第63話『おめでとう』
「幸せです。和真君と好き合う夫婦になれて。いっぱいキスできて……」
何度かキスしながら甘い時間を過ごした後、優奈は言葉通りの幸せそうな笑顔で言った。そんな優奈の笑顔を見ていると、胸に抱いている幸せな気持ちが膨らんでいく。
「俺も幸せだよ。優奈への好意を自覚して、告白することを考えたら緊張したけど……ちゃんと好きだって言葉にできて良かった」
「本当にありがとうございます、和真君」
「いえいえ。好きだって思わせてくれる優奈のおかげだよ。こちらこそありがとう」
「……嬉しいです」
優奈は言葉通りの嬉しそうな笑顔になると、俺の胸に頭を埋めてくる。頭をスリスリしてきて可愛いな。優奈の頭を優しく撫でる。
俺に頭を撫でられるのが好きだからだろうか。優奈は俺を見上げて「ふふっ」と声に出して笑う。……可愛すぎるんですけど、俺のお嫁さん。
「大好きな和真君に抱きしめられながら頭を撫でてもらえて幸せです」
「良かった」
「ふふっ。……あの、和真君。好き合う夫婦になれましたから、そのことを家族や友達に報告しましょうか」
「そうだな。結婚の話をしたとき、優奈は俺と好き合える夫婦になりたいって言っていたもんな。友達だと……西山と井上さんと佐伯さんかな。話すのは」
「ですね。3人は特に関わりがありますし、私達が好き合う夫婦になるのを目指しているのを知っていますから」
「そうだな。じゃあ、両家の家族と、西山と井上さんと佐伯さんに報告しようか」
「はいっ。あと、夏実先生と美咲先生にも送りましょう」
「分かった」
好き合う夫婦になったと報告したら、みんなどんな反応をするだろう? おじいさんと陽葵ちゃん、真央姉さんは物凄く喜びそうな気がする。特におじいさん。
報告する人数が多いので、LIMEのグループトークに報告のメッセージを送ることにした。そのため、一旦、俺は自分の部屋にスマホを取りに行った。
優奈の部屋に戻り、俺は優奈と隣同士でクッションに座る。その際、優奈は俺の腕にちゃんと触れるくらいに近づいてきて。これまで、アニメを観る際に隣同士に座ったときは腕が触れるかどうかだった。こういうところからも、優奈と好き合う夫婦になれたのだと実感する。
「まずは両家の家族にメッセージを送りましょうか」
「そうだな。メッセージの文章は……『好き合う夫婦になれました』でいいかな」
「いいと思います。シンプルで」
「分かった。じゃあ……両家の家族がメンバーになっているグループトークに送るか」
「そうしましょう」
LIMEのグループには結婚の話をした場にいた9人がメンバーのグループがある。両家に関わることだし、9人いる場で優奈は『好き合う夫婦になりたい』と言っていた。なので、このグループのトークに報告メッセージを送るのが一番いいだろう。
『先ほど、好きな想いを伝え合って、優奈と俺は好き合う夫婦になれました』
『これからも、和真君と一緒に仲良く過ごしていきたいと思います』
というメッセージを両家のグループのトークに送った。
「これでOKだな」
「ええ。みなさんからの返事を待ちましょう」
「ああ」
と、トーク画面を見ていると、俺の送ったメッセージが『既読2』となっている。優奈以外に一人、さっそくメッセージを見た人がいるんだな。……あっ、『既読4』になったぞ。
『おぉ、そうかそうか! めでたいのぅ! おめでとう! 孫夫婦がラブラブになって、おじいちゃんはとっても嬉しいぞ!! ばあさんには私から報告しておくよ』
おじいさんからそういった祝福メッセージが送られる。やはり、メッセージを見た一人はおじいさんだったか。最初にメッセージを送ってくれるところもおじいさんらしい。おじいさんの嬉しそうな笑顔が目に浮かぶよ。おじいさんのことだから、お祝いのお酒でも呑みそうだ。
『お姉ちゃん、和真さん、おめでとうございます! お姉ちゃんは和真さんと好き合う夫婦になりたいって言っていたもんね!』
『好き合う夫婦になれたんだ! カズ君、優奈ちゃん、おめでとう! 良かったね! ラブラブな結婚生活を過ごしてね!』
