第66話『お嫁さんとのお風呂-後編-』
体の前面と顔を洗い終わったので、優奈と場所をチェンジすることに。
バスチェアに座っている優奈の後ろに膝立ちする。
ロングヘアなのもあって、腰の近くまで髪で隠れている部分がある。ただ、露出している部分の肌は透明感を感じられるほどに白い。また、くびれもしっかりとあって。とても綺麗な後ろ姿だと思う。それをすぐ目の前にしているからドキドキしてきて。
あと……かなりの大きさだからか、背中越しに胸がちょっと見えていて。確か、前に井上さんがFカップだと言っていたな。そういった部分にもドキッとさせられる。
「じゃあ、優奈の髪と背中を洗っていくよ。どっちから洗ってほしい?」
「髪からお願いします」
「髪からだな。分かった」
「はい。私が使っているシャンプーは桃色のボトルです。あと、洗った後に白いボトルに入っているコンディショナーもお願いできますか?」
「了解。じゃあ、まずはシャワーで髪を濡らしていくから目を瞑って」
「はーい」
可愛く返事をして、優奈は目を瞑る。それを鏡越しに確認し、俺はシャワーで優奈の髪を濡らしていく。
全体的に髪を濡らした後、桃色のボトルに入っているシャンプーで優奈の髪を洗い始める。
女性の髪を洗うのは久しぶりだから緊張する。綺麗で柔らかい髪でいられるように、優しい手つきで丁寧に洗うのを心がけよう。
髪を洗い、シャンプーが泡立ってきたことで、普段、優奈の髪から香る甘い匂いがしてくる。
「この甘い匂い……いいよな。普段、優奈の髪から香ってくるけど」
「ふふっ、そうですか。気に入っているシャンプーですから、和真君がそう言ってくれて嬉しいです」
優奈は鏡越しに俺に向かって笑いかけてくれる。
「私も和真君の髪を洗ったとき、シャンプーの香りがいいなって思いました」
「そっか。嬉しいよ。俺も何年も使っているシャンプーを使っているから」
「そうですか」
「……ただ、優奈はコンディショナーも使っているんだよな。でも、優奈の髪から香るのは、このシャンプーの香りだ。ということは、コンディショナーは香りがないのか?」
「はい。無香料のものを使っています」
「そっか。香りがないものもあるんだな。実家にいた頃、真央姉さんが新しいコンディショナーを使い始めると、俺に髪の匂いを嗅がせてきたからさ。ミルクとかピーチとか……」
「真央さんらしいです。いい香りのするコンディショナーはいっぱいありますからね」
ふふっ、と優奈は楽しそうに笑う。ブラコン姉さんが優奈に笑いをもたらしてくれた。ありがとう、真央姉さん。
「優奈。髪の洗い方はどうだ?」
「とても気持ちいいです。この洗い方でお願いします」
「分かった」
優奈が気持ちいいと思ってもらえる洗い方で良かった。ほっとした。
「和真君、上手です。和真君も誰かの髪をたくさん洗っていたのですか?」
「真央姉さんの髪は何度も洗ったな。両親や親戚の年下の子にも。ただ、それは小学生の話で、誰かに髪を洗ってあげるのは久しぶりだよ」
「そうなんですか」
「ああ。そういえば、中学以降も友達とお泊まりすることはあったけど、一緒にお風呂に入ることは全然なかったな。修学旅行ではさすがに一緒に入ったけど、髪や背中を洗いっこはしなかったよ」
洗い場で友達と隣同士で座って、観光した場所や好きな漫画の話で盛り上がったっけ。去年の高校の修学旅行では西山と。
「そうだったんですか。私はお泊まりだけはもちろん、修学旅行でも髪や背中を洗いっこしましたね。去年の修学旅行では萌音ちゃんと千尋ちゃんと」
「そうなのか。男女の違いなのかな。姉さんもお泊まりや修学旅行では、友達と洗いっこしたみたいだし」
「そうかもしれませんね。それにしても、久しぶりとは思えないくらいに上手ですよ」
「ありがとう」
大好きなお嫁さんに褒めてもらえて嬉しい。小学生の頃までに何度もやっていたから、手が覚えていたのかもしれない。
「髪の量が多いから洗い甲斐があるな」
「和真君よりも結構多いですもんね。疲れませんか?」
「そんなことないぞ」
「良かったです」
優奈はほっと胸を撫で下ろす。
これだけの髪の量を毎日洗っているんだから、さっき俺の髪が洗いやすいと言ったのも納得だ。優奈は凄いと実感する。
「……これでOKかな。優奈、泡を落とすから目を瞑って」
「はーい」
さっきと同じように、鏡で優奈が目を瞑っているのを確認し、シャワーで髪についた泡を落としていく。長い髪だから、落とした泡の量も結構多いな。
泡を落としきり、タオルで髪を拭いていく。ただし、これからコンディショナーを付けるので軽く。
軽く拭いた後、優奈の髪にコンディショナーを付けていく。小学生の頃、真央姉さんにも付けた経験はあるけど、優奈にコツを教えてもらいながら。
「無香料って言っただけあって、このコンディショナーは本当に匂いがないんだな。ちょっと不思議だ」
