第1回カクヨム短歌・俳句コンテスト短歌の部

椙山浬

バイバイの、熱さ寒さも彼岸まで 引き出しの隅 書きかけの文

バイバイの、熱さ寒さも彼岸まで 引き出しのすみ 書きかけのふみ


バイバイを言ったきりもう会えなくなったあの子の顔も、お彼岸を過ぎる頃には薄くぼやけていった

あんなに涙した目頭の熱さも、隣にいない寂しさも、どんどん薄れて過去になっていくんだろう


引き出しの奥のすみっこに書きかけの手紙が押しやられていたことに気づくのは卒業式の頃だろうか

くしゃくしゃにひしゃげたそれを見たとき、私は皺をのばしてその続きを書くだろうか

それとも「こんなこともあったな」と言って、ゴミ箱に捨ててしまうだろうか


あの子はなんて言って私に笑いかけてくれたっけ

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