続いて、陽葵ちゃんと真央姉さんが祝福メッセージを送ってくれた。陽葵ちゃんは白猫が『祝!』という垂れ幕が入ったくす玉を割ったイラストスタンプも。陽葵ちゃんに影響されてか、姉さんは嬉しそうにバンザイする寝間着姿の自分の写真を送ってきた。そのことに優奈は「ふふっ」と楽しそうに笑っていた。
それから程なくして、既読のカウント数が最大の『8』まで増加する。
『お互いに好きになったのね。おめでとう!』
『好き合う夫婦になれたんだな。おめでとう。長瀬君、優奈をこれからもよろしくお願いします』
『母の日に会ったときもいい雰囲気だったけど、好き合う夫婦になったのね。おめでとう!』
『和真、優奈さん、おめでとう。好きな気持ちを大切に、これからも一緒に仲良く結婚生活を送っていってね』
優奈の御両親と俺の両親からもそれぞれ祝福のメッセージが届いた。これで、両家の家族全員からメッセージが届いたことになる。全員『おめでとう』と言ってくれてとても嬉しい気持ちになる。
「両家のみなさんから、おめでとうと言ってもらえて嬉しいですね!」
その言葉が本心からだと示すように、優奈はとても嬉しそうな笑顔で言ってくる。優奈の笑顔を見ると、胸に抱く嬉しい気持ちが膨らんでいくよ。
「そうだな。俺も嬉しいよ」
優奈を見つめながら俺はそう言った。そのことで優奈の口角がさらに上がる。
両家の家族からみんな『おめでとう』と言ってもらえた。その想いや言葉を裏切ることがないように、優奈の笑顔を守って、優奈と一緒に幸せになっていこう。
俺達は『ありがとうございます』とお礼のメッセージを送った。
その後、俺達は一緒にいることが多い西山、井上さん、佐伯さんがメンバーになっているグループのトーク画面に、先ほどと同じような報告メッセージを送信する。
そんなに遅い時間ではないし、みんな起きているのだろうか。送信したメッセージの既読数がすぐに最大値の『4』まで上がり、
『優奈、長瀬君、おめでとう! 最近は特にいい雰囲気だったものね。おめでとう!』
『好き合う夫婦になれて良かったね! 2人ともおめでとう! いつまでもラブラブでいてね!』
『良かったな。おめでとう! 明日からはより仲のいい2人を見られそうで嬉しいぞ』
井上さん、佐伯さん、西山から祝福のメッセージが届く。こんなにも早く『おめでとう』と言ってくれるなんて。みんな本当にいい友達だ。とても嬉しい。
優奈は嬉しそうな笑顔でスマホの画面を見ている。そのことに口角が上がっていくのが分かる。きっと、今の俺の顔は優奈と同じような笑みを浮かべているのだろう。
最後に、渡辺先生と百瀬先生にも同様のメッセージを送ると、
『おめでとう! いつまでも仲のいい夫婦でいてね!』
『部活に来たとき、2人はとてもいい雰囲気だったものね。おめでとう!』
と、先生方からも祝福のメッセージをいただけた。
「萌音ちゃん達や先生方からもおめでとうって言ってもらえて嬉しいです」
「そうだな。みんながおめでとうって言ってくれて嬉しいな。俺達が夫婦になって良かったと思ってもらえるように、これからも一緒に過ごしていこう」
「そうですね」
可愛い笑顔でそう言うと、優奈は目を瞑って唇を少し突き出してくる。約束ですよ、という意味でキスしてほしいのだろうか。可愛いな。
俺は優奈にキスをする。さっきまで何度もキスしていたからか、優奈の唇は湿っていて柔らかく感じられた。それがとても気持ち良かった。
それからは優奈の部屋のテレビで、優奈も俺も好きな美少女キャラがたくさん出てくる日常系アニメを観る。みんなに報告メッセージを送ったときのように、腕がしっかり触れるくらいの近さで隣同士に座って。だからドキドキして。
このアニメは2人とも原作漫画を購読している。なので、アニメが始まって少し経つと、これまでと同じようにキャラクターのことなどを話しながら楽しく観ることができた。
「あっ、もうこんな時間なんですね」
2話分観終わったとき、優奈はそんなことを言った。
時間と言っていたので壁に掛かっている時計を見ると、針は午後11時過ぎを指していた。翌日に学校がある日はもうそろそろ寝る時間だ。
「11時過ぎか。……そろそろ寝るか?」
「そうですね。明日も学校がありますし。……告白してくれてから、私の部屋でずっと過ごしていますし、今夜は私の部屋で一緒に寝たいです。いいですか?」
