学校では怖いと有名なJKヤンキーのアマガミさん。家ではめっちゃ可愛い。
結乃拓也/ゆのや
プロローグ 『 僕の彼女はヤンキーでめっちゃ可愛い 』
唐突だけど、僕のカノジョはヤンキーだ。
「オラオラァ! もっとだ! もっとボコボコにしてやる!」
乱暴で口が悪くて、鋭い赤瞳が猛獣のように恐ろしい女の子。
「おっ。まだやんのか。威勢だけはいいが……それだけじゃあたしには勝てねぇよ」
学校では誰もが恐れる最恐のJK。
「ハッ! そんなパンチ痛くも痒くもねぇ! やるならもっと本気で掛かってこい!」
サラサラな金髪から覗くピアス。
狂犬のように尖った
鼻に
「ここまでよくやったよ。私相手にここまでやるとは褒めてやる。……だけど、これでしまいだッ!」
彼女は粗暴で。
口調が乱暴で。
喧嘩っ早くて。
喧嘩が超強くて。
性格も強気で。
誰もが恐れる人。
そんな彼女は今日も今日とて怖――超可愛い。
「いよっし! 倒したぁ。いやー、今回の敵はめっちゃ強かったな! 危うくクエスト失敗するとこだった!」
「流石だねアマガミさん! 今回は一回も死んでないよ!」
「ボッチが回復スポット置いてくれたり
「じゃあ、これは僕たちの愛の力で勝ち取った勝利だ!」
「そ、そういう愛の力とか恥ずかしいこというなっ!」
僕の言葉に、彼女――アマガミさんが顔を真っ赤にして照れる。
その照れた顔、超可愛いな~。
…………あれ、なんですか皆さん? そんな「え、なんか喧嘩してたんじゃないの?」みたいな顔して。普通に僕とアマガミさんでゲームしてただけなんですけど?
アマガミさんがヤンキーなのは事実だけど、今は僕の家で一緒にゲームをしている真っ最中です。
「しっかし、ボッチはマジでどのゲームも上手いな」
「あはは。どのゲームもそれなりにやり込んでるからね」
「なんつーか、手の動かし方があたしと違うよな。お前のはプロの動きだ!」
「えへへー。そんなのに褒められると照れちゃうな」
アマガミさんに褒められて露骨に喜ぶ僕。将来はゲーム実況者にでもなろうかな。
「……でも将来は安定した職に就いてアマガミさんと末永く幸せに暮らしたいしなぁ」
「き、気が早すぎるぞ⁉」
「あ、心の声洩れてた?」
「ダダ洩れだよっ⁉」
またまた顔を真っ赤にするアマガミさん。
アマガミさんは喧嘩は超強いけど、実はとことん初心な女子なのだ。
可愛い、っていうだけで顔を真っ赤にしてしまうほどに。
こういう所、マジで堪らないんです。もう萌え過ぎて灰になってしまいそうだ。
「お前は何の脈絡もなくあたしと結婚したいとか一生幸せにするとか言うな!」
「全部事実だから。早くお互い成人したいね。そうすれば結婚秒読みだよ!」
「あ、あたしはまだそんな覚悟できてない!」
「そんなあ⁉ もう付き合ってて、同じ家で暮らしてて、こんなに相性がいいのに⁉」
「だとしてもだよ⁉ あたしたち、まだ付き合って一年も経ってないんだぞ! なのに、もう結婚すること考えてるとか、お前マジで高校生かよ⁉」
「愛に大人も子どもも関係ないと思うんだ。大事なのはお互いの気持ちさ!」
「だからあたしはまだ覚悟できてないって言ってるだろ⁉」
普段は強気なのに、こういう時はいつも弱腰なんだよなぁ、アマガミさん。僕はその逆だけど。
今だって、何故かアマガミさんへの愛の告白が止まらないし。
「くはぁぁ。ほんと、お前と付き合うのは大変だ。疲れる」
ゲーム機をテーブルに置くと、アマガミさんはソファの上で膝を抱えてきゅっと縮こまった。
「僕のこと、嫌になった?」
「……嫌じゃない。嫌じゃないけど、お前から好きって言われると、心臓がずっとバクバクするんだよ。嬉しすぎて、自分が自分じゃなくなるみたいだ」
「僕も同じだよ。アマガミさんと一緒にいるとずっと心臓がドキドキして、顔を見る度に好きって気持ちが更新していく」
