Divive15「未知なる世界」

 ゴーレムに追いかけられ、逃げるレッカと沙織。謎の世界に迷い込み分からない事だらけで少々困惑していた。ただ1つ分かった事がある、ここがゴーレムの巣窟である事を。


「ゴーレムの巣窟って事は……他にもわんさかいるって事か!?」

「でしょうね!アンタのせいなんだから、早くなんとかしなさいよ!!」


 って言われても………いや、ここはイチかバチか……!!


 レッカ立ち止まって、腰に掛けてあったディバイヴ・デバイスを取り出した。


「頼むぞ………出来てくれよ!!」


 レッカがデバイスの横のボタンを押すと、粒子が彼を包みアンバーリベリオンを装着ディバイヴ・インした。「出来るんだ……」と沙織は感心する様な目で見ていた。PSパワードスーツはデバイスに保管、管理されている。その為、あらゆる状況においても纏う事が可能である。ましてや、別の世界から出来るなんて想定はしていないだろうが。


「使えるなら話は早い、ぶっ飛ばすまでだ!!」


 マルチプルライフルをソードモード切替えて一気にゴーレムの懐に飛び込んだ。そしてその胸部を思いっきり斬り上げた。そのままゴーレムは倒れ、塵の様に消滅した。


「ふぅ……とりあえず、一安心って所かな?」


 アンバーを解除したレッカは地面に着地して、沙織の方へ向かった。辺りを見渡し、益々不思議に感じていた。


「にしても、何なんだここは?」

「ゴーレムの巣窟ってのは間違いないわよね……とにかく、戻れる方法を探さないとね」


 そこからひたすら歩きだした。周りにあるのは現代の建物の様なものでなく、昔の文明を思わせる古民家や遺跡を彷彿とさせた。

 まるでタイムスリップしたかの様、そう思える。何より不気味なのは人の気配が感じられない事だ。自分達以外に誰もいない、まるで滅びた世界の様、そう感じていた。


「何か手掛かりとか見つけたか?」

「いいえ全然、それよりも見てよアレ」


 沙織が指さした方向を向くとそこには無数のタランチュラ級のゴーレムがこちらを見ていた。だが、襲って来る気配が感じられなずただこちらを見ているだけだった。


「どうする、アレ?」

「あっちから攻撃してこないなら、放っておいた方がいいなじゃないか?下手に刺激して面倒になるのは御免だ」

「それもそうね」


 触らぬ神に祟りなし、タランチュラ級を無視して先へ進んでいった。ひたすら歩き続けて2時間、流石に疲れたのかレッカは地面に座り込んだ。


「ダメだ、全然手掛かりが掴めねぇ…」


 淀んだ空を見上げ、大きくため息を吐いた。本当に帰れるのか?このまま戻れないんじゃないか?そんな不安が過った。自分のせいでこんな目にあって沙織にとってはいい迷惑、レッカは気まずそうに距離を少し話していた。


「…………あのさ」


 申し訳なさそうに沙織に声を掛けようとした時、突然大きな声でレッカは呼ばれた。


「ちょっと、コレ見てよ………」

「なっ……どういう事だよ………コレは?」


 沙織が見つけたもの、それは大きな扉だった。白い色をしており血塗られた様な赤色で何かを表す紋章の様なものが描かれていた。その大きさはゴーレムよりも大きく、とても重工に作られてる様だ。


「あの扉……中に一体何があるって言うんだ……?」

「分からない……とても不気味だわ。何なのあの紋章?」


 紋章はいくつかの記号を重ねた様なものでどこか宗教じみた雰囲気も感じられる。コレが何を意味するのか?レッカ達にはまったくもって理解できなかった。


「ねぇ、あそこにいるのって………」

「あっ、アイツは!?」


 その扉の近くにブレインの姿を発見した。すぐに飛び込もうとするレッカの手を沙織は掴んだ。


「ちょっと、またそうやって1人で飛び出す気?」


 今飛び出せば無数のゴーレムの餌食となる。いくらレッカと沙織でも敵のテリトリーで戦うのは不利だ。沙織はそれを分かってレッカの行動を止めた。しかしこのまま黙っていてもどうにもならない、深呼吸をしながら冷静に策を考えていた。


