僕のドッペルゲンガー

砂上楼閣

第1話〜ぼくのドッペルゲンガー①

ドッペルゲンガーと言うものを知っているだろうか。


自分自身の姿を見る幻覚の一種とも言われているけれど、一方で万が一出会ってしまえば死んでしまうなんていう都市伝説まである。


ドッペルゲンガーについて扱っている作品は思いのほか多い。


内容に関しても様々だ。


ドッペルゲンガーと本人が殺し合うものや本人に成り代わるもの、本人も含めて行方不明になるものなど様々なバリエーションがある。


もちろん和解してよき理解者になるパターンや、生き別れの兄弟だったなんてパターンもあるようだ。


けれど、そのほとんどは不幸な結末を迎えることが多い。


なぜいきなりこんな話を始めたのかと言うと…


僕は昔、事故に遭って大怪我をした事がある。


実はその直後、僕は僕のドッペルゲンガーと出会ったことがある。


前後の記憶はとても曖昧だけれど、それだけは、彼のことだけはよく覚えてる。


事故に遭って記憶が混乱してたんだろうとか、そもそもドッペルゲンガーに会ったから事故に遭ったんじゃないかなんて言われるかもしれないけれど。


彼は僕と瓜二つな顔をしていた。


決して他人の空似なんかじゃない。


僕の右の目元には特徴的な、三角を描くように3つのホクロがある。


そして彼の顔にも、僕から見て左側に、つまり同じ位置に3つのホクロがあった。


だから、彼は鏡に映った自分や、ただのそっくりさんなんかじゃない。


彼はきっと僕のドッペルゲンガーだ。


彼の姿形、何よりその目を見た時に抱いた不思議な気持ち。


また彼と会ってみたい。


彼は今、どこにいるんだろう?


ここ数年、僕はことある毎に彼のことを思い出しては、そんなことを考える日々を送っていた。


…………。


「お身体に異常はありませんか?身体が思ったように動かないとか、考えがまとまらないとか」


「はい、大丈夫です。いつも通り、歩くこと以外に体に不調はありません」


事務的で機会的な医師の言葉に、こちらも淡々と答える。


今日は月に一度の定期検診の日。


物心ついた時からずっと続く、退屈な日。


一体何度同じやり取りを繰り返してきたことか。


いつもと同じ質問、いつもと同じ検査、そして…


「それではベッドに横になってください」


待合室で車椅子に乗せられて検査室に移動する。


持っていた杖は入り口の近くに立て掛けてもらい、車椅子からベッドへ看護師の補助を受けながら移動する。


そして上半身だけ起こした状態で、頭がすっぽりと入るヘルメットみたいな機器をかぶらされた。


脳波を見るためのものらしいけれど、いつもかぶってすぐに眠ってしまうから、唯一退屈ではない検査。


「それでは横になってください。始めます」


医師の淡々とした声が聞こえて、それから耳鳴りのような音が頭に響いた気がした。


急激な眠気に、僕の意識はすぐ暗転して、そして…

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