第64話 グイグイ来る
「はぁ、はぁ……と、とにかく……無理だから」
東野くんのエスプレッソと、俺のアイスティーがテーブルに乗せられてからも、かれこれ十分くらいは格闘しただろうか。ようやく東野くんは力ずくで見ようとするのを諦めてくれた。
「普通に気になるなぁ。というか先輩、なんでそんなに隠してるんだ?」
「理由話したら内容話すのと同義になっちゃうから、ちょっと言えないかな……」
観られたらまずいスキルを持っている。なんて言おうものならまた攻防が始まりそうである。それだけは絶対に避けなければならない。
「へー、なんだよそれ、めっちゃ気になるじゃん」
「あはは……でも東野くんも自分の秘密探られるのいやでしょ。あんまり追及しないでもらえるとありがたいかな……」
何とか躱すためにそんな事を言ってみる。
「うーんまあ確かに……でも気になるな……」
この論法は有効だったようで、東野くんはちょっと考える素振りをしつつ、注文して届いたエスプレッソに口をつけた。
その姿はどうにも様になっていて、アングルを整えればファッション誌の表紙を飾れそうな完璧さだ。さすがはカリスマダンジョンストリーマー、指先にまで意識が行き届いている。
どうやったらここまで完璧な所作を身につけられるかなあ。とか思っていると、東野くんは良い事を思いついた。とでも言いたげにある提案をしてきた。
「そうだな……じゃあ明日一緒にダンジョン潜ろうぜ、スキルが分かんなくても動き見れば大体の腕前は分かるし」
「あ、うん、それくらいなら――」
反射的にそう答えて、答えた内容を頭で咀嚼して我に返る。
「いっ!? いやいや、東野くんにそんなこと頼めないよ!」
「なんだよ、遠慮すんなって、それとも俺じゃ信用できないってか?」
「そ、そういう訳じゃないけど……」
正体を隠したうえで一緒にダンジョンに入るとなると、色々と不便が発生する。まず第一に、仮面型のデバイスが使えない。慣れ親しんだUIが使えないとなると、またあの識別票を片手に探索する羽目になる。それだけは避けなければならない。
次に、東野くんが相手の時だからというのもあるが、モブとバレるわけにいかないので、今まで通りの戦い方をするわけにはいかない。つまり、散々上げた槍や回避のマスタリーを気兼ねなく発揮できないのだ。
そして、これが一番厄介なのだが、モビとマンダを外に出せない。今まで彼らに頼る部分が多かったので、これは何をするにしてもかなり大変だと思う。
「とにかく、一緒に行くのは――」
「まーまー、いいっしょ、大丈夫だって俺が一緒にいるんだからさ!」
自信に満ち溢れた顔で東条君は笑みをこぼす。どうやってもこれは断れそうになかった。
――読者の方へおねがいとお知らせ
お読みいただきありがとうございました。現在私は「ビヨンド・ジ・エンド」というSF作品でカクヨムコンに参加しています。カクヨムコンは異世界ファンタジーや現代ファンタジー、異世界恋愛が強い状況で、その中で戦っていくためには皆様の助力が必要不可欠です。
もしよろしければ、「ビヨンド・ジ・エンド」作品ページにある+☆☆☆の+を押して★★★にしていただけるとありがたいです。
https://kakuyomu.jp/works/16817330667002555700
では、よろしくお願いします
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます