桜
私は思うのです
桜は満開より散り際が最も美しいと
満開は思い出の最高潮
散り際は残り過ごせる僅かな時間
散りゆく姿はまるで思い出を忘れる
その過程のように思えます
私には本当の思い出というものがない
いやあるのにはあるのだろうけれど
それを重ねてきた仲間は皆
思い出を忘れていく
なら私は思うのです
満開は苦しいだけだと
散り際
そう散りゆく姿こそが美しいのだと
花弁一枚一枚が思い出の鱗片となり
陽の光に透き
脈を輝かせながら
去っていく姿こそが私にとって
最も美しく
そして最も苦しいものになるのです
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