喜怒哀楽な百合

橘スミレ

年の差 〈喜〉

 女子高生というものはいつの時代も輝いている。社会の波にのまれくたびれる前の輝き。一介の会社員である私が失ったものだ。だが彼女の輝きを守るには私は働かなくてはならない。彼女は亡くなった友人の子供だ。親族のいない友人の子供を引き取ってはや十年。今日もクタクタになって帰宅し彼女が部活から帰る前に夕飯を作る。大急ぎで準備すると彼女が帰ってきた。

「ただいま」

 彼女の笑顔。少し疲れを感じさせる笑みがまた美しい。

「おかえりなさい。夕飯はもうできるから手洗ってきなさい」

 元から美しい彼女が女子高生というラメによって輝きを増した姿によって緩みそうになる表情筋を抑えながら答える。

「はーい」

 少し高めの声がこれまた可愛い。高鳴る胸を押さえながら夕飯を机へと配膳していく。全て運び終えたがまだ彼女はリビングに来ない。少し心配になり洗面所へ向かおうとするとバタバタと足音を立てて彼女がやってきた。

「これ、今日誕生日だから」

 少し俯きぎみになりながらプレゼントと思われる箱を差し出している。差し出された可愛らしい箱を受け取り、彼女に確認してから開封すると中身はシルバーのネックレスだった。鍵穴のついたハートがついている。彼女の方を見ると彼女の胸元には同じシルバーで、鍵のついたネックレスがあった。制服の下につけていたのだろう。

「ありがとう。これお揃いなのね。嬉しいわ」

 今にも心臓が破裂しそうなのを悟られないように私はお礼をいう。

「そう、お揃い。ちょっと貸して。つけてあげるから」

 そういって彼女は私の手からネックレスを受け取ると私につけくれる。

「そうそう、ネックレスを贈るのは意味があるの」

 私にネックレスをつけながら彼女は言う。

「どんな?」

 私は意味を知っているが知らないふりをして聞く。

「秘密!それより夕飯食べよ。私お腹空いちゃった」

 そう誤魔化すのは言うのが照れ隠しだろうか。耳を朱に染めていそいそと机へ向かう彼女の後ろ姿はとても愛おしく思えた。


ネックレスのプレゼント:あなたを独占したいくらい愛している

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