「奴が姿を消したらあの扉の方に行くわよ」

「……分かったよ」


 不貞腐れながらもレッカは沙織に指示に従う事にした。しばらく辺りを見渡すとブレインはその場を去って行った。そこから少し時間を空けて扉の方へ向かい始めた。


「あそこね………」


 扉まで100mの距離まで近づき、その大きさを改めて実感した。

 その大きさは10mを軽く超えていた。歩くのを再開すると同時に耳を澄ませた。不気味な声が聞こえる、ゴーレムの様な唸り声、それはどこか何かを訴えかける様にも聞こえた。


「なんなの、この声…一体この奥に何が?」


 扉に近づこうとする2人の背後から足音が聞こえ始めた。振り返るとそこにはブレインが近づいていた。


「しまった、気付かれてた!?」

「チっ、あっちからお出ましならやるしかないよな?」


 ブレインを前にレッカはデバイスを取り出し何時でもアンバーを装着する体制を取った。しかし、ブレインはただレッカと沙織を見つめるだけであった。


「攻撃してこない……だと?」

「…………………」


 しばらくするとブレインはそのまま去って行った。レッカが追いかけようとすると、空間に穴が開き始めた。その中にはレグルスシティの街並みが写し出されていた。


「もしかして、元の世界に戻れる……のよね?」


 沙織はその穴に恐る恐る足を踏み込んだ。今はブレインと戦うべきではない、帰るのが先決だとそう判断していた。


「アイツ……一体なんなんだ?」


 ブレインに疑問を抱きながらもレッカは沙織の後に付いていき穴の中に入っていった―――――――――











 ――――――――――――――――


「っ……ここはレグルス?」

「やっぱり、戻って来たんだ、アタシ達!」


 穴に入り目を開けるとそこには見慣れた景色、レグルスシティの街並みが広がっていた。賑わう人々、鳴り響くクラクションの音、元の世界に戻って来たと改めて感じていた。


「夢……じゃないんだよな?」

「えっ、えぇ……とにかく、みんなと合流しましょう」


 ひとまず沙織はデバイスを使ってグレイに通信を掛けた。


『お前ら……大丈夫なのか?』

「えぇ、何とかね……話したい事はいっぱいあるけど、今はそっちに合流するわ」

『あぁ、司令も心配していた、すぐに戻ってこい』


 グレイは普段と変わらず冷静に対応しながらも2人が無事だった事にどこか安心している様にも思える口ぶりであった。通信を終え、沙織たちはレグルス本部へと足を運ぶ事にした。









 ―――――――――――――


「失礼します、銅月沙織、銀河レッカ両名ただいま帰還しました」


 レグルス本部に戻り司令室に入った途端、ミオンが駆けつけ沙織の事を抱きしめながら2人が帰ってきた事に安心していた。


「2人共!よくも無事だったわね……心配させるんじゃないわよ」

「ゴメン、文句ならレッカに言って。いい迷惑したのはアタシなんだから」

「だから悪かったって言ってるじゃんか!」


 普段と変わらない会話が横行する中、一息呼吸と付いた静香が口を開いた。


「2人共、無事でよかった……では何があったか、話してくれないか?」


 2人はあれから起こった出来事を包み隠さずに話した。

 それを聞いていたミオンとグレイはにわかには信じがたいと言わざろう得ない表情をしていた。無理もない、全く別の世界が存在するのだから。そん中、静香は深刻そうな表情しながら小声でつぶやいた。


(そうか……知ることになったか)

「司令?」

「ともかく、この事は後に総本部に報告しておく。コレが大きな前進になる事を私も願っている。本当にご苦労だったな」


 レッカ達が司令室を出るのを確認すると静香は椅子にもたれ掛かり本棚に飾ってある倒れた写真立てをどこか思いつめた様な表情で見つめた。


「やはり……私を許してくれない様だな………」








 ―――――――――――――――


「でも、本当に無事でよかったわ~みんな心配してたんだから!」


 休憩所でコーヒーを飲みながらミオンはレッカ達の無事を心から安心していた。


「特にカノープスのコマンダー……朱音さんだっけ?沙織の事すっごく心配してたわよ、確か……従姉なんでしたっけ?」

「………まさか、あの人がアタシを心配なんて」


 カノープスのコマンダー、朱音の本名は銅月朱音あかつきあかね。沙織の父、弦間げんまの兄の娘であり沙織とは従姉の関係にある。だが、彼女は隠し子だ。それ故に幼い頃から一族から蔑まれており、辛い思いをしてきた。それもあって弦間から期待されている沙織には当たりが特に強い。いじめられてきたというわけではないが彼女の事を沙織は苦手である。


