第51話 かわいいだけじゃないわ

「はい、じゃあ休憩しながら、1人ずつお風呂に入ろうね。で、もう少し勉強して眠くなったら皆で寝てね。無理しないで、明日またやろう。」

「はーい。修学旅行みたいで楽しいねー♪」

「由奈さんが先生なら良かったねー!」

「ほんと、ほんとっ!」


 褒められて悪い気のしない由奈。やっと由奈の隣をゲットしているひよりだけど、ちょっと面白くない。無言の、だってこの人は私のだもん節が炸裂していた。

 順番にシャワーを浴びて、パジャマに着替えた人から勉強を始める。ゲスト4人が先にシャワーを浴び終えると、今度はひよりがシャワーを浴びに浴室へ行った。


 ひよりが戻ると、パジャマ姿の大人っぽい赤羽っちがまた由奈と2人で勉強を始めていた。

「うん、だんだんわかってきたね。テストはいつからいつまで?」

「えっと、大体1日2教科くらいで、月曜から金曜まで?」

「じゃあ、明日まで勉強して、不安な教科があったら前日にひよりに教わって?それでも危なかったら、君だけでもここに勉強しにおいで。」

「うん、ありがとうございます。。」


 親身になっている由奈。それは単にひよりの為なのだが、ひよりは2人の姿を見て不安になっていた。自分より大人っぽくて綺麗な赤羽っち。クラスのカースト上位だ。明るくてリーダー的な女の子。ぷくっとボインな女の子。


(由奈さん、赤羽っちにすごく優しくしてる・・・。由奈さんのタイプってどんな子だろう、、。本当は、赤羽っちみたいな綺麗系が好きなんじゃ。。)

 悲しくなる、自爆式かわいいの塊、ぴより。頬を膨らませて、目頭が熱くなる。


 そんなひよりに気づいた由奈。

(あ。またヤキモチ妬いてる。。もう、、ひよりのためにやってるのに。それにしてもかわいいというか、ちょっといじめたくなるな。いや、泣かせちゃうとな、、他の子がいるから抱っこしたり出来ないし、、ああ、でも、ちょっとだけ試してみたい気も、、。)


 我慢、できなかったんだ。。ごめん、ぴより。由奈はつい、つい、出来心で、、赤羽の頭をほんの少しだけ撫でてしまった。

「うん、正解。これが出来たら多分大丈夫だよ。」

「あ、・・・はい。えっと、うん。」

 急に頭を撫でられて少し顔を赤くする赤羽っち。色合いを大事にする女である。ここでひよりが怒って驚いて顔を緑にさせれば赤羽緑の完成だが、、どちらかと言うと青ざめた。。


「ううぅぅぅ・・・。由奈さん、、他の子と仲良くしちゃダメぇ。。。」

 由奈が思ったよりショックのでかかったひより。泣きそうな顔をしながらそう訴えた。


(あ、まずい。思ったよりダメだったか。ちょっとやりすぎた。。)

「ひより、、仲良くなんてしてないよ?勉強してるだけだから、、」

「でも今、なでなでした・・・。」

「あ、やばい。な、泣かないの!し、仕方ない、、ほら、皆の前で恥ずかしくないならひよりもやってあげるから。。」


 両手を広げて抱っこするそぶりを見せる由奈。他の4人は一斉にひよりを見た。


 戸田っちは息を止めて凝視した。

(行け。ひより。今すぐ行くのよ!あの包容力の権化に抱きしめられて包まれなさい!!ほら、行くのよ!!私にどうか、リアル至福をっ!与えたまえっ!!)ハァハァ‼


 デデンデンデデン

 デデンデンデデン


 ひよりの動きに注目が集まる。ひよりは揺りがごに揺られた赤ちゃんのように体を前後に揺らした。行くべきか行かざるべきか、それが問題だと悩んでいた。


 わ、私、1度でもあの胸に抱かれ、あの手に触れられることを自分から逃したくない…。進路よりも重い決断だった。ひよりは初めて由奈の胸に飛び込んだときのように、勢いよくダイブした。


「せい、やっ!」ハッ!

 人目など気にしません。貴方が好きだから!!エンダーイヤーイヤー!!


 由奈は床に押し倒されるほどにひよりに飛び込まれ、「あ、なんか懐かしい。」って思った。そんで、そのあとの続きもされた。


 ぶっちゅーっと。


「わ、わぁ!ひよりっち、ちゅーしたぁっ!」

「おおーっ!ひよりっち、恋人奪還〜!」

 渋宮っちがキャーキャー騒ぐ。

「エンダァーーーーーーっ!!」

 大歓喜すぎて謎奇声をあげる戸田っち。


 顔を真赤にして黙りこくる赤羽。


(い、いいな、ひよりっち。うらやまし、あ、私はなにを…!でもだって、さっき、、頭を撫でてもらえたとき、、とぅんく♡って音がしたんだもん。や、やばい。意識しちゃったらまずい…。)


 包容力の化身、由奈に、奇しくも、、いや、当然のように、ときめいてしまっていた赤羽だった。


 ヒヨリーモウダメー

 ユナサンユナサンユナサン!!

 アーー!!

 ブッチュー!!

 アーー‼


 続く

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