第26話:非正規クラン/暗殺依頼
ダンジョンから家に帰って、俺はもらった名刺を指で弾きながら呟いた。
『非正規クランnontile:
「見た目はいかついけど結構若い子なのかな……?」
彼、山本とは軽く話した程度で長話にはならなかった。
とはいえ気になる点は多い。 いつでも連絡してくれと、依頼時とは打って変わって気さくな印象だった。
ダンジョンを攻略している集団が存在すること、そして田中の元で働いている彼が密かにギルドのルールを破っていたことにも俺は驚きを隠せない。
色々考えることが出来てしまったが、とりあえずヒナが来る前に本来の目的であったスキルの拡張を確認しておきたい。
「練習モード:プレイルーム」
新しいスキルの効果によって、目の前に扉が現れた。
今までは自分の精神世界に創られた空間で練習してきたが、今回の拡張によって練習できる部屋を設置することが可能になった。
扉の先は、真っ白な空間となっていて拡張する前と変わりはなさそうだ。
「ただいまー!」
そうこうしているうちに、ノックも無しに部屋へと入ってきたヒナが元気に声を上げた。
「お、帰って来たな……つうかまるで我が家かのようなテンションだな……」
「まあまあ! というかなんか変なモノがある!!」
ヒナに新しいスキルのことを説明して、俺は親指を立ててみせた。
「これでたくさん練習できるな!」
「ガ、ガンバリマス」
「じゃあさっそく頑張ってらっしゃい」
俺はヒナを送り出して、一息ついた。
「時間が出来たとはいえ、特別やることがあるわけでもないんだけど」
せっかくだし撮り溜めていた動画でも見ようか、そう思った時――
――bbbbbbb
田中から電話が来た。
『お久しぶりですね』
「……お久しぶりです。 連絡を返さず申し訳あ――」
『ギルドに出頭してください。 あなたのしたことについて話をしたい』
〇
できれば電話で誤魔化して、田中に会いたくはなかった。
しかしなぜか田中は俺がダンジョンを攻略したという情報を得ているようであっる。
「聖さんにお願いしたい依頼があります」
「依頼……ですか?」
てっきり咎められ、何かしらの罰があると思っていたので一瞬言っている意味が分からなかった。
「そうです。 これを受けるか、受けないかは自由です。 ただもし受けていただけない場合は冒険者ギルドへの敵対とみなし、資格のはく奪に加えてこれまで目を瞑っていた犯罪行為を表ざたにします」
田中は何を考えているのだろうか。
俺は確かにルールを破ってダンジョンを攻略したが、誓ってギルドへ敵対するつもりはない。
「分かりました。 それでその依頼とは……?」
「一星夜子の殺害」
「――――は? 今、なんと……?」
言葉の意味は理解できるが、訳が分からなかった。
「9級冒険者、通称死神と呼ばれる一星夜子を殺すこと。 それが依頼内容になります。 どうされますか。聖剣さん?」
田中は淡々とした口調で言って、不気味な笑みを浮かべるのだった。
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