「真央さんの使うコンディショナーの印象が強いんですね」
ふふっ、と優奈は楽しそうに笑った。
匂いのなさに不思議な気分になりつつも、優奈の髪にコンディショナーをつけていった。
十分にコンディショナーをなじませた後、シャワーで優奈の髪をすすいでいく。
優奈からOKだと言ってもらい、俺はタオルで優奈の髪を拭いていった。シャンプーとコンディショナーのおかげで、優奈の髪はとても艶やかなものになった。
「よし、これでOKだな」
「ありがとうございます、和真君。では、背中を洗ってもらう前に髪を纏めますね」
そう言うと、優奈は慣れた手つきで髪をお団子の形で纏めていき、ラックに置いてあるピンクのヘアクリップで留めた。スムーズにやったのもあり、俺は思わず「おおっ」と声を漏らして、拍手した。
「スムーズに纏められて凄いな」
「ありがとうございます。毎日髪を洗った後にやっていることですが、褒めてもらえると嬉しいですね」
優奈はニコニコとした笑顔でそう言った。髪を纏めた姿を見るのは初めてなのもあり、鏡に映る優奈の姿にドキッとした。
「次は背中ですね。和真君、タオル掛けに掛けてあるボディータオルを取ってもらえますか?」
「分かった」
タオル掛けから桃色のボディータオルを取り、優奈に渡す。
優奈はボディータオルを濡らして、自分が使っているピーチの香りがするボディーソープを泡立てていく。その間、俺は……全てが露わになった優奈の背中をじっと見てしまう。優奈の背中……白くてとても綺麗だ。傷やできものも一切ないし。凄くドキドキする。
「和真君。お願いします」
「あ、ああ。分かったよ」
優奈からボディーソープが泡立ったボディータオルを受け取る。このボディータオル、俺の使っているボディータオルよりも柔らかいな。優奈の肌が綺麗な理由の一つはこれかもしれない。
優奈の背中を洗い始める。優奈の肌が傷つかないように、優しい力で。
「優奈。力加減はどうだ?」
「気持ちいいです。ただ、もう少し強くても大丈夫です」
「もう少し強くか。……このくらいでどうだ?」
「とても気持ちいいですっ。この強さでお願いします」
「了解」
優奈が気持ちいいと思える洗い方が分かって良かった。この力加減を覚えておこう。
とても気持ちいいと言っていただけあって、「あぁ……」と優奈は甘い声を漏らす。浴室なので、その声が甘美に響き渡って俺の耳に届いて。また、鏡に映る優奈はとても気持ち良さそうな笑顔になっていて。
洗いやすくするために、たまに優奈の背中に触れるけど、肌がスベスベで。だから、かなりドキッとする。
「背中を洗うのも上手ですね。背中を流すのも小学生のとき以来ですか?」
「たぶん。小6の……いや、中1の頃だったかな。夏休みの家族旅行で、父親と一緒に大浴場に入ったときに父親の背中を流したのが最後だったと思う」
「そうでしたか」
「姉さんや両親、親戚の子の髪を洗ったときは背中を流すことも多かったな。その経験もあって、両手が覚えていたんだろうな」
「なるほどです。あと、両手が覚えていたっていうのはかっこいいですね」
「ははっ、そっか。少年漫画っぽい感じがするな」
だから、優奈にかっこいいと言われたのが結構嬉しい。
誰かの背中を流すのは久しぶりだから、これまでに背中を流したことを思い出す。今は女性の優奈の背中を流しているので、真央姉さんや母さんのことを特に。
「あ、あの……和真君」
「うん?」
「……わ、私の背中ってどうですか? 私は和真君の背中の感想を言ったので、和真君が私の背中をどう思っているのか気になって」
優奈は頬をほんのりと赤くしながらそう問いかけてくる。鏡越しに俺のことをチラチラと見てきて。髪を纏めて背中を全て露わにしているし、背中を流す中で何度も触れている。だから、自分の背中についてどう思われるのか気になったのだろう。
「白くて綺麗な背中だって思うよ。肌に触れるとスベスベだし。素敵だよ」
鏡越しに優奈のことを見ながら、正直な感想を言った。それが良かったのだろうか。優奈は紅潮とした顔に笑みを浮かべ、
「そう言ってくれて嬉しいです。ありがとうございます」
と、お礼を言った。優奈が笑顔になってくれて良かった。
「……よし、これで背中を洗い終わった」
「ありがとうございます。気持ち良かったです」
「そう思ってもらえて良かったよ」
「とてもいい時間でした。和真君はもう全身洗い終わっていますし、先に湯船に入っていてください」
「分かった。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうよ」
優奈にボディータオルを渡し、両手に付いたボディーソープの泡を流してから湯船に入る。6月になったけど、まだまだ温かいお湯が気持ち良く感じられた。
