第42話【Side】
ブルクシアは慌ててベッドで横になり、体調不良のフリをする。
プリドラ学園を休暇している理由が、原因不明の体調不良により実家で休養としているためだ。
しかし、お構いなしにブルクシアの部屋にも諜報員と兵士と学園長が入ってきたのである。
「が……学園長……?」
「ブルクシアよ……。体調不良のところ申しわけないが、君にはやってもらわなければならないことがあるのじゃ」
「なんでしょうか……。それにこの人たちはいったい?」
「それはワシからは話せん。これは国からの命令じゃ。ブルクシアにはすぐに魔力測定器を使ってもらう」
ブルクシアは冷静な表情を極力崩さないようにして、どうやったらこの難を逃れられるか考えるのに必死だった。
(明らかに僕のことを疑われているよね……。仮病している程度でここまで調査するなんて想定外だった……。これも生徒会長としての重荷か)
「学園長……。申しわけございません。魔力鍛錬と創作魔法の研究をやりすぎてしまったため、魔力を使い果たしてしまいました。今朝は治ったと思い今一度魔法鍛錬をしたものの、無理をしすぎて再び魔力切れを」
「ほう……」
「そのため寝込んでしまいまして……」
「すまぬが、それでもブルクシアには魔力測定器を使ってもらう必要があるのじゃ」
魔力切れを起こした直後で魔力測定器を使ったとしても、魔力数値は0と表示される。
ブルクシアは、このあとで疑われることを少しでも避けるために、言いわけをしたのちに魔力測定器に触れようとした。
「これは見たことがないタイプの魔力測定器ですね。魔力切れ直後なため、0と表示されると思いますが」
「構わぬよ。測定だけしてくれれば問題なしじゃ」
ブルクシアはどうして無駄なことをしようとするのかは理解できなかったが、手をあて、魔力を流す素振りだけした。
素振りだけしただけだというのに、白い機械の魔力測定器は真っ黒に色が変わった。
「そうか。やはりそうじゃったのか」
「これはなんなのですか?」
ただ手を乗せただけ。
それなのに反応があったことにブルクシアは驚く。
学園長の返事を待たずして、周りにいた兵士に拘束された。
「42分。ブルクシア=モンブラーの身柄を拘束」
「な⁉︎ これでは僕が犯罪者みたいではありませんか」
「みたいではない。君には魔力略奪容疑がかかっている!」
「な……」
「国の許可なく習得、使用を禁じられている呪い魔法を使い、対象者の魔力を失わせたことは調査済みだ」
「だからといって、どうして僕が……。ただの魔力切れだと言っているでしょう」
万が一のことも考え、魔力切れになった口実を作っていたにも関わらず拘束された。
これはブルクシアにとっても誤算ではあったが、言い負かすことはまだできると思っていたのだ。
しかし、学園長が口を開く。
「この魔力測定器は学問学科のレオルドによって改良されていてな、魔力量だけでなく、魔力の限界値、そして質なども色々と測定することができるのじゃよ」
「そんなこと、ありえないでしょう。今までどのような研究者でも魔力量を流してその量しか数値化することができなかったはず。それを僕よりも年下で首席とはいえ平凡な生徒がそんなものを作れるわけが……」
「その証拠に、黒くなったじゃろ。これは魔力が完全に無くなっている者に反応するようになっているそうじゃ」
ブルクシアも言いわけができなくなってきてしまった。
追い討ちをかけるように、試しに一人の兵士が魔力測定器に触れた。
『ライブルク 32歳 最大魔力量3440 注入魔力量155』
今注がれた魔力によって魔力測定器が反応する。
対象者を読み込み、情報を細かく表示させた。
「こういうことだ。魔力が全くない者では測定はできない。だが、今俺が魔力を入れたから、おまえの情報も詳しく表示されるだろう。もちろん、覚えている創作魔法もな……」
ブルクシアは顔を真っ青にしながら、なんとか逃げようと試みたが、兵士によって完全に拘束されている。
あっけなくブルクシアの手が再び魔力測定器に触れてしまう。
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