第33話
学園の帰り道。
私はため息をはきながら、今日やらかしてしまったことをレオルド様に話す。
「やはりソフィーナの魔力がバレましたか。別にそんなに気にしなくても良いと思いますけれどね」
「セバル侯爵様は、バレないほうが良いと言っていたではありませんか。ヴィーネ義姉様が脅かすから……」
「はは。私としてはスッキリしましたけれどね」
学園でプールを水たっぷりにしてしまって、クラスメイト全員に魔力のことがバレたことを報告した。
どうしたら良いか悩んでいたものの、レオルド様はむしろ喜んでいるようだった。
「ソフィーナの噂は学問学科にまで轟いていましたよ。魔法学科内では、不正で合格したソフィーナを退学にさせるよう動いている者が多いとか」
「やはりそうでしたか。水魔法の授業まではそうだったかもしれません」
「なにが不正か、どうして噂が広まっているのに教師も学園も動かないのか、冷静に考えれば簡単にわかるはずなんですよね。学問学科のみんなは、気にも留めていませんでしたが、私としては魔法学科の人たちに怒りを覚えていましたよ!」
レオルド様が珍しく機嫌を悪くされている。
もう問題は解決して、クラスのみんなも疑っていたことに関して謝ってくれたことも話すと、レオルド様はホッと一息つく。
「ソフィーナも男爵に叙爵されていますし、どちらにしても国に仕える身分ですからね。それに、魔法を使っているときや鍛錬をしているときのソフィーナってイキイキとしているように見えますし、むしろ王宮直属魔導士へ進むのも良いのではないかなぁと思ってしまいまして」
「うーん……。確かに魔法に関してはもっと知りたいし楽しいと思います。でも……、一番はレオルド様の物づくりをそばで見ていることですね」
「はは。そんなに嬉しいことを言ってくれるのはソフィーナだけですよ」
帰ってから、さっそくレオルド様は物づくりを始めた。
なにやら、もうすぐ完成するようで、今回は販売用ではなく私のために作っているらしいから余計に楽しみである。
「もう完成ですね。ところで、お願いしておいた例のものは手に入っていますか?」
「え? えぇ……。でも、こんなものをどうするのですか?」
レオルド様にお願いされていたものは、三日ほど前に難なく手に入っている。
ヴィーネ義姉様は魔法に関してなら絶対的な自信がある。
だからこそ、いくら嫌われている私でも、魔力を魔石に注ぐことをお願いすれば、難なく承諾してくれたのだ。
「助かります。どうしても気になることがありましてね……。まずは私とソフィーナで実験してみましょうか」
レオルド様が新しく作った道具は、見た目はただの紙にしか見えないが、おそらくなにかあるのだろう。
「ソフィーナが魔力を注いだ魔石と、私がなんとか注入した魔石をこうして完成した紙の上に置きます。まぁ紙ではなく、これは判定用紙とでも言いましょうか」
「判定用紙? なにを判定するのですか?」
「血縁関係を判定するのですよ」
「はい?」
言っていることが難しすぎて、私の単細胞では理解が追いつかなかった。
詳しく聞く。
「つまり、今やろうとしていることは、私とソフィーナが、同じ両親の間に生まれた子かどうかを判定するのです」
「魔石でわかるのですか?」
「はい。人の持っている魔力には、親の遺伝も関係しています。個人の魔力にも細かな波動が微妙に違っていて、血縁関係が近しい間柄、つまり親と子、もしくは兄弟関係であれば、限りなく波動が似ていることがわかったのです。それを利用して、ソフィーナとヴィーネさんが姉妹かどうかを調べることができるのです」
「ヴィーネ義姉様とは腹違いだと思うのですが……」
「父親は一緒なのでしょう? だとすれば、この白色の判定用紙がピンクか紫に変化します。ほら、今私とソフィーナの魔石を置いても色が変化しないでしょう? これは、魔力の波動が明らかに違うからです」
「はぁ……言っていることがムズカシイ……」
「はは。まぁ、実験をもう少しやりましょう。今度は私の魔石と、私の父から魔力を注いでいただいた魔石を置いてみましょうか」
レオルド様が二つの魔石を置くと、真っ赤に変化した。
「魔力の波動がほぼ同じため、赤くなりました。私は父上の魔力遺伝をそのまま引き継いでいるようですね。そして魔石を判定用紙から離すと白色に戻ります」
「おー。面白い!」
「それは良かった。では、最後にソフィーナとヴィーネさんの魔力が入った魔石を置いてみましょう……。どうしても調べてみたかったので……」
レオルド様が真面目な表情をしている。私とヴィーネ義姉様が姉妹だと証明してどうしたのかは分からない。
まぁレオルド様がやりたいと言っているため、なにか意図があるのだろうし、やってもらおう。
私とヴィーネ義姉様の魔石を判定用紙の上に置く。
すると……。
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