第7話 好きとはなんだろう

 俺は大輝に連絡し食事に誘った。

あいつのことが少し心配だったのと、「好き」という感情について聞きたかった。


二人で店に入って注文したものを待っている間、

俺から話し始めた。


あれからその…家のこと大丈夫か?

俺にできることなんてないのは分かってんだけど

気になっちまって。


すると大輝は小さく「おぅ」と言った。


悪いな、変に心配かけて。

お前にはついなんでも話したくなるっていうか、

ホントの気持ちを素直に言えちまう。


おまえ、癒やし系だよな。


急にそんなことを言われ、何だか恥ずかしくなって目が泳いでしまった。

おっさんがおっさんを褒めて恥ずかしくなるって、

俺はアホか!

と心で自分にツッコんだ。

大輝は笑うとき目尻にシワができて目尻が下がる。

優しくて穏やかな笑顔だ。

脳内でそんなことをやってる間に大輝は話を続けた。


あれから嫁の前では普段通りにしてんだ。

正直本音もすっげぇ気になる。

だけど聞いたところで俺の気持ちは多分変わらないんだよな。


子どものことも、嫁のことも、俺が死ぬまでずっと一緒にいてやりたいってことは間違いないから。


そんだけ自分の軸が明確なら、もう気にすんのはやめようって結論出した。


嫁から冷たくされてるわけでもなく、二人で買い物行ったり、記念日には食事にも行くしな。

それに身体の関係も頻度は減ったもののあるし。


愛されてないとは思えないんだ。

俺がそう感じられてんならそれでいいかって。


だから、もう心配いらないぞ。


話終えると同時に食事が運ばれてきた。


お待たせいたしました。


食事を差し出す手が綺麗で、思わず顔を上げ店員の方を見た。


!!!


ハチワレ男だ…


俺は気が付かない振りをしてすぐにテーブルの下に視線を移した。


ハチワレ男は食事を並べ終えるとそのまま店の奥に消えていった。


良かった、気づかれてない。

無理もないか。

おっさんの私服姿、しかも地味でダサい特徴のない俺だ。

気づかれまい。


ソワソワしている俺に大輝が聞いた。


お前から誘ってくれるなんて初めてじゃん。

そんなに俺のこと気にしてくれてたのか?


そう聞かれバカ正直に俺は言った。


いや、正直に言うとお前に聞きたいこともあって。

あっ!でも心配してたのもほんとだ。

お前が泣くなんて初めてだったし。


とりあえず、食べよう。



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