十五話 みんな聞きたい。木製カプたん どうやったらデキるの?
霧斗は、立ち上がり。
飛んでいった右手を、拾い上げると。
細い縄を通した、穴が割れ、破損していた。
「分かりやすいように、木目を、無視して作ったけどね?」
「木目…」
「いくら、強い木を使っても、木目に強い力を加えたら、ソコから割れちゃうよ?
大きいモノを作るなら。
木の長さより、太さが、大切に、なっちゃうから…」
薪用の木は、どのように作るのか。
薪を切る、とは、言わない。
薪は、割るモノである。
木は、タテ繊維の集まりだ。
上下に伸ばされた糸が、集まっているようなモノ。
短い丸太の切り口を、上にして、オノかナタを食い込ませ。
堅いところに、叩きつけることで、木は切れずに、割れる。
割けるチーズを、手で裂くようなモノだ。
なら、割けるチーズを。
手で裂けない方向に、切ろうとすれば。
思ったより丈夫で、キレイに割くことがデキない。
キレイに切り分けるのは、包丁で、カットする必要があるだろう。
円柱や、薄い板の、裂けるチーズと。
一本の木から切り出した、丸太、木の板は、同じようなモノだ。
レンタルゴーレムのパーツに、穴を開け。
ロープで結び、繋いで歩かせるなら。
真下に重量が、かかり続ける。
割ける方向に、力が加わり続ければ。
どんな頑丈な木材であっても、割れてしまうのだ。
木の目、割ける方向が、正面から見て、タテでダメなら、ヨコで作れば良い。
これが、木製ゴーレム カプたん 最大の問題なのだ。
5メートルものハリボテを、木から切り出すなら。
各パーツの、左右幅は、木の長さ。
上下幅は、木の太さ以上に、することはデキない。
「全部、ヨコ目にするなら。
この胴体と、長い手も、ヨコ目にしなきゃだし。
大樹でも切らないと、作れないよ? ソレに…」
ミニチュアゴーレムの関節、合わせ目は、全て半円だ。
その真下に、ロープで繋ぐ穴が、ある。
強く縛り付けると、稼働できなくなるので、緩く結ばれているが。
緩ませれば、ロープと、結び目に、とんでもない力が、かかる。
ミニチュアゴーレムの手が割れ、飛んでいった原因だろう。
家具や、家ではない。
激しく動き回る、レンタルゴーレムを作るなら、避けて通れない。
「丸木キレイに削るの、デキないことはないけど…」
エリスは、ナイフを見せて笑う。
「時間が、かかっちゃう…」
ロープを通す穴も、だろう。
ナイフの先端で、器用に、上下から削っていたが。
サイズアップすれば。
穴開け作業も。
円形に削り出すのも。
手作業では、かなりの難易度と、手間になる。
「穴だらけだわ」
霧須磨は、本当に、物事を冷静に見ていたのだろう。
レンタルゴーレムで、お金を稼ぐプラン、だけではなく。
ハリボテゴーレム制作ですら、穴だらけだ。
「成功するとは、思えないわ」」
具体性なんて、ドコにも、ないのだから。
とりあえずやってみよう。
それ以上の話では、ないのだから。
サイコーのハッタリだと、言われ。
デキなかったときのことを。
霧須磨に考えさせているのも、仕方ないのだろう。
明確な問題点は、エリスが、示し続けるのだから。
「木材は、エルフの産業だし。
木は、林業の人たちしか、切ることを許されてないよ」
この森が、里山と同じなら。
建材として、一番、使い道がある、大樹が残っているなら。
「大樹は、私達の守り神みたいなモノだから、ね」
切り倒すことなんて、デキるわけがない。
たとえ、大金を積んでも、不可能だ。
「ああ…。コレは」
霧斗は、割れたパーツを見て、震えた。
一本の切り出しでないと、強度が保てない。
胴体・長い鈍器のような腕は。
大樹を、切らなければ作れない。
あきらめ、建材に使う木材を手に入れようにも、この世界のお金がない。
問題が、山積しすぎている。
なら、タテ目で良いように、構造を変えるか。
(結びを、一つじゃなく、いくつにも分散させる?)
そうするなら。
血管のように、レンタルゴーレムの体中を、ロープが、這い回ることになる。
壊れやすい弱点を、見せつけながら、歩いているようなモノだ。
体当たりしようモノなら、ロープに負荷をかけ、切れる要因を作る。
そんなモノが、戦いの中、使い物になるハズがない。
(なら、装甲を、かぶせるか?)
肉厚の板を、張り付ける。
この時点で、構造が、複雑化してしまう。
間接の可動域を、確保するには、複雑な加工が、絶対不可欠だ。
そこまで、やったとしても。
薄い木目に、強い力がかかれば、割れる。
構造を複雑化させた時点で、木製ゴーレムは、強度を失うのだ。
パーツ数が少なく、すごくシンプルな、構造でなければ、強度が保てない。
(なら、ロープを。もっと強いモノを、つくるか?)
ロープは、強い一本の糸を、本数をまとめて、こじり、ヒモを作り。
ヒモを、2・3本集め、編み込むことで、ロープになる。
仮に、より強い素材、繊維が、編み方が、見つかっても。
1・2メーターで、足りるワケがない。
最低でも、4・50メーターは、必要だ。
間接強度を上げるなら、モットだろう。
そうなると、木を手に入れ、削るよりも。
ロープを作る方が、難易度が高くなる。
「木を、ロープで繋ぐだけ、なのに…」
霧斗ですら思いつく、モノが。
なぜ、命を賭けて戦っている、この世界に、存在していないのか。
そもそも、作るコトに、問題が、ありすぎたから、作らなかったのだ。
木製カプたん を、作れるほどの素材があれば、簡単な家が作れる。
家具なら、頑丈なモノが、いくつも制作できてしまう。
使えるかどうか分からないモノより、生活に、必要なモノに消費する。
木が一本、建材として使えるほど育つのに、十年単位の時間がかかるが。
毎年、冬には、薪が必要な、文化レベルなら。
まだ、あるからと言って。
使い続ければ、木を、取り尽くしてしまう。
木製カプたん は、ソコから行けば、かなりの無駄遣いだ。
なら、ハーフエルフを、特攻させた方が、マシだ。
木よりも早く育ち、ペイ、デキる利益は、相当なモノに、なるのだろう。
(ロボットが作れない最大の問題が、エネルギー問題なのは…)
現代だからだ。
原子力発電所、全ての施設を。
最低でも、6畳の部屋に、収まるサイズにしなければ、ならない。と、言えるのは。
9メートルまでに納めれば、巨大ロボットは、可能だと言われ。
問題点が分かっていて、解決しようと、しないのは。
現代戦争において、使い道がなく。
工業、建築につかうなら、使用目的を限定的にした、重機で十分だからだ。
億では足りない、莫大な資金と。
数年では、きかない時間を、かけ。
積み上げなければイケない、技術を、一つ一つ見つけていくウチに。
会社が潰れる。
完成させたところで、莫大な金をかけて、運用する意味がなく、使い道がない。
作ろうとするとき。
それは、いま、あるもので可能になり。
利用価値が、ある場合だけだ。
携帯電話と、パソコンが一つになり、スマホになるように。
霧斗のように、あるモノを組み合わせれば、作れると。
ある程度、具体的に想像がつき。
人型ハリボテでないと、ダメな理由がある場合だけ。
「ハリボテが、簡単だって?」
バカを、言っては、ならない。
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