。今日のお弁当」
「いつも悪ぃな……っておい、なんで引っ込めるんだ」
「今日は渡す条件として、白縫さんとお昼一緒に食べることを誓ってください」
「んなっ⁉ 今までそんな条件なかっただろ⁉」
「今日は特別です。ほら、約束してくれないと今日はお預けだよ」
「くっ。やるようになりやがったなボッチ」
悔しそうに歯噛みするアマガミさん。それから屈服でもしたかという顔で渋々と頷いた。
「分かったよ。コイツとメシ食う。だからその弁当くれ」
「はい。よくできました」
僕は微笑みながらお弁当箱をアマガミさんに渡した。
そんな僕らのやり取りを黙って観ていた白縫さんは、僕らの顔を交互に見やると、こう呟いた。
「天刈さん。ボッチくんにお弁当作ってきてもらってるんだ」
まるでそれが尋常ではないとでも言いたげな声音に、アマガミさんは顔をしかめた。
「んだよ。なにか悪いか。言っとくけど渡さねえからな」
「私自分のお弁当あるから大丈夫……じゃなくて、付き合ってもないのにお弁当作ってもらう関係って本当に何なの?」
「「何か変か(な)?」」
アマガミさんと顔を見やって小首を傾げる僕。
「二人とも、もう頭が麻痺してるね」
「んだとこら。あたしの頭は至って正常だ」
「僕の頭も正常だと思うけど」
白縫さんの言葉に心外だと憤りを表す僕とアマガミさん。
そんな僕らを白縫さんは再び交互に見やると、重いため息を吐いて、
「二人が進展しない理由が分かった気がするな」
「「どういうこと?」」
揃って首を傾げる僕らに、白縫さんは「そういうとこ」とまたため息をこぼすのだった。
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