洗い場の方に視線を向けると、斜め後ろから体を洗う優奈の姿が見える。ボディーソープの泡のおかげで、見えたらまずそうな箇所は見えていないけど……それでもかなりドキドキして、体が熱くなっていく。このままだとのぼせてしまうかもしれないので、優奈の方はあまり見ないようにしよう。
お湯の気持ち良さもあり、目を瞑ると段々と気持ちが落ち着いていく。あぁ、と声が漏れる。
「ふふっ、気持ち良さそうな声ですね」
「お湯が気持ち良くてさ」
「お風呂って気持ちいいですよね。季節は夏になりましたが、今の時期はまだ夜になると涼しく感じられる日もありますし」
「そうだな。真夏以外の時期はゆっくりと浸かることが多いな」
「私もです。湯船に浸かっている和真君を見たら、私も早く入りたくなってきました」
「ははっ、そっか。湯船で待ってるぞ」
一人で入っている今も気持ちいいけど、優奈が湯船に入ったらどんな感じになるのだろうか。楽しみだ。
それから、お風呂や旅行で行った大浴場の話を優奈としていき、
「体と顔を洗い終わりました。私も湯船に入りますね」
俺が湯船に浸かり始めてから数分ほど経って、優奈がそう言った。優奈が湯船に浸かれるように、それまで伸ばしていた両脚を曲げ、体育座りのような形になる。
「分かった。目を瞑っているから入ってきてくれ」
「分かりました。失礼します」
優奈がそう言うと、程なくして「ちゃぷん」と音が聞こえ、お湯の水位が上がっていく。あぁ、という優奈の甘い声も聞こえてきて。おそらく、優奈が湯船に入ったのだろう。
足の指に何かがちょこんと触れる。優奈の足の指だろうか。
「和真君。目を開けていいですよ」
「ああ」
ゆっくりと目を開けると、正面には俺と向かい合う形で湯船に浸かっている優奈の姿があった。胸元から上だけが見えており、肌はほんのりと紅潮している。胸は浮いているようにも見える。お湯が気持ちいいのか優奈は柔らかい笑顔になっていて。だから、今までで一番大人っぽく、艶やかな印象を抱かせる。
「優奈も湯船に浸かれたか。狭くはないか? 大丈夫か?」
「大丈夫です。和真君は大丈夫ですか?」
「ああ。体育座りみたいな感じで座っているけど、狭く感じないよ。ゆったりできてる」
「良かったです」
ふふっ、と優奈は声に出して笑う。そのことで、体だけじゃなくて心までも温まってきて。とても気持ちいい。
「一人でお風呂に入るのも気持ちいいですが……和真君と一緒だとより気持ちいいですね」
「そう言ってくれて嬉しいよ。俺も……優奈と一緒だから、いつもよりも気持ちいいなって思うよ」
「そうですか」
「ああ。……引っ越した日に初めてこのお風呂に入ったとき、優奈と好き合う夫婦になれたらきっと一緒に入るんだろうなっていたんだ。だから、実際に好き合う夫婦になれて、優奈とこうして一緒にお風呂に入れて幸せだよ」
優奈の目を見つめながら俺はそう言った。こうしていることが幸せだと言ったのもあって、心身共に感じる温もりが強くなっていく。
和真君……と、俺の名前を呟くと、優奈の笑顔は柔らかいものから幸せそうなものに変わっていく。
「そう言ってもらえて嬉しいです。和真君を好きになってから、和真君と一緒にお風呂に入りたいって思っていたので。それが実現して、和真君から幸せだって言ってもらえて。幸せな気持ちでいっぱいです」
「そうか。優奈も幸せな気持ちで嬉しいよ」
そう言って、俺達は笑い合う。
自分も裸で、目の前にいる優奈も裸だからドキドキするけど、優奈と一緒にお風呂に入っている気持ち良さの方が勝る。それはきっと、目の前にいる優奈が笑顔でいてくれるからなのだろう。
「和真君。とても幸せな気分なので、湯船の中でキスしたいです。……いいですか?」
真っ赤になった笑顔で優奈はキスのおねだりをしてくる。
こうして一緒にお風呂に入っている中で、優奈とキスをしたらどうなってしまうか分からない。でも、キスしたい気持ちの方が強い。
「いいよ、優奈」
「ありがとうございます」
両手と腕を使って、見えてはまずそうな部分を見せないように、お互いに少しずつ近づき……やがて唇を重ねた。
お風呂に入って、顔も洗い終わった後なので、優奈の唇は今までの中で一番しっとりとした感触で。これまでのキスよりも温もりが強いけど、優しいのは変わらない。互いに裸だし、シャンプーやボディーソープの匂いがとても濃く感じられるのもあり、心臓が跳ね上がる。
10秒ほどして、優奈の方から唇を離す。目の前には恍惚とした笑みを浮かべる優奈の顔があって。
「とても温かいキスでした」
「そうだな。あと、お風呂に入っているから凄くドキドキする。でも、気持ち良かった」
「気持ち良かったですね」
優奈はニッコリと笑った。
それからも、優奈と談笑しながら、初めての入浴の時間を楽しむ。たまにキスをして。心身共にとても温まることができた。
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