第44話 斉藤くんに触る安西さん
「
「あ、そっか、ありがとう!」
期末考査前日も、俺と安西さんは勉強会をしていた。明日は化学基礎と国語と家庭科。国語は教えられることも少ないので、化学基礎を勉強することになったんだけど――眠い。テスト前でバイトが終わった後も勉強をしているせいか、あくびの回数が多くなってきている。安西さんに眠気をうつされたんだろうか。
「……ふわぁ」
「大丈夫? さっきからあくびばっかりだけど」
「いや、大丈夫。えっとどこまでやってたっけ」
「ここのページだけど――」
もう限界。俺はそのまま机に倒れていた。
――私の気持ち全然気付いてくれないよね。最近起きていられるのはキミのおかげなんだよ。
「ん……?」
近くで誰かの声が聞こえてくる。頬のあたりがなぜかこそばゆかった。
安西さんとの勉強会をしていたはずだけど、寝てしまったのか。あれ、そういえば、どこまでやってたっけ。
どれだけ寝ていたかも分からず、ゆっくり身体を起こすと、向かい側にいたはずの安西さんが隣にいた。
「……えっと、ごめん、勉強会の途中だったよね。ほんとにごめん!」
勉強会中に寝るなんて、さすがの安西さんでも怒ってるよな。隣にいるってことは起こしてくれようとしていたんだろうし。
そう思って謝ると、安西さんの顔が次第に赤くなった。
「起きてたの⁉」
「いや、さっきまで寝てたけど?」
寝ていたから、謝ったつもりだったんだけど……。
「起こしてくれようとしていたんじゃないの?」
「……え? じゃあ、あれは聞こえてなかった? じゃあ、あれをやっちゃったのも……」
慌てながら安西さんが何かを呟いている。安西さんがこんなに慌ててるってことは、寝ている間に何かあったんだろうけれど。まぁ、安西さんだし、変なことはするはずないだろう。
「何かあった?」
「ううん、何でもないよ。起こそうと思ってて。じゃあ、勉強の続きを始めよっか!」
「そうだね」
それから時間になるまで勉強会をしていたが、安西さんは目を合わせてくれなかった。
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