「もちろんさ」
すぐに快諾すると、優奈はニッコリとした笑顔を見せる。
「ありがとうございます! では、私の部屋で一緒に寝ましょう!」
「ああ」
その後、歯を磨いたり、お手洗いを済ませたりして寝る準備をする。また、俺は自分の部屋から枕を持ってきて、優奈の枕の隣に置いた。
準備ができ、俺達はベッドライトを点けた状態で優奈のベッドに入って横になる。これまで通り、優奈が壁側、俺は床側に。
優奈のベッドだから、優奈に掛け布団を掛けてもらった。その瞬間、優奈の温もりと甘い匂いに包まれた感覚に。それがとても幸せで。
「和真君と好き合う夫婦になって、一緒に寝られて嬉しいです」
「そうだな。これからは毎日、基本的にどっちかの部屋で一緒に寝ようか」
「いいですね! 一日の終わりと始まりを和真君と一緒にいたいですから」
「俺もだ」
俺の提案を優奈が快く受け入れてくれて嬉しいな。
「あの、和真君。これまでは手を繋いで寝ていましたが、今日は腕を抱きしめて寝てもいいですか?」
「いいぞ」
「ありがとうございますっ」
嬉しそうにお礼を言うと、優奈は俺に近づいてきて、優奈側にある俺の左腕をそっと抱きしめた。
俺の左腕は優奈の温もりと柔らかさに包まれて。一部分は特に柔らかく感じて。これは……胸だろうか。左腕がとても気持ち良く感じる。
「和真君の腕……温かくて抱き心地がいいです。和真君はどうですか? 痛くはありませんか?」
「全然痛くないよ。温かくて、柔らかくて気持ちいい」
「良かったです」
優奈はニコッと笑う。手を繋いで寝たときよりも顔が近いからドキッとする。こんなに優奈と顔が近づけた状態で眠れるのか。幸せだ。
「和真君に告白してもらえて。私も好きだと伝えられて。家族や友達や先生からおめでとうと言ってもらえて。とても嬉しくて幸せな一日になりました」
「俺もだよ。告白に緊張したけど、勇気を出して優奈に好きだって言えて良かった」
「ふふっ。……和真君と好き合う夫婦になって。みんなにおめでとうと言ってもらえたからでしょうか。いつか……結婚式を挙げたいなって思います」
「そうだな。家族や友達やお世話になった人達を招待して。……優奈のウェディングドレス姿、凄く綺麗だろうな」
純白のウェディングドレスに身を包んだ優奈を妄想する。優奈はとても可愛くて美人だから、凄く似合うと思う。
「和真君のタキシード姿も凄く素敵でしょうね。和真君、とてもかっこいいですから……」
優奈はそう言うと、恍惚とした表情になる。もしかしたら、俺のタキシード姿を想像しているのかもしれない。結婚式をするのがいつになるかは分からないけど、優奈がいいと思えるタキシード姿になれるように今の体型を維持しておかないと。
ふああっ、と優奈は可愛らしいあくびをする。
「あくび出ちゃいました。和真君の温かい腕を抱きしめるのが気持ち良くて……」
「ははっ、そっか。じゃあ、今日は寝ようか」
「はい」
「ただ、寝る前にキスしたいな」
「いいですねっ。では、おやすみのキスをしましょう」
そう言い、優奈は目を閉じる。キス待ちをする優奈が可愛いなと思いながらキスする。
何度キスしても、優奈の唇の感触は心地いい。
2、3秒ほどで唇を離すと、優奈はゆっくりと目を開け、可愛い笑顔を見せてくれる。
「おやすみなさい、和真君」
「ああ。おやすみ、優奈」
俺がベッドライトを消すと、優奈はゆっくりと目を閉じた。あくびをしていただけあって、すぐに可愛い寝息を立て始める。
昨日よりも優奈の寝顔が近くにあって腕を抱きしめられているから、昨日よりも優奈のことを感じられる。だから、ドキドキして。でも、好きだという気持ちを伝え合って、好き合う夫婦になれたから、このドキドキが心地良く感じられる。だから、俺も段々と眠くなってきて。
「おやすみ、優奈」
優奈の額に軽くキスをして、俺は目を瞑る。
優奈の温もりや柔らかさ、甘い匂いを感じながら一日を終えられることがとても嬉しくて、幸せだ。これからもずっと、こういう形で一日を終わらせたい。そう思いながら眠りについた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます