天への道、ニコ
皆様方は魂というものについて考えたことはありますか?
私はありません。ですが今考えてみますとどうも魂は体とは別のもので、さらにその魂というものは恐らく空気より軽いと思われます。
とすると、死とは肉体から魂が離れて天に上ることだと言えます。逆を返せば天に近い場所、例えば山の山頂などは最も死に近い場所と考えられます。
閑話休題。
私は列車の駅を降り、ごつごつとした地面を踏みしめました。目の前は鬱蒼とした木の群れ、道と人の通りだけが行くべき道を示していて。湿った草の匂い、鳥の声と葉が騒めく音が聞こえます。上を向けば恐ろしいほどに遠く高い山があって、朝日を頭に被る様はまるで王冠のよう。
いよいよ今回の旅の目的を果たす時が来ました。これから2日かけてこの……ニコ山に登ります!麓まで列車で来ました、ここからひたすら徒歩で頂上に挑戦です!
装備の確認。山登り靴と服、水と食べ物、タオル時計地図ライト、コンパスと緊急用レシーバー、羊毛セット用櫛、これでよし。行ってきます!
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さて、山道を歩いている間にこのお山の話をしましょう。ニコ山は標高がだいたい私200人分、寒冷気候帯にある独立峰。急な斜面や岩場が比較的少なく景色も充実しているため登山初心者に人気です。
霊峰としても知られていまして、社や像の類いもある他修行の地としても有名なのだとか。歩き始めてから5分で早速名所「お守り石」、水で清められた大きな石を皆で触って旅の安全を祈ります。
歩き続けます。ちょっとぬかるみっぽい場所を過ぎると切り立った崖のような場所に出て、高所からの景色を眺めつつ2時間ほど歩きますと今度は「神無川」に到着です。川というには貧相すぎるちょろちょろとしたのが足元を流れているのですが、掬ってろ過して飲んでみると花を吸った時のようないい甘みがします。
さらに進みますと2時間後、何か赤い花を発見、進むごとに段々と頻度が増えていきます。「かんかん花」、年中いつでも咲いている不思議な花です。春になるとここにチョウが来るのだそう。
そこから1時間後、段々と上の方にある明かりが見えてきます。あれは本日泊まる山小屋です。既にだいぶ疲れましたが、階段状になっている岩場を抜けさえすればウィニングランといった所。暗くなる前に着けたのは僥倖と言えましょう。
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さてさて、山小屋ですよ。初めてですし何たって私の憧れです。日の出に合わせて深夜に出発する登山家ってめっちゃかっこいいと思うんですね。そんなことないですか?
入ると木で組まれた重厚な天井がお出迎え、早速お部屋に向かいます。ぎりぎり頭をぶつけないくらいの天井にごわごわのベッド、体を休めるには丁度いい。個室なのでのびのび寝れます。それとガラス窓がありまして、中々お空が奇麗なのです。
夕食には何が出るか知ってます?
カレーですよカレー、キラッキラに輝いて見えるのは言うまでもありませんね。量が少ないですがそこはアレンジの余地ってことで、持参した乾パンと一緒に頂きましょう。とっても幸せですとも、特別な場所ですから特別な味がします。料理の整った味が行動食ばかりの腹にすっと収まります。
食べ終わったらすぐに寝ましょう。明日は早く、登山家には休息が必要です……
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