第23話 キャサリンを圧倒するリュカ
リュカを冷気で編まれた水平の竜巻が襲う。
「戻ってフェンリル! トライアングル・シールド!」
しかしリュカはこれも先読みして、余裕をもって3枚のフェンリルを引き戻すと、自分の前で三角形に配置する。
その3つのフェンリルで、魔力で編まれた三角形の防御シールドを展開して、なんなく無力化してみせた。
「そんな、今のも読まれていたの? くっ、うぐぅ……!」
「アスナさんの作ったフェンリルは、攻撃だけでなく防御も完璧です」
もちろん、3枚が防御に回った間も、残る5枚のフェンリルは変わらず攻撃を続けている。
(わぉっ! 8枚のフェンリルを同時に操作しながら、キャサリンの出方を観察して、相手が反撃行動を取ったら、即座に3枚を防御用に切り替えたのね)
アスナが感心したように言った。
(そういうこと。しかも攻撃はしっかりと継続しながらな。逆にキャサリンは防御と回避を後回しにして無理に反撃したから、今のでまた一気に防御加護を削ることができたぞ)
既にキャサリンの防御加護は、もう残り1/4を切っていた。
対してリュカは100%のまま。
一度も攻撃を受けていない。
まさに圧倒だ。
(でもさヤマト。8つの動作を並行して別々に行うって、口で言うのは簡単だけど、ハンパない難易度だよ?)
(だろうな。リュカの超高速思考がないと、とてもこうはいかないはずだ)
(リュカちゃんは本当にすごいねー)
(ああ。自分で足を動かしさえしなければ、リュカは紛れもなくトップランクの姫騎士だ)
このまさかの展開に、
『おおっと、まさかまさかの展開だぁ! なんと前年2位のキャサリン・マオが、ゴッド・オブ・ブレイビア初参戦のリュカ・フリージアに、一方的にタコられているぅ!? いったい誰がこの展開を予想した!? 何をやっても見事に返される! リュカとフェンリルの前に、キャサリンは手も足も出ないぞぉぉっ!』
マイクパフォーマーの声も驚きを隠しきれないでいるのが分かる。
当然だ。
マイクパフォーマーは、デュエル前こそ盛り盛りトークで盛り上げたものの、リュカが実は4部リーグで1勝しかしていないことを当然、事前情報として知っている。
今日のデュエルも、一方的にリュカが負ける前提であれこれしゃべる内容を考えていたはずだ。
それが思いもよらない展開になってしまったのだから、驚いているのも無理はなかった。
『さらに今入ってきた情報によりますと、リュカ選手の使用するこの最新マジックウェポン「天翔ける魔狼フェンリル」は、ブレイビア王立魔法院の最新技術によって作られたものとのことです! さすがは我が国の英知が集うブレイビア王立魔法院! スゴいものを作ります!』
(ふふふ、そうよ! 私の開発したフェンリルはすごいのよ! もちろん開発した私もね! 私すごい! もっと宣伝して! 研究費がいっぱい下りるように!)
(正直、俺もここまでとは思っていなかった。リュカの才能と完全にマッチしている。アスナ、マジでサンキューな)
アスナとアスナの作ったフェンリルがなければ、この展開は無かったと言っても過言ではない。
俺はアスナに心から感謝していた。
アスナの幼馴染で本当に良かった。
(ちなみに今だから言うんだけど)
(ん?)
(遠距離での魔力伝達のロスの大きさを考えたら、魔力ビーム砲撃に必要な魔力は、1発につきSランク魔法1発分なのよね。当然、遠くなれば遠くなるほど、さらに消費は大きくなります)
(改めて聞いても、ヤバイ燃費の悪さだな。Sランク魔法なんて1デュエルに1,2発撃てるかどうかだろ。魔力切れしやすいとかそういうレベルじゃないぞ?)
(ついでにもう一つ付け加えると、飛行にもかなりの魔力を使ってます。ずっと浮いてるからね。浮いている間は、常に魔力を消費しちゃうの)
(そりゃ普通の姫騎士が運用したら、まともに動かないよな……。っていうか、よくこんな欠陥品すれすれのもんを作ったな。そりゃ研究費も削られるだろ。俺がアスナの上司でも削るぞ)
(うるさいわね。欠陥品とか言わないで。まずは作って問題点を洗い出して、ここから改善していくところなの! 試行錯誤、トライ・アンド・エラーなの! そのために研究費が要るの!)
(あれって本当はトライアル・アンド・エラーって言うんだってさ)
(それくらい知ってるわよ。ヤマトの頭脳レベルにあわせて言ってあげただけ。なにヤマト。アタシとお勉強の話がしたいの? 別にいいわよ?)
(い、いえ……出過ぎた真似をしました……)
なんてことをのんきに話せるくらいに、リュカは序盤からここまでキャサリンを圧倒していた。
さて、ここまでは上々のデュエル展開だ。
ここから作戦は最終フェーズへと移行する。
最後まで気を抜くなよ、リュカ。
勝利は目前だ!
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