第11話 ぐだぐだな攻略作戦とその後
1節 ヘッドライトの照らす先
「ねーほんとにやるの?」
「しょうがないだろこれしか思いつかないんだから」
「名付けて!『明かりがないなら車を使えばいいじゃない!ダンジョン攻略大作戦!』」
「ダサい」
「嫌だ」
「もうちょいなんか考えろよ」
「ネーミングセンスお母さんのお腹に置いてきました?」
「流石に言い過ぎじゃない?」
「いや、そんなことはない」
「んで、作戦の概要は?」
説明を始める。
「車に武器を積み込んで、ヘッドライトを起動し、ダンジョンの中へ進む。この車、そこそこ強度あるっぽいからそれを利用して敵が近づいてきたら体当たりして吹き飛ばす。敵がいっぱいいるならライトだけつけっぱなしで武器を持って戦えばよろしい」
「適当だなあ……」
「しょうがないじゃん」
「まあそれでいいか」
ということで全員武器を取り出しやすい位置にしまい、エンジンを起動し動かし始めた。ヘッドライトを起動し、真っ暗闇の中へ向ける。そしてゆっくりと、ダンジョン攻略を目指し進み始めた。
2節 想定外の快進撃
「うおおおお全速前進!」
「ぶっ壊すなよ?」
「大丈夫フレームとエンジンを信じろ」
「つまりお前は信じるなと」
「そーいうことじゃねんだよなあ」
割とダンジョンの中にいる敵が少なくて、思いの外サクサク攻略が進んでいる。時々出てくる敵も、小さいのばかりで、敵の突進も大したダメージが車体に入るわけでもない。
逆にこちらは鉄の車体を活かして簡単に吹き飛ばせる。
ゲームならアイテムの回収をするところだが、僕らは異世界の動物を捌く術など持っていない。なので放置で無視する。
「ねーなんか広いとこに……うわなんかデカイのいる!」
「これは車じゃ無理そうですね……」
「しゃーないから戦うかあ」
僕たちは各々の武器を取る。そして、ヘッドライトをその巨大な敵へ向ける。
見てみるとそいつのサイズは、この車の1.5倍くらいある。めちゃくちゃ大変だけどギリギリ倒せないことはないだろう。
「矢矧と時雨は遠くから弓で援護して。剣を使う僕らが前線で戦う」
『了解』
「それじゃあ———戦闘開始!」
すぐさま敵の元へ近づき、剣を振い始める。意外と動きは鈍いようで、簡単に攻撃を入れられる。だがその分装甲が硬い。斬りつけても跳ね返される。
「こいつちょっと硬すぎないか!?」
「矢が貫通しません!」
「この剣じゃ貫けない!」
「如月!そいつで叩き割ってやれ!」
「え!?」
3節 如月と
◇◇◇
「如月!そいつで叩き割ってやれ!」
アタシはあさっちから飛んできた言葉に動揺した。
アタシの手には、絶大な火力を出せる
この前の狩りでやった時は1発も当たらなかった。
1発も。
元から細かい動きが苦手なツヴァイヘンダーは、並の人より力があるアタシと言えど自分の背丈より高い剣を振り回すのはすごく大変だ。
ようやく慣れてきた頃には、もう狩りも終わりの方で、シカに攻撃してみたらまるで当たらなくて、空を割いて地面に突き刺さった。それで、その後あさっちに何時間もかけて研いでもらった。
ここは前より広いけど、車のライトがあるとはいえ端は暗い。
それで当てられる?もし間違えてみんなを傷つけたら……
「何してんの!ボーッとしてないで早くぶった斬りなさいよ!」(睦月
「いいの?」
「いいからやっちゃって!そろそろ刃こぼれしてきた!」
「いいんだね!?じゃあ離れて!」
『支援します(するぞ)!!』
「助かる!」
私は空間のど真ん中に立つ。ライトに照らされた背で壁に大きな影ができる。
大剣を仕舞う背中の鞘から、刀身が照らされ黄色く輝く剣を引き抜く。
ヤツは二人の矢に誘導されて私の真正面へのしのしと歩いてくる。そして吠える。
グァァァアアアアアアアア!!!
