第19話 報告

「お久しぶりです、皆さん」


 ダンジョン踏破者の表彰式が終わった翌日、私は一週間ぶりくらいに配信を開く。準備やら契約やらでいろいろ忙しくて全然配信が出来なかったのだ。


 しかしそれでも視聴者さんたちが集まってくれているようで三万人まで増えてくれる。


『待ってたよー』

『配信出来て偉い!』

『久しぶりー』

『ここどこ? ダンジョン?』

 

「ここは私が踏破したダンジョンの中ですね。他に配信する場所が見つからなかったので」


 実は配信をするための次のダンジョンをどこにするかまだ決めていなかった。近くに五個くらいはあるんだけど、まあ近況報告をするなら慣れているここで良いかと思ってここに来た。

 記録石で好きなだけワープできるから人の目を忍んで配信できるし。


「まずはMVの再生回数が一千万回を突破しました! 皆さん、本当にありがとうございます!」


 実はAZUSAさんに作ってもらった曲のMVの再生回数が一千万回を突破していたのだ。百万回突破の感謝をする暇もなくてビックリしちゃった。

 

『おめでとう』

『おめー』 

『おめでとう!』

『一週間くらいで一千万回超えるとかえぐすぎww』

『億はいきそうだよね』

『てか歌声マジで神だった』

『今日の朝の情報番組でも流れてたよ』


「流れてましたねー。ありがたいです」


 マネージャーの鈴木さんからは話を聞かされていたから、朝番組が始まるまで待機して聞いた。テレビから自分の声が聞こえると何だか不思議な感じがしたよね。


「それと発表があった通り、この度私マナは芸能事務所『シャーロック』に所属することになりましたのでご報告をいたします」

 

『見たよー』

『びっくりした!』

『えマジ? まあ見てなかった』

『てか一か月で最大手の芸能事務所から声かかるとかやばすぎじゃんww』

『AZUSAと同じ事務所ってことはいつでも推しに会えるってこと!?』


「いえいえ流石にいつでもは難しいですよ。AZUSAさんも忙しいですし」


 それに毎回会うことで憧れの存在を見慣れてしまうかもしれないのが怖い。『シャーロック』に入るまでは逆に毎日会いたがっていたというのに不思議なものだ。


「あとご報告したいのはこのピンバッジですね。見せてもいいらしいので見せますね」


 鞄の中から黒い箱を取り出す。ダンジョン踏破の表彰式の際に貰った星型のバッジである。パカリと開けてドローンカメラへと見せる。


『キレイ』

『こんな光ってんのか』

『金属なの?』


「なんか特殊な金属らしいですね。錆びないし色落ちもしないらしいです」


 持ってみるとかなり重い。大きさ的には一番長いところが大体2,3cmくらいで小さいけど重さで言えば30gくらいはあるかな? もうちょっとあるかも。


 持っていた金色に光り輝く星型のバッジを黒い箱の中に戻す。視聴者の皆と共有したかったから敢えて今まで見てこなかったんだけどまさかこんなにきれいなものだとは思わなかった。


「報告としてはそのくらいですかね。あ、後もう一つ録音しているものがありますので近いうちにそれも発表出来たらなと思います。ダンジョン配信は事務所に入っても続けるとは思いますので、皆様その時はよろしくお願いします」


 実はもう既に次のMV撮影が始まっているのだ。今回の曲もまた激しい感じの曲で歌っていて楽しい。

 

『マジ楽しみ』

『新しいMV?』

『あなたの曲を聴くのが日課です』

『いつかアルバム出してほしい』


「アルバムが出せるようになったら嬉しいですねー」


 視聴者数はすでに五万人を軽く超えている。ただの報告配信なのにこんなに大勢の人が来てくれるのが嬉しい。この人たちの期待を裏切らないように次の探索場所を決めないとな。


 それから視聴者さんの質問に答えていき、配信時間が2時間を超えたところで配信を終えるのであった。

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