その①
無限の可能性を秘めたそれに、
恐る恐る手を伸ばしてみる。
何の変哲もない封筒である。
上質な紙の感触を確かめる。
少しの重みを感じる。
少女はそれを、あたかも昔から
持っている宝物を扱うように、
丁寧に鞄の中にしまうと、
自分の靴を手に取り、地面へと置く。
透明感のある肌。一点の曇りもなき
その脚に革靴を履く。
運動部達の声、吹奏楽部の音色が
響き渡る青空の下に、彼女は歩き出す。
外に出ると、この高校の生徒がちらほらと見える。
並んで歩く者の喋り声。
外周をしている者達の
ハリのある掛け声。
そんなものなど今の彼女には
空想を散らす邪魔でしかなかった。
今、この鞄に確かに入っている
例のものはなんなのだろうか。
この送り主は誰なのか。
果たしてどうにも分からないが、
ひとまずは帰った後で確かめることにした。
ただ、靴箱に手紙と言えば典型的なものが
ある。彼女は確かにそれを知っていた。
淡い期待に胸を高鳴らせながら、
彼女は帰路に着く。
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