(4)とりあえず現状把握
朝食を食べ終えた僕と王女はとりあえず今の状況を一つ一つ丁寧に確認していく作業をしていた。
「なるほどね。つまり、アネッサが転移したのはガチのミスってことなのね」
「えぇ、そうなるわね…」
「で、アネッサは元の世界に帰れるの?」
「帰れる可能性はあるわ…限りなく0に近いけどね」
やはりアネッサの宿泊許可を求めたのは間違いではなかったらしい。
これですぐに帰れますなんて言われたら僕の方が困惑していたところだ。
「とりあえずはこの"ニホン"ってところで暮らしていくしかなさそうね……………あ、あのッッ!」
急に口籠ったアネッサに僕は訝しむ眼差しで問いた。
「どうしたんだ?」
途端、アネッサの頬が真っ赤に赤面する。
「図書館では絶交なんて言ってごめんなさいッッ!正直、アナタのこと見直したわ。あのままじゃ私異国の地で彷徨う羽目になってたもの…」
どうやらアネッサは僕に向かって謝罪しているらしい。
これに僕は少々驚きつつも、案外素直なところもあんじゃん。と思った。
「謝罪なんて要らないよ、大体、図書館のことを掘り返すなら僕が君を挑発したのが原因だろう?(笑)」
などと、返すとアネッサは「そ、それもそうだわねッッ!」と言いながらいつもの調子に戻っていった。
「よしッ、とりあえず確認作業終わり!今日は土曜日だからまだ時間に余裕があるな!………土曜日?」
ここで僕は一つの疑問を抱く。
僕が召喚されたのは金曜日だ。そこから3日間の異世界生活を送ったわけだから、本来なら火曜日の朝が正しいはずだ。なのに何故土曜日…?もしかして時間の流れが異世界とは違うのか…?と考えていると、アネッサが突然話しかけてきた。
「ねぇ、この"ニホン"って国アナタが案内してよ!私まだこの国のこと1ミリも知らないんだから」
確かにアネッサは日本のことについて一切知らないはずだ。
土曜日だし、日本を案内(歩ける距離だけ)してやろう。
「そうだな。とりあえず外に出てみるか!」
と言いながら僕は外に出掛ける用意をする。
ここで一つの問題が生まれたのだ。それは、アネッサの服だ。とても煌びやかで豪奢なドレスは見つめているだけで惚れ惚れしそうなほど素晴らしい装飾が施されているのだが、流石にこのドレスで街中は歩けないだろう。
というか、母さんと父さんは何故ドレスについてカミングアウトしなかったんだ…?
とりあえずアネッサには母が使っていた中で一番外に出て恥ずかしくないものに着替えてもらうことにした。
「ど、どうかしら…?」
僕は思わず息を呑んだ。
いつも母がおしゃれして出掛ける姿を見ているから、着る人が変わったぐらいではそこまで変わらないだろうと考えていた僕が馬鹿だった。
無論、母がいつも着ている服なので、彼女に似合わない落ち着いた色合いの、彼女らしからぬ水色をふんだんにあしらった服装なのだが、これがまた金髪と相性が良く、まるで水の精が目の前に居るような感覚に襲われた。
「あ、あぁ、とてもよく似合ってると思うぞ」
「ふふっ、アナタ褒め言葉がとても下手なのね(笑)」
「だっ、仕方ないだろう。これまで女性と話す機会すら少なかったんだから!」
「それもそうだわね、じゃ、案内してちょうだい。"エスコート"お願いね?」
「はいはい」と言いつつ玄関で靴を履きながら僕はドアを思い切り開ける。
3日振りの日本の外は案外眩しく、片手で目を覆いながらもう片方の手で彼女を"エスコート"する。
「さぁ、王女様。どうぞこちらへ(笑)」
「もう、調子乗りなんだから」
「ハハハ」と笑いつつ周りを見渡す。
ようやく……帰ってきたんだな。
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