静かな闘志
一輝は師匠である諸見里九段宅で行われる新年会に出席する為に、諸見里宅に訪れ、師匠と話をしていた。
時間が経つにつれ、一輝以外の門下も続々と集まりいよいよ新年会が行われようとしていた。
そんな時、一輝の兄弟子の1人が師匠に対し乾杯の音頭をするよう呼びかける。
「それじゃあ師匠、乾杯の音頭をよろしくお願いします」
「うむ、ええ、去年は我が門下より新たなプロ棋士が誕生した。既にプロになっている者も、そうでない者も今年1年をより良いものとする為……」
乾杯の音頭の最中だが弟子の1人が師匠に対し声をかける。
「師匠、長いですよ早く乾杯しましょうよ」
「全く、これからが大事だというのに、まあいい、かんぱーーーい!」
師匠の音頭で全員が乾杯し一輝も飲み物を飲む。
そんな一輝に兄弟子が声をかける。
「ところで一輝、初勝利の感想は?」
「そうですね、変な終わり方をしたので、なんて言っていいのか」
「俺も対局中だったから後でお前と富田先生の対局の棋譜を見たけど、富田先生の完全なミスだな、あれは」
「っていうか、西田さん俺の棋譜を見てくれていたんですか」
一輝に話しかけた兄弟子の名は西田拓海といい、現在20歳で一輝より丁度1年早くプロ入りし、現在順位戦はC2で、竜帝戦は6組という位置づけである。
そんな西田が何故一輝の棋譜を見たかという理由を話す。
「このまま勝ち進めば俺達がぶつかるんだ、対局相手の研究をするのは当然だろ」
「そうですね、楽しみにしてます」
「言ったな、その余裕ぶった鼻っ柱をへし折ってやるからな」
西田も先程の諸見里同様、兄弟子として一輝に負けてなるものかと闘志を露わにする。
和やかな雰囲気の中にも静かな闘志が表れ、新年会は幕を閉じる。
新年会を終え、帰宅しようとした一輝のスマートフォンが鳴り、一輝が確認をすると小夜から連絡が来ていた。
諸見里宅を離れ、小夜からの電話に応じる。
「もしもし」
「あ、一輝君。明けましておめでとう、今年もよろしく」
「こちらこそよろしく、まさかその為に電話を?」
「そんなわけないでしょう、電話に出たってことは新年会終わった?」
小夜の問いに一輝も質問を返す。
「ああ、終わったけど。そう言えば小夜ちゃんも新年会だっけ?」
「そうよ、と言っても諸見里先生みたいに大所帯じゃなくて私と師匠と兄弟子の3人だけの新年会だったけどね」
「それで用があったんじゃないのか?」
「そうそう、一輝君もう初詣は行った?」
小夜の思わぬ質問に戸惑うが一輝は返答をする。
「初詣?一応近くの神社に」
「一輝君、私達棋士は
「ああ、
「私もまだ行ってないからこれから一緒に行かない?」
小夜が言う
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます