第2話 はじめてのデュエル
デュエルTVが発行するプロのライセンス。だれもがあこがれる実力の証。さらにデュエル用の空間を作り出し、対戦する二人を転送する装置でもある。そして、すべてのデュエルスペース内でのデュエルがライブ配信されているのだ。
はじめに青みがかった漆黒の空間が現れる。そして足もとに電子的なグリッド模様が地面に走った。空間形成がはじまったのだ。
電脳的な景色は、一瞬のうちにリアルな闘技場へと変わった。観客席が形成され、客がうつしだされる。この戦いを閲覧するデュエルTV視聴者のアバターだ。とつぜんの野良デュエルだからか、ほとんどいない。広い闘技場だが……10人ってところか。
そしてさいごに巨大なモニターが中央上空に現れた。デュエルの状況を伝えるためのものだ。
「ここがデュエルスペース! スマホやテレビよりずっと迫力があるね!」
「なんだ、ここに来るのは初めてか。ふむ……たしかに画画面に”GUEST”と出ておるな。ヒヨッコ中のヒヨッコというわけか。クズカードをマジメな顔で買うのも未熟ゆえだろう、ブハハハハハ!」
「む。クズだなんて言わないでください。”唯一なるもの、セルミラージュ”は強いカードなんですから!」
「笑止、笑止! 伝説レアではあるが、現に10円だったではないか。ブハハハハハハ!」
シンシアの下唇がぎゅっと締まるのを見て、声をかけた。
『君の言う通り、俺は強い。が……力を発揮するには条件があってな。とりあえず、デッキを見せてくれないか?』
予感があった。わざわざ探しにくるほど欲しがっていたなら、シンシアは俺と同じ答えにたどり着いているのかもしれない。
「えっと……これがボクのデッキだよ。キミをいれて、ちょうど50枚」
カードになったからだろうか。デッキに重ねられるだけで、そこに入っているすべてのカードが把握できた。デュエリストならだれもが手にとるスターターセットから、カードを何枚か入れかえた程度のシンプルなデッキ構成。
彼女はビギナーだった。
だが、その入れかえたカードこそが”唯一なるもの、セルミラージュ”を使ったコンボのパーツになる……目のつけどころが俺と似ている。シンシアの素質がデッキから伝わってきた。
『……いいデッキだ。君さえよければ、いっしょに戦おう!』
「ほんと? ありがとう、セルミくん!」
『ルールは知ってるか? わからないことがあったらいつでも聞いてくれ』
「いつもデュエルTVを見てるから大丈夫。人と対戦するのは初めてだから……細かいところは質問するかも」
「小僧、デッキの準備はできたか? ではゆくぞ!」
――――――――――――――――
【勝利条件】
カードを使って対戦相手のライフポイントを0にすれば勝利!
ライフポイントはモンスターカードの攻撃やカード効果により増減する。
【ターンと手札】
デュエル開始時、プレイヤーはカードを5枚引いて手札とする。
さらに自分ターンのはじめに1枚カードを引く。カードをプレイ(召喚、使用)して勝利を目指せ!
【モンスターカード】
デュエリストは、自分のターンに手札からモンスターカードを1体召喚できる!
ただしモンスターカードは召喚されたターンには攻撃できない。これを”召喚酔い”と呼ぶ。
モンスターカードはプレイヤーの”剣”であり”盾”である。
【マジックカード】
プレイヤーはマジックカードを使って戦闘を有利に進めることができる。その効果と持続時間はさまざまだ!
――――――――――――――――
【本田雄一郎 対 GUEST デュエル開始!】
【本田雄一郎のライフポイント:4000】
【GUESTのライフポイント:4000】
「我が先攻! モンスターカード”幽冥の秘術使い”を召喚、そしてマジックカード”天空の舞踏会”をセットする!」
|畳”たたみ”ほどの大きさのカードが2枚フィールドに出現した。デュエルスペースでは、カードに描かれたものが具現化する!
モンスターカードから光がほとばしり、中から”幽冥の秘術使い”がふわりと宙に浮かびあがった。天空の舞踏会によるホタルのような光球がただよう中、冷たい視線でシンシアを見下ろしている。
――――――――――――――――
【幽冥の秘術使い】
モンスターカード:人間・魔術師
攻撃力:200 防御力:1300
このカードがプレイヤーにダメージを与えた時、そのプレイヤーはデッキのカードを上から5枚、自分の墓地に置く。あなたはデッキから1枚ドローする。
【天空の舞踏会】
マジックカード(永続)
フィールド上のすべての魔術師は飛行能力を持つ。
――――――――――――――――
「ターン終了だ!」
「ボクのターン、ドロー」
『幽冥の秘術使いか……いきなり高額レアカードのおでましか。防御をくぐりぬけて手札を増やす有名なコンボだ。シンシア、やつの攻撃を通すと一気に押しきられるぞ!』
「えっと……空を飛ぶモンスターは、地上のモンスターを飛び越えてプレイヤーに直接攻撃できる。でも、おなじ飛行能力をもつモンスターなら防御可能! 手札から”フクロウ男”を召喚するよ!」
シンシアが手札を手裏剣のように投げると、カードが身長1メートルほどのモンスターに変化して飛びたった。
――――――――――――――――
【フクロウ男】
モンスターカード:鳥・人間
攻撃力:800 防御力:800
飛行能力
――――――――――――――――
「ブハハハハハハ!! 10円にもならんノーマルカードではないか!」
『耳を貸す必要はないぞ。飛行モンスターをガードできる。いい初手だぜ!』
シンシアはまっすぐな瞳でうなずいた。本田よ、油断してると痛い目をみるぜ。
「ボクのターン、エンド!」
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