「まずありえないわよ。あの人がそんな事…」


 そんな彼女が心配するはずがない、沙織は苦い表情をしながら紙コップを握りしめた。


「それにしても、別の世界あるなんてな。あまりにも信じられないが……」

「本当なんだって!ゴーレムがわんさかいて、まるで滅びた世界っていうか………」

「分かってる。だがそこからゴーレムが現れてるのは間違いない。そこを叩けばいずれは………」


 あの世界からゴーレムがこちらの世界に現れる事をグレイは確信していた。そこを攻撃できれば、この戦いは終わりに近づく事も。だが、こちらから向かう手段がない、原理すら分かっていない、届きそうで届かないもどかしさがそこにあった。


「あの穴はブレインが開いた……のかしら?」

「俺にもさっぱり、けどアイツが大きく関わってるのは間違いないんだろうな」


 俺達が元の世界に戻った時、ブレインがあの穴を開けたのだとしたら………10年前のあの日も奴の仕業なのか?黒幕………なのか?分からない事だらけだ。


「とにかく、進展を待つ………だけだな」

「そうね、実は悪い話ばかりじゃないのよ!」


 ミオンが大きな1枚の紙を広げた。そこには戦闘機の様な物の設計図が描かれていた。1機は火器を大量に搭載しておりもう1機は動翼や背部にブレードが搭載されている物だった。


「ミオン、コレは?」

「最近アタシ達よくやってるでしょ?それで総本部が評価して予算が増えてね。それで、コイツを開発しようと思うの、PSをサポートする支援機よ!!」


 ミオンが密かに設計していたサポートユニット。当時のレグルスでは予算不足で計画は断念、だが今となっては評価も上がっており予算も倍以上得ているとの事。


「この支援機はスラッシュとウィンガーとの合体も想定している。これで戦力増強よ!!」

「俺のじゃないのか?」


 てっきり自分に用意されているのかと勘違いしたレッカ。そこにミオンが顔を近づけ一言言い放った。


「何でアンタばっか強くさせにゃならんのよ!アタシ達だっていい所見させろっての!!ねぇ、沙織♪」


 沙織にウィンクして同情を誘った。ミオンから顔を背けるも沙織もその考えの一部には同意だった。


「まっ、アンタだけにいい恰好ばっかさせてたまるかってのはあるわね」

「それで言うなら俺も1つ文句がある。何で俺の機体を作らない?」


 グレイは心の奥底では自分だけがリベリオン系統のPSを扱えてない事に少々不満を持っていた。その問いにミオンは不貞腐れながら答える。


「こっちを優先したいから」


 単純な理由にグレイはため息を吐いて呆れていた。


「そういや、キースの奴……」


 レッカはふと思い出した。キースはブレインによって仲間を殺された事を、あの時は咄嗟に戦えと言ったがそう簡単に割り切れる話じゃない。心配する彼に沙織が肩を叩いて来た。


「まっ、そういう事もあるのよ……アタシ達には」

「あっ、あぁ…………」


 仲間を失うってのは………誰よりも辛いんだろうな。今の俺には想像が出来ない、考えたくもない。誰1人、ここにいる皆のは欠けちゃならない、皆で………平和を掴むんだ!







 ――――――――――――――――――――


 その日の夜、家に帰って来たレッカはベッドで寝そべっていた。


「…………」


 あの時はあまり言わなかったけど………目の前で人が死んだんだよな………無我夢中で戦ってたけど、何時命を落としてもおかしくない、PSディバイダーって。怖くない、なんていったら嘘になる。何時俺も………なんて考えてしまう様になった。だけど誰にも言えない、沙織達に弱音を吐くなんて出来ないし母さんや渚に話す事も出来ない。


「どうすりゃ、スッキリするんだろうなぁ………」


 To be continued…

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