アイドル、始めるか否か。

佐久間清美

本編

プロローグ

私は私

 子どもの頃からずっと、スカートを履くことが嫌だった。


 周りの女の子と恋バナをすることが苦手だった。


 親から、周囲から『女の子らしさ』を求められることが苦痛でしかなかった。


 男の子たちと騒ぎまくる方が好きだった。


 小さい頃はそれで良かった。


 けれど、学年が上がるにつれて、私は孤独になっていった。


 男子のグループにも所属できず、女子のグループにも馴染めず。


 それでも自分の色を変えることはできなかった。


 私の生き方を他人に決められたくなかったから。


 プラス、気づいたことがある。


 女の子らしく生きたくはないけれど、別に男の子になりたいわけじゃないんだって。


 矛盾してるかな。


 これが私なんだからしゃーない。


 高校に入ってからは『ボーイッシュな女子』として受け入れられるようになった。


 制服は滅茶苦茶嫌だったよ。


 スカートだったし。


 それでも、漸く居場所ができたことが嬉しかった。


 男の子っぽい立ち振る舞いをしてもなにも言われない。


 身長が170cmを超えていたからか、逆に、『王子様』ポジに着地していた。


 女の子から告白されることが何回かあったし。


 嬉しかったよ。


 私が好きなのは……男の子じゃなくて女の子だったから。


 あと、街でスカウトされてモデルになった。


 最初の頃は全然お仕事をもらえなかったけれど、今は割とお仕事をもらえている。


 表紙だって飾らせてもらった。


 ちょい役だけど女優の仕事もある。


 高校3年生になった今、若い子たちの間ではそこそこ知名度が上がってきた。


 なんとなくで始めたこのお仕事。


 夢も目標もなく歩み始めた芸能界。


 でも、私はこの世界で生きていく。


 私みたいな子にとって、希望の光になれるように。


 世界を変えようなんて思っていない。


 ただ、支えになれたらいいと思うだけ。

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