自問自答

Spicuron

01.生きる目的と死なない理由

「何のために生きていますか。」


この問いに僕はこう答える。


「生きる目的ですか。

それとも死なない理由ですか。」



僕にとって生きるということは

『死』という概念に向かって進むこと。

それがどんな方向であれ、

その地点に進んでいれば『生きる』ということである。


「生きる意味がわからない。」


と言う言葉をよく聞くが、

生きる意味など特にない。

強いて言うのならば、産まれたからだ。

産まれ、意思を持った以上

その先には『死』が待っている。


まっすぐな直線の道を歩くだけ。

『人』に生まれた以上

かえることのできない道である。


終わりのない物語ほどつまらないものはない。

いつか終わるからこそ、面白く、

心踊る物語を作ることができるのだ。


だからこそ、

『人』

という種の終わりに感謝しなければならない。


このような僕如きの物語を

彩ろうとしてくれるのだから。


前置きはさておき、

僕の生きる目的、

そして死なない理由だが、

僕の生きる目的は存在する。


そしてそれは、

他者がいて成り立つ目的と、

僕一人で成り立つ目的の、

二種類存在する。


まずひとつは、二つのものを守ること。

これは他者がいて成り立つ目的である。


僕は大切な人を守りたい。

しかし、多くの人を守るだけの力はない。


だからこそ、大切な人を守るために、

それ以外をその他大勢として捉えている。


僕が守りたいのは、

『家族』と『友人』だ。


無条件の愛を与えてくれた『家族』。

僕の人生に光を与えてくれた『友人』。


この二つの存在を何を賭けても守りたい。

例え灯火を消すことになろうとしても。


だからそれ以外の存在は『その他』である。


私の物語では

一人称が『僕』

二人称が『家族』と『友人』

三人称が『その他大勢』

である。


三人称が一括りにされるよう、

多くの人は私にとって三人称である。


このような物語。

楽しくて仕方ない。


だって主演は僕で、監督も僕だから。



ふたつめは、生きた証を残すこと。


これは僕一人で成り立つ目的である。

他者が存在しなければならない目的のみでは、一人になった時に僕はいなくなる。


だからこの目的が存在する。


見ず知らずの他人の記憶に私の名前を残すこと。

形あるものでも、形ないものでも良い。

言葉でも、概念でも、名前でも。

どんなものでも良いから僕の存在を他人の記憶に残す。

それが僕の目的だ。


誰かの記憶の中にいることで僕はさらに『生』を楽しむことができる。


より楽しむために人の脳に存在したい。


だから僕は生きた証を残す。



この二つがあるから僕は進むことができる。

どんなに分厚い本でも読みたい気持ちがあれば読むことができるように。

私は毎日ページを捲ることができる。



さて、死なない理由の方だが、

それは特にない。


強いて言えば生きているからである。

生に執着することも、

死に執着することもなく、

流れるままに生きている。


「何のために生きているのか。」

そんなものはない。

「生きているから生きている」

だけである。


空気を吸うのに理由がいるだろうか。

そこにあるから。

生命維持に必要だから。

その程度の理由で納得するだろう。


だからこれで良い。


瞼を閉じて世界が暗闇に包まれた時、

またその世界に光が差し込まれれば、

生きているのであろう。


毎日暗闇の世界に光が刺す。

これだけで充分素敵な人生ではないだろうか。



そして新たな世界が始まった時。


「何のために生きていますか。」


この問いに僕はこう答える。


「生きる目的ですか。

それとも死なない理由ですか。」


と。








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