耳をつんざくような叫び声に一瞬耳を塞ぐ。
そして私は剣を後ろへ持ってくる。叩き斬るには十分な高さがある。
そして、ヤツが突進してくる。そして
「喰らええぇぇぇぇぇえええ!!!」
全力で助走をつけジャンプし、両手で柄を握り、最初はゆっくりと、体が落ち始めると同時に速度を上げ、鋼鉄の
ヤツが至近距離に来たタイミングと振り下ろしたタイミングはほぼ同時。重い剣身は激しい音を上げながら分厚い
貫いた途端に動きが鈍くなり、ドサッという音と共にアタシの大剣が突き刺さったままその場から動かなくなった。
デカイやつの真上に突き刺さったから柄にぶら下がるようになったので跳び降りる。
「すごいよ如月!あんなの倒しちゃうなんて!」
「やるじゃねぇか!前とは大違いだな!」
「すごくカッコよかったです!」
「さすがは私の妹!」
みんなからの温かい言葉。アタシは一瞬で泣いてしまった。
大剣が突き刺さった怪物は、もう完全に動かなくなった。
4節 お待ちかねの報酬タイム
◇◇◇
「いやーそれにしてもすごかったな」
「だねー。まさかあんなやばい音出して刺さるとは思わなかった」
「すごかったですよね。カッコよかったです」
「いやーやっぱさすが私の妹!」
「みんなそんなに言わないでよぉ……」
あのあとは車の屋根に登り二人がかりで無理やり引っこ抜いた。
それで今は、僕が運転する車の中。真っ暗な洞窟を抜けビレノートへ向かっている。
他の小さいのと違って最後のアレは普通に血を出して倒れたので、如月の服と肌の一部は返り血で染まっている。服もボロボロになってるし、剣を鞘に入れてれば多分戦ってきたんだろうなと思ってくれるはず。多分。
そんなこんなで前停めていた駐車場に車を停めて、公園のところまで歩いて行った。すると案の定クラーマーさんが待っていた。
「おぉ、帰ってきてくれたか」
「ええ、なんとか」
「それじゃあ街役場に行って報酬を渡すからついてきてくれ」
「わかりました」
僕たちはクラーマーさんに案内され高い塔のある街役場へ入る。そして奥の部屋へ案内され、話をする。
「これが今回の報酬だ」
数えると、20000ヘレトもあった。
「いいんですか?こんなにもらって」
「いいんだ。あの猪どものせいで今年は不作でな。それをどうにかしてくれたんだから、これくらい払わなくては」
「武器から報酬から、何から何までありがとうございます」
「ああ、そうだ。ついでにこれをやろう」
「この箱ですか?」
「ああ。この箱の中には氷属性の魔宝石が入っていてな。野菜とか肉とかの
その言葉に、時雨の目が若干輝いた。表情はあんまり変わってないが完全には抑えられなさそう。
『ありがとうございました!』
「こちらこそ。君たちはこれからはどうするんだ?」
「うーん・・・しばらくはすぐにでもここを離れないと行けないということはないので、何日間か滞在してお金を稼ごうかなあと」
「なるほどな。それなら、街広場に掲示板があるから、そこで良いのを見つけるといい」
「ありがとうございます」
5節 これから
「これからはどーする?」(如月
「んなぁーとりあえず金がないから何するにもなあ」(朝凪
「どうして異世界へ来てもお金に悩まされないといけなんでしょうか・・・」(時雨
「本当に金ばかりはどうしようもないからな。とりあえずクラーマーさんの言うように掲示板のクエストやってみるか」(矢矧
「おおーなんかすごいRPGみたい!」
「クエスト受けて、達成して、お金もらって、装備買って、またクエスト受けて・・・最高じゃん」
「楽しみですね」
「だな」
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