清水由良は一歩踏み出せない

遊英

第1話

 小学校六年生。卒業式の前日の学活。

 みんなは卒業アルバムの後ろの白紙のページにサインを描きあっている。

あちらこちらから笑い声や、今までの思い出を語り合いながらしみじみとする声が聞こえてくる。

 もちろん。僕、清水由良しみずゆらも同じだ。ドッヂボール大会に一緒に出場したメンバーと駄弁っている。

「そういや、お前と絢って両想いなんだろ?もう付き合っちゃえよー」


「いや、やっぱそゆのは高校入ってからだって。そーゆーお前もあおちゃんと両想いじゃんか」


「俺はもう付き合ってるもん」


などと、俺の周りではあれこれ話している。ちなみに俺にも好きな人がいる。六年間おんなじクラスで六年間席が隣になった春奈ちゃんという子だ。足が速くてかわいくて、あか抜けてて優しい。とってもとっても素敵な子なのだ。でもなあ。。。


「どうせ中学も一緒なんだし、焦る必要はないか」


 次の日。俺たちは無事、小学校を卒業した。





 なんだかんだあって中学三年。受験シーズンを迎えた僕は、中一では緊張型の腹痛を患ってしまい、毎朝腹痛に悩まされる人生を送っていたが、もはや今は友達に囲まれて生きる人生に乗り換えることができた。


 これは僕のいわばコツというか、仲良くなるためにここっていうねらい目があるのだが、僕らの学校では毎日帰る前に班で今日一日を振り返るという習慣がある。

ここなのだ。ここで今日何かあった?とか聞いて相手が言ったことを適当に返す。これくらいしてたらたいてい普通に話せるようになる。


 そしてもう一つ。道徳の時間だ。主人公の考えとか、誰が原因とか、そんなことに施行を張り巡らせて周りとシェアする。。。というのもまあアリだが。たいてい僕の場合この意見というものが浮かばない。こんなときにどうするか。

 その話の世界線を考えるのだ。話題が選挙の話とかだったら、その国のその瞬間ではどんな政治が行われてるんだろうみたいな。ここを班で言ってみたらまあ、それなりに盛り上がるし、それと並行に意見を述べていけば、その意見にもしもその世界だったらなんて色付けもすることができる。


 とまあ、僕の心がけていることはさておき、今はそれとは全く関係ない社会の時間。


「ここなんかカップケーキみたいだね」」


「なんでメサとビュートのページを見てそれがおもいつくんだよ。。。なんかだんだんそんな感じに見えてきたじゃんか」


「あはは、おいしそうだよねー」


「あいにく僕はケーキが苦手だよ」


などと言いつつ、授業が進んでいく。彼女は後ろの席の中野さん。なにかと授業中とかちょくちょく話しかけてくれるようになった。ちなみに、カーストトップの小早川君が狙っている子でもあり、少々申し訳なさを感じている。好きというわけではないのだが。。。









 時は進んで12月。冬休み前の大掃除。

僕は彼女を好きになっていた。一緒にいて楽しいとそう感じたのだ。


「清水君の靴よごれてるよー。ほらほら」


そう言って中野さんは俺の靴をゆびでつっつきながら雑巾でふこうとする。


「ちょ、おいやめろって、どー見てもピカピカじゃんかよ」


「さーどーでしょう?なんかついてるかもよ?」


「ちょ、中野さんだって、おんなじところにいるんだから汚れてるんじゃない?」


「もーー二か月だよ。あれから、私のこと名前で呼んでって言って二か月!ずーーーーっと中野さんじゃん」


「それはその。。。緊張するというかその。。。」


「んーーーじゃあ慣れたらでいいから、名前で呼んでよね」






 あれから三か月。卒業式前日の学活。

みんな卒業アルバムの後ろのページにサインを描いている。


もちろん僕も。あのときとは一味違って。


「清水君。ここに描いてよ」


「いいよ。ぼくのもよろしく!」




今回は、女子ともかかわることができた。気持ち悪いかもしれないが、これは僕の中でとても進歩であった。

 小学生のときは男女の隔てなどなく誰にでもかかわっていくTHE子供な僕だったが、中学校に入ってコミュ障を発症。そんな僕でも、地道に頑張ってここまで成長したよ神様マジで僕を見放さないで見ていてくれてありがとう!!





 次の日の卒業式。俺は勇気を出した。


「は、遥!その、一緒に写真とってくれない?」


「え、うん。いいよ!」




その日、俺は無事に中学校を卒業した。





 後々聞いた噂話で確証はないのだが、実は遥は俺のことが好きだったらしいが卒業したため、違う人と付き合ったらしい。


 そして春奈は、どの高校に進んだのかすらわからない。俺は告白という大きな試練から逃げたために、大切な気持ちを伝える機会を二度も失ったのだ。


幸運の女神に前髪がないとはこのことか。俺は心底この性格を恨んだよ。





 そんなこんなで高校に入学。

「なあ部活どうする?」


「俺は弓道部入ろうかなー」


「じゃ俺もそこで」


というわけで、中学から一緒の高校に来たようと弓道部にはいることになった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

だいぶ身の周りが落ち着いてきたので新しいの書いてみようと思います。

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