第442話 大人っぽくてー、美人でぇー、包容力があってぇー

 女性を恋愛対象として見たことがない小麦わたしにとって、裸の女性など性的なものではなかった。母親と銭湯に行けば、見知らぬ人の裸ばかりだ。公共の場であるという緊張感こそあるかもしれないが、いやらしい気持ちなど微塵もない。

 美しい桃子さん、それに見慣れぬフランス人女性に囲まれての入浴だろうがそれは同じだ。私の感情を揺さぶるとすれば、まだ訪れて二回目に過ぎない他人の家であるということと、ちょっと夕さんに相談したくて来てみたら、粉物として小麦粉に混ぜられたことくらいだ。この家ってどう考えても普通じゃないよね。


「ほら、湯船に浸かりたまえ。天然のラジウム温泉だよ。」*個人宅


「は、はい。それじゃあ。」


 お姫様のように全身を洗われたようで、荒々しくじゃがいものように洗われた気もするが、このまま出るには寒さを感じていた。渋々と桃子さん~少し離れて湯船に入った。湯船に浸かると、なぜか温泉である大浴場はとても心地が良かった。パン派だけど、意外と和の心も持っているんだ。日本人だからこそ湯船に浸かりたい派なんだ。


「コムギ!メイクを落とすとイケメンさんになるんだネ〜♡」


「パリコレで似ている人がいたヨ!」


 とかいって、なぜかフランス人と一緒に湯船に浸かっているわけだが、、。それにしても、皆さん、顔が整っていてスタイルもすごい。腰ってあんなにくびれるものなんだな。ああ、それにしてもなぜお風呂に入ってるんだ。夕さんに会えるかな。会えたとして、二人きりで話せるかな。他の人に聞かれるのやだなぁ。


 小麦が黙々と悩んでいる頃、ペットの散歩から戻った真央達は、晴から小麦の来訪を聞かされていた。


「たっだいま~!あー楽しかった!夕さんとお散歩するのたっのしい~♪」


「あ、真央。遅かったね。」


「うん。結構遠くまで行ってた!」


「小麦ちゃんが来てるんだよ。真央に話したいことがあるって。」


「にょ!?も、もしかして、恋の相談??」


「いや、それはわからないけど、、実は真央と夕さんがいないもんだから、、桃子さん達が暴走して、、」


「ぬぁにぃ~!で、どこにいるの!?」


「それが、、皆でお風呂に、、」


「!!!???た、大変っ!!襲われてるの!!??助けなきゃ!!」


「あ、それが、、桃子さんが、真央達が帰ったら合流しろって…。」


「ふぉ!そういうことか!!よし、行こう!!夕さんも!ほら!」


「え~??どういう流れでそうなるのよ。。もう、、小麦ちゃん、大丈夫かな。。」


 どのみち、散歩をして汗を掻いた2人はお風呂に入るつもりだった。桃子が何を企んでいるかわからないが、だからこそ監視が必要とも言える。晴とともに、何か手遅れになる前にと急いで大浴場へと向かうことにした。


「ん、笑い声が聞こえる。大丈夫そうだね。このまま脱いでいこうか。」


「そうね。さすがに未成年を襲うこともないだろうし。」


 脱衣所で3人は全裸になった。そしてタオルで隠すこともなく、いつも通りに浴室のドアを開いたんだ。


「こ、っむぎ、ちゃーん!おっまたせ~!!」


「わぁ!真央ちゃん!!」


「会いに来てくれたんでしょ??皆でお風呂だ、わーい!!」


 はしゃぐ真央の後ろに続くのは晴だ。やれやれと思っているのが伝わる顔で。その後ろからは夕が続いていた。


「小麦ちゃん、こんばんは。大丈夫?変なことされてない?」


「あ、夕さん。」


 ついに会いたい人に会えた。なぜか真っ裸で。このシチュエーションに違和感しか感じない小麦であったが、そんなことよりももっと気になることがあったんだ。

 それは、あまりにも綺麗な夕の、、裸であった。*ようこそ、小麦氏。


(うわ・・・綺麗・・・///////)


 目を奪われてしまったんだ。この時初めて、小麦は女性を意識した。いや、違う。これは2回目なんだ。。そう、1度目に意識したのは笑美だ。仕事中に転びかけたあの時、、思わず掴んでしまった笑美の胸に感じたとぅんくであった。


 大石小麦。好みのタイプの女性が確立されてしまった瞬間であった。ワイワイ!

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