「ちょ、じりじり寄ってくんな⁉」
今だってドキドキしてる。アマガミさんと距離を縮めると、もっと心臓が
「でも、きっとこのドキドキがアマガミさんの事が好きだっていう何よりの証拠だと思ってるから。僕は、この痛みが好きなんだ」
「……ドMかよ」
「アマガミさんのことを好きでいられるなら、僕はドMでもドSでもなんでもいいよ」
「~~っ! お前のそういうところ、ホントにっ! ホントにっ!」
じりじりと迫る僕に、アマガミさんは顔を真っ赤にして目を潤ませる。
「アマガミさんは、こんな僕は嫌い?」
「嫌いじゃない! す、すす好きだよ!」
「ならよかった」
「うぅ。この草食系肉食男子めっ」
「何それ、矛盾しまくってるよ」
「大人しそうにみえて超強気に攻めてくるってことだよ⁉」
僕って強気なのかなぁ。大人しそうにみえて、っていうけど、実際僕は大人しいほうだ。
あぁ、でも。
アマガミさんを甘えさせたり、逆に甘えたい時は、けっこう強気かもしれないね。
「……アマガミさん」
「な、なんだよ」
距離を詰めようとする僕から逃げるアマガミさん。けれどソファの端まで追い詰められて、逃げ場を失う。
おかげで僕は、委縮するアマガミさんに簡単に距離を詰めることができて、
「ふふっ。そう簡単には逃がさないよ」
「――ぅぁ」
僕がアマガミさんの手首を掴むと、うめき声が漏れた。
羞恥心が限界に達して目を潤ませるアマガミさんに、僕はにこりと微笑むと、
「覚えてるよね? レガレックスを倒したら、報酬としてキスしてくれるって約束」
「お、覚えてにゃい!」
攻められることにとことん弱いアマガミさん。追求されて、露骨に嘘を吐いておまけに噛んだ。にゃい、だって。なにこのカノジョ超可愛い。
「じゃあ、僕からキスしてもいい?」
「いやなんでだよ⁉」
「え、アマガミさんとキスしたいから」
「真顔で下心晒すなよ⁉」
そら晒しますよ。だってアマガミさんから報酬のキスをもらいたいから。
しかしこ、れ以上強引に迫ると不機嫌になったアマガミさんからキスではなく腹に足蹴りを入れられそうなので、僕は短期決戦に移ることにした。
「アマガミさんは約束破らない人だって、僕知ってるよ」
「……うっ。で、でもぉ。宣言してからキスすんの、超ハズイ」
「じゃあ、もう強請るのは止めるね」
そう言って一歩分引き下がると、アマガミさんは申し訳なさそうな表情になった。
「くぅぅ。分かったよ! してやるよ! キスすればいいんだろ!」
「僕はいつでも準備できてるよ!」
「急に元気になりやがった⁉ さてはあたしのこと嵌めたな⁉」
「ハメテナンカナイヨ」
「露骨すぎんだろ⁉」
アマガミさんが「うがああ!」と泣き叫ぶ。
それから潤んだ瞳で僕を睨んできて、
「後で覚えてろよ、ボッチ」
「あはは。分かった。煽った罰はちゃんと受けるよ」
ちょっと調子に乗りすぎたかもしれない。
ただでさえ鋭い視線をさらに鋭くして、アマガミさんは僕のことを睨んでくる。
チョークスリーパーくらいは覚悟しておいて、僕はアマガミさんにご褒美を催促する。
「さ、アマガミさん。僕はいつでも準備オッケーだよ」
「急かすな! する前に一回深呼吸をさせてくれ⁉」
「うん。いいよ」
報酬を与えるのはアマガミさんだから、僕は彼女の意思を尊重するだけだ。
顔を赤くするアマガミさんをニコニコと見守ること数秒。
吸って吐くを繰り返して、準備できたと気合を入れたアマガミさんが僕を真っ直ぐに見つめた。
「い、一瞬でケリつけてやる」
「べつに僕は何秒でも構わないけど?」
「ムッツリスケベ! 一瞬だよ⁉」
揶揄って、怒られた後に――
「う、受け取れボッチ。あたしからのご褒美だ。――ちゅっ」
この物語は、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます