43.ビジネス
「褒めて遣わす」
「ど、どうもです……」
揺にお褒めの言葉を貰い、ミカゲは恐縮する。
上層42層の
ミカゲは墨田ドスコイズ社長室を訪れていた。
"カグヅチ"は相当な額で川崎シーカーズに売却できたようで、揺は非常に上機嫌だった。
「普通に引いて、レベル9引き当てるのは相当偉い。偉すぎる」
今日の揺はこのように手放しで褒めてくれる。
「ど、どうもです」
「で、もちろん君にも臨時ボーナスを支給するぞ」
「……!」
(やった……!)
「税金とか抜いて、まぁ、だいたい2500万くらいの臨時ボーナスだ」
(……!?)
「え? 2500円?」
「子供の小遣いか……!」
「に、2500
「そうだ! 2500
「あびゃぁあ!?」
あまりの額にミカゲは卒倒しそうになる。
◇
更に一週間後――
ミカゲはモンスターカフェに来ていた。
しかし、この日は地下ではなく、本来のカフェの用途のために訪れていた。
普段使わないカフェ部分とあって、なぜか少しそわそわした様子のミカゲであったが、しばらくすると、待ち合わせしていた人物が現れる。
「蒼谷さん、お待たせしました」
「おー、深海、悪いな、呼んじゃって」
「いえ、
「あ、ありがとう」
「なんだか蒼谷さんがどんどん遠くにいってしまうようで、誇らしくもあり、不思議な気分でもあり、あとはほんの少し
深海は苦笑いするように言う。
「……」
ミカゲはその言葉に共感せざるを得なかった。自身も弟に対してそうだったから。
「でだ、深海。実は今日はお前に見せたいものがあるんだ」
「ん……? なんですか? そのでっかい箱に入ってるんですか?」
「あ、そうそう」
深海はミカゲが足元に大きな箱を持っていることに気付いていた。
「で……これなんだけど……」
ミカゲは箱を開ける。
「……? えーと……」
深海は疑問に思う。
なにせ大袈裟な箱の割に、中には小さな
「えーと、冗談じゃなくてな……これは宝物……
「……!?」
==========
【
Lv7
攻撃:C
防御:AA
魔力:B
魔耐:AA
敏捷:C
説明:6枚の不可視の小さな盾
==========
「これってまさか……」
「この宝物なら、ひょっとしたら片手でもそれ程デメリットがないかなと……」
「……!」
深海は戸惑い、少し考えるように沈黙する。
だが……
「こ、こんな高級品もらえま……」
「おいおい、いくら俺がお人好しだからって、ただであげるわけないだろ? これは"ビジネス"だ」
「……!?」
「レンタルだ。所有権は俺にある。月々6万円だ」
「……っ」
「あ、買取オプションもあるぞ? だから、なっ? ……あ、あれ? お金厳しいかな? 少しだけなら値下げも……」
深海が微妙な顔をしているので、ミカゲはあせあせする。
「……有難うございます。有り難くお借りさせてもらいます」
「……!」
「正直言うとですね、片腕分の傷害保険で500万ほど降りてます。だから少し厳しくはありますが、払えない額じゃないですよ」
「う、うん……」
「自分のために用意してくれたんすよね? 本当……有難うございます……」
「あ、あぁ……だけどよ、深海……これからだぞ?」
「……」
「俺にできるのはここまで……
「おっしゃる通りです。それでも自分は……!」
深海の目には強い光があった。
「わかった。なら契約成立だ」
「はい……」
……
もろもろの契約を交わした後――
ミカゲは少しモンスターとチャンバラをしていくということで、深海はその日は同行は断り、
そして、深海はその盾の市場価格を調べる。
「やっぱり……」
深海は独り言のように呟く。
「市場価値約2000万円……月々6万円って回収するのに30年掛かる激安じゃないですか……とんだビジネスですね……」
深海は頭に手を当てる。
そして……
「必ず返してやりますよ。利子付けて……!」
◇
なお、数日前――
ポチる? 本当にポチっちゃう?
蒼谷ミカゲは悩んでいた。
2000万円。
これはブロッコリー1株200円として、約10万株買える計算になる。
1日1株としても約274年分。
つまるところ、生涯、ブロッコリーに困ることはない金額だ。
だが……
"未来のS級攻略者には2000万など端金だ"
揺の言葉を思い出す。
そうだ……これは深海のため為らず。
自身の覚悟を試すためのモノだ。
覚悟は決めた。いくぞ……! 蒼谷ミカゲ……!
そこから2時間悩んだ。
================
【あとがき】
お知らせがあります。
本作の書籍版
『未知と宝物ざっくざくの迷宮大配信!~ハズレスキルすらない凡人、見る人から見れば普通に非凡でした~』
が5/2にBKブックスから発売となります。
そして、なんとコミカライズもしていただけるようです。
書籍版はWEB掲載で思いっ切りカット(29話辺り)したB級昇格試験編が書き下ろしとなっております。かなり熱い展開になっておりますので、是非、読んでほしいです!
表紙画像付きの詳しい記事はこちら↓
https://kakuyomu.jp/users/kojinayuru/news/16818093075820568869
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます