第668話 移住
タブレットやスマホはネットに繋がっているから価値があるのであって、単体ではカメラかライトくらいの利用価値しかないだろう。
光一さんもこの世界にくる前にダウンロードしまくってきたんだろう。SDカードが1TBだった。これだと他にもありそうだな。
「……2015年前の人か……」
オレはそんなにアニメは観なかったが、ダウンロードされたアニメから年代を割り出すことはできる。最新のアニメが2015年までだった。
光一さんが連れてこられたのが二十二歳だとして、2015から二十二を引くと1991年生まれか。平成って西暦何年からだっけ? まあ、オレと近い年代の人だったんだな。
「マサキさんは二十八歳くらいのときらしいから、少しずつ年齢を上げてんのか?」
マサキさんはセフティーホームは与えられず、タブレットだけ渡された感じだ。ダメ女神が試行錯誤しているのはわかるが、五千年前から試行錯誤して、なんで改善されんのか理解できない。無能いいところだろう!
「パソコンはブルーレイ搭載にして、アニメはボックスで買えばいいな。てか、アニメボックスってこんなにすんだな。買ってる人、スゲーよ。金持ちなのか?」
他にも大容量のポータブルバッテリーとソーラー充電器が必要か。これ、とんでもない量になるな。
「これは、エルガゴラさんを館かアシッカに移動してもらったほうが早くないか?」
エルガゴラさんの店で電化製品を稼働させるには狭すぎる。これは、エルガゴラさんに移ってもらったほうが早いんじゃないか?
パソコンとアニメボックス、ポータブルバッテリーを持って外に出た。
「おー! これがパソコンか! ブルーレイ? DVDではないのか?」
まあ、2015年はDVDが主流だったからな。いや、オレもパソコンはDVD搭載型だったけどね。工場勤務でうん十万円もするパソコンなんて買えねーよ! 家賃払って車のローンだってあんだからよ!
「使い方はわかるんですか?」
「うっすらとしか覚えてない。数年で壊れてしまったからな」
数年は持ったんだ。この過酷な世界で。昔のパソコンは丈夫だったのか?
「エルガゴラさんは、ミジアに思い入れとかあったりするんですか?」
「いや、ないぞ。ひょんな縁からここに住んでいるだけだ。その縁があった者も遥か昔に死んでしまったしな」
百年も生きていればそんなこともあるか。どんな気持ちで生きてんだろうな?
「ここから住む場所を移る、ってのはありですか? 家電製品を使うとなると、コラウスかアシッカのほうが適しているんですよね。ここだと電気を作るのが大変なんですよ」
家電製品が電気で動いているとわかるなら、ここでパソコンを使うのも大変だってわかるはずだ。
「構わんぞ」
と、あっさりした答えが返ってきた。いいの!?
「ここに住んで三十年以上。そろそろ移らんといかんな~と考えていたからな。お前さんは、異世界人であることを隠しているわけではないんだろう?」
「ええ、まあ。大体の人は知っていますね。エルフもたくさんいますから、エルガゴラさんが百年生きていても気にしないんじゃないですか?」
エルフが長生きってのは一般常識はみたいな感じだったからな。
「エルフか。エルフの血を引いてながらエルフとは付き合いがないな」
「あ、エルガゴラさんの親族ならコラウスにいますよ。ジェネスク男爵って名に覚えはありますか?」
「知っている。二代前のヤツとは交流があったが、今はない。人間の五十年は長いからな……」
十年一昔って言うし、五十年なら人の記憶から消えてしまうのも仕方がないだろうよ。新卒との話したとき、ジェネーションギャップって意味を知ったからな。
「では、アシッカに移りますか? 巨人も連れてきてますんで、すぐ家は作れると思います。あ、その前にゴブリン駆除請負員になってください。オレには十五日縛りがあって、オレが買ったものは、十五日触らないと消えてしまうんですよ」
それが請負員となれば縛りは軽減できるってことを説明した。
「駆除員もいろいろなんだな。タチバナって駆除員は神の家をもらえなかったと聞いたが」
やはり百年差なら前回の駆除員の情報は得られるものなんだな。もしかしたら、各地を回れば駆除員の情報が得られるかもしれないな。
「パソコンが使えるなら請負員にでもなるさ。この請負員カードで異世界のものが買えるんだからな」
……エルガゴラさん、見た目は老人でも中身は三十代のオタクって感じだな……。
「これで請負員になりました。さすがに今すぐ移住は無理でしょうから、明日に家を用意したら呼びにきますよ」
「いや、ついていくよ。必要なものはこのアイテムバッグに入れればいいだけだからな」
アイテムバッグ、優秀だな。いや、エルガゴラさんが凄まじいまでの魔法使いってことか。技術力で言えばミシニーを凌駕しているかもしれんぞ……。
「じゃあ、明日の朝、早めに出発するので今日中に用意してください。あ、仕舞えないものがあればホームに運びますよ」
「そう、だな。では、お願いするか」
ってことで、アイテムバッグに入らないものをホームに運んだ。
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