~ゴッド・オブ・ブレイビア~ 姫騎士デュエル・アナリストの俺、男だからとランク2位のチームを追放され、訳あり美少女ばかりの新チームに拾われる。「開幕戦は3日後だ。よろしく頼むよ」「……OK」
第17話 わざわざ嫌味を言いにやってきたキャサリン
第17話 わざわざ嫌味を言いにやってきたキャサリン
「あらあら? ヤマトじゃないの。こんなところで会うなんて奇遇ねぇ」
そこにいたのはキャサリン・マオ。
俺をいきなりクビにした、フレースヴェルグのエースにして、昨年2位の実績を持つキャサリンが俺たち――いや、「俺たち」ではなく明らかに俺を待っていた。
その証拠にキャサリンの視線は、ただただ俺にだけ向けられている。
「……キャサリン」
俺はかすれるような声でその名を呼んだ。
「どうしたの? 元気がないみたいじゃない」
「……そうでもないさ」
「そう? でもまさか開幕戦であたるライトニング……なんて名前のチームだったかしら?」
「ライトニング・ブリッツだ。対戦相手のチーム名くらい覚えておけよな」
「そうそう、ライトニング・ブリッツだったわね。まさかヤマトがそこのデュエル・アナリストをやっていたなんてね」
「運よくそこのオーナーに拾ってもらえてね」
「ふぅん。それは良かったじゃないの。男なのに拾ってもらえて。運だけはいいみたいね」
「そうだな、幸運だったよ」
「だけど落ちたものねぇ。チームランク2位のフレースヴェルグのデュエル・アナリストが、2部上がりのゴタゴタ続きのチームにいるなんて」
キャサリンがさもおかしそうに笑う。
「ライトニング・ブリッツだって、ゴッド・オブ・ブレイビアの参戦チームに変わりはないさ」
「そうは言っても、去年2部を優勝したチームは瓦解して、中身は丸っきり別のチームに入れ替わっているのでしょう?」
「名前は憶えていないのに、そんなことは知っているんだな。それよりデュエル直前にこんなところに来ていていいのかよ? 直前ミーティングはどうしたんだ?」
「そんなのする必要なんてないでしょう? なにせ相手は初昇格のチームで、しかも私がデュエルする相手は、4部リーグでたった1勝しかできなかった無名のザコ姫騎士なのよ? 戦績を見て笑いを堪えるのが大変だったわ。こんなのに私が負けるわけがないじゃない。私はランキング2位のキャサリン・マオなのよ?」
「サイコロは振ってみないと、どの目が出るか分からない。勝負事はやってみるまで分からないさ」
「いいえ、分かるわよ。4部で1勝しかできない姫騎士が、トップリーグのゴッド・オブ・ブレイビアで勝つことは不可能よ。そんなのは子供だって分かること。サイコロの目で言えば、全ての面に私の勝利が刻まれているの。だからどの面が出ようと、私の勝利は揺るがない」
「……」
俺が悔しそうな顔をして黙り込むと、キャサリンが調子に乗ったように言葉を続ける。
「ふふっ、あまりの正論に言葉もないようね。ま、過去のデータを見ればそんなことは一目瞭然だものね。そのことは、データが大好きなデュエル・アナリストのあなたが、一番よく分かっているでしょうから」
「…………」
俺が黙りこんだのをいいことに、キャサリンはこれでもかと上機嫌で語っていく。
「しかも姫騎士が3人
これについては俺も、マリーベルの資料だけは見ておこうと思って確認した時に驚いたのだが、マリーベルはそもそも姫騎士デュエルの参加記録がなかった。
つまり姫騎士デュエルに今年初参戦したルーキーなのだ。
よって現時点では、資料もデータも何も存在しない。
しかもデータがないだけでなく、名字すら伏せられているときた。
いったいマリーベルは何者で、ミューレはマリーベルをどこから見つけてきたんだろうか?
まぁそれは今はいい。
「戦うための準備はしてきたさ」
「ふふっ、そうなんだ? ま、せいぜい開幕戦を楽しみにしている観客を失望させないように、善戦してちょうだいな。あなたの力があれば、こんなクズ姫騎士でもランク2位相手に勝たせられるのでしょう?」
「くっ……」
「ルーキーちゃんと、4部でたった1勝しかできないクズ姫騎士ちゃんでいったいどうやって戦うのか、実際に戦うのを楽しみにしているわね」
「俺たちが勝つ可能性は、ゼロじゃないさ……」
「いいえゼロなのよ。いい加減に分かりなさい」
「勝負はやってみなきゃ分からないんだ……」
俺は声を絞り出すようにして言った。
そんな俺の態度を見て、キャサリンはもうご満悦だ。
「そんなに言うなら賭けをでもする?」
「賭け、だって?」
「今日のデュエルで負けた方が土下座して謝るの。ごめんなさい、自分の考えが間違っていました、ってね」
「そんな賭けをして何になるってんだ」
「あらあら、まさか勝つ自信がないのかしら? もし私が負けたら、私があなたに謝ってあげるわよ? あなたをクビにしてすみませんでしたってね。なんなら『あなたがいないせいで負けちゃった。帰ってきてくださいお願いします』ってインタビューで言ってあげてもいいわよ。ま、そんなことは万に一つもないでしょうけどね。あははっ」
「……っ」
俺が拳を握り締め、一際悔しそうな顔をすると、
「ではそういうことで。ごきげんよう」
キャサリンは最後に満足そうに、ニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべてから、少し離れた場所でやりとりを見守っていた、フレースヴェルグの面々のところへと戻っていった。
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