第14話 ともだち(続)
まだドキドキというか、変な緊張感が…。
落ち着かない。
そんな俺を見て大輝が言った。
さっきはごめんな。
いや、なんかお前が新しい交友関係開拓できたのかと思って嬉しくなっちゃって。
早とちりしてごめん。
まさかただの人違いだけの顔見知りとは…。
いや、いいんだ。
なんか俺、ここ最近自分の事について色々考えちゃって。
今まで自分のことに対して疑問を持ったことがないというか。
俺はこういう奴なんだからって決めつけてこの歳まできてて。
人見知りで人が苦手だし、今のままで十分だって思ってたんだけど…。
この前大輝に「本当に好きな人に出会ってないかも」って言われた言葉がずっと引っかかってて。
なんで引っかかるのかまだわからないんだけど、
なんて言っていいか、自分が経験したことない感情があるとするならどんなものなのか知りたくなったというか。
俺、何言ってるかわかんねーよな?
気持ち悪いこと言ってすまん。
大輝は黙って真剣に聞いてくれていた。
なるほどな。
ようやくお前は自分に興味がでてきたってとこかな?
気持ち悪いことなんてひとつもないよ。
すごいことじゃん。
この歳で新しい自分に出会えるかもしれないなんて
。
喋っている間に料理が運ばれてきた。
さっ!まずは食べよう!
大輝がそういうと、さっきまでの空気感が一気に別の雰囲気に変わった。
目の前で美味しそうに食べる大輝を見ていたら、
今日はあれこれ難しく考えるのをやめようって気分になった。
よほどお腹が空いていたのか、大輝はものすごい勢いで食べる。
「大輝、慌てずゆっくり食えよ(笑)」
「え?俺そんな早食いかな?うますぎてどんどん食べられちゃうんだよな。」
大輝のこういう素直なところがいい。
一緒に食事しててこっちも嬉しくなる。
あっという間に食事を終え、デザートを頼むときが来た。
俺はせっかく治まった心拍がまた上がってきた。
デザートを頼むということはハチワレ男がくる。
俺が迷っていると大輝が店員を呼んだ。
やっぱり…
当たり前だかハチワレ男改めハチワレ君がきた。
「デザートをお願いします。」大輝が言う。
「承知しました。お済みのものをお下げします。」
そう言うとハチワレ君はスムーズに沢山の食器を持ってキッチンの方へ戻って行った。
大輝が俺を見て笑う。
「なんだよ?」
俺は恥ずかしくなってそう言ってしまった。
大輝が嬉しそうに言う。
「別にー。直樹のソワソワしてるとこ見るの学生ぶりで。昔のお前を思い出して懐かしくなった。」
「お待たせしました」
ハチワレ君再びだ。
するとハチワレ君が小さなメモを俺に差し出す。
「これ、僕の連絡先です。」
俺は両手で丁寧にメモを受け取りながら
「ありがとうございます。」
と言って固まってしまった。
「あの、この前お名前も伺えずだったんで、お聞きしても?それと連絡先も頂けると嬉しいです。」
ハチワレ君にそう言われ俺はハッとした。
「ごめんなさい、気がつかなくて。」
慌てて手帳を取り出し、名前と連絡先を書いて渡した。
ハチワレ君は爽やかな笑顔で受け取ると、
「仕事が終ったら連絡させてもらいます。」
そう言うとお店の奥に戻って行った。
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