地味な隠キャとして生きるつもりが失敗していた件

朧月

第1話

こんなはずじゃなかったんだ…


俺は地味で目立たない大学生活を送るために地元から遠く離れたこの大学に入った。

所謂隠キャといわれるように振る舞っている。

小さい頃から親の影響で海外を転々としていてほとんど学校というものに行ったことはなかった。

高校一年の途中ぐらいから日本で暮らすようになり高校に入ったが常識を知らなかった俺はかなりの問題児でいろんなゴタゴタがあった。

そんななかで一人の女の子と出会い親友といえるほど仲良くなりその子の協力もありなんとか卒業できた。

その子が居たから普通の生活がおくれて大学に入ることが出来たといっていいだろう。

そこそこ大きな大学で全学生と知り合うどころかほとんど見かけることなく卒業する同学年も多い。

知り合うまではよく知らなかったのだがこの大学には三女神と評される異性だけでなく同性からも人気のある女性がいる。

俺のように特に興味のない人間は別にして普通の感性をもつ男ならどうにかしてお近づきなりたいと思うであろうことは容易に想像できるほどに容姿が整っている。

一人は高校からの付き合いだか他の二人はどんな人物なのか認識もしていなかった。

その三人がなぜか俺の前で言い争いをしている。


「とにかくこいつのことは私に任せてあなたたちは帰りなさいよ。こいつとは高校からの親友で私が面倒みるのが一番いいのよ。」


「なーにワケわかんないこと言ってるんですかー?伊庭さんは後輩であるアタシが面倒みるんで先輩方はお帰りくださいー!」


「二人ともうるさい。あとは任せて帰るといい。」


「ふん。後輩とか先輩とかが居たら優也がリラックスできないでしょ。こいつのことを一番理解している私がいるからあなたたちは帰りなさいよ。それともホントはこいつのことが好きなのかしら?こいつの彼女だっていうのなら友達の私は大人しく帰るわよ?」


「す、好きなわけないじゃないですか。アタシはいつも世話になりっぱなしだからセンパイに恩返ししたいだけです。先輩方こそセンパイのことが好きなんならアタシは身を引きますよ。」


「な、なに言ってるの?好きとかじゃない。あなたこそ男女で親友なんておかしい。」


「わ、私とこいつはずっと親友でいると約束してるのよ。あなたたちとは年季が違いのよ。」


三人の言い争いはずっと平行線で終わりそうにない。


どうしてこうなった…


それは一ヶ月前に遡る。


俺、伊庭優也いばゆうやの生活が変わり始めたのは大学二年の10月、それまでは目立たず穏やかな生活だった。

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