第57話 ごはんつぶ
『じゃあ今日は二人協力のアクションパズルをやっていこうかな』
そういってねこまが画面を切り替えると、マイナーな二人協力系のパズルゲームのタイトルが表示されていた。
「あーこのゲーム人気だよね」
「1-4越えられるかどうかだよな」
「お前らネタバレだけはすんなよ」
アバターを使用したストリーマーとか、いつもの配信がアクティブじゃない配信者は、けっこう狩りゲーとかFPSを息抜きでやることがある。だがしかし、ねこまとちくわはダンジョン配信がメインであるので、息抜きでも戦う絵面が続いたりしていると、飽きられやすい。なのでこのゲームをプレイする。
……ということを柴口さんが言っていた。
確かにいろいろと動きがあるいつものダンジョン配信はともかく、こういう仕事終わりのまったりとして居たい時間までアグレッシブなゲームをやっていると、リスナーも飽きてしまうのかもしれないし、新しい一面を見れたりして楽しいのかもしれない。
『むむ、難しいねこれ、ここからどう動かすんだろ』
『あ、ちくわちゃん。右から三番目のをちょっと押さえといてくれない?』
こう見ていると、いつもの配信ではちくわが中心となってふんわりとした戦略を立てつつ動いていたのが、今の配信ではむしろねこまが先導する形でステージを解いている。なるほどこういう一面を見るためにもこういう息抜きが必要なんだな。
「ねこまちゃんのIQが上がっておるわ」
「意外と頭使う事になるとポンになるよね、ちくわちゃん」
「ところで今日モブは出ないん?」
ちくわとねこまはワシが育てた。みたいな顔して後方腕組面してたらなぜか急に俺の名前が出てきて、ご飯粒が鼻に逆流した。
激しく咳き込んで、ティッシュを手に取って何度も鼻をかむ。ようやくご飯粒が出てくれたので落ち着いてもう一度画面を見ると、同じようなコメントが定期的に流れていた。
「このパズル三人用のパターンもあるから呼ぼうよ」
「まさかこの時間まで裏作業させてるとかじゃないよね?」
「そう言えばモブ君ってプライベート何してるんだろ」
なんでこいつら俺のプライベートまで考えを巡らせてるんだ。こわっ。
『わわ、みんな、あんまりモブ君の話はしないであげてほしいな、彼も疲れてるだろうし!』
『そうそう、私たちの配信なんだから他の人の話出さないでね』
ちょっと目に余るコメント量だったからか、二人がフォローに回る。たしかにまあその通りだよな。という正論だったので、俺は安堵の息を漏らす。
「でも、配信見てるんじゃないですか?」
しかし、その直後書き込まれた言葉で、俺の鼻にまたご飯粒が入